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柱時計に目をやると、約束の時刻が差し迫っていた。
黄金の瞳を隠す為に、卓上においた魔法の目薬を掴み点眼する。
黄金の瞳に点眼すると、虹彩が深緑に染まっていく。
卓上に置いてある顔半分を隠す仮面を装着する。
姿勢を正し、玉座の間へ足を運ぶ。
玉座の間の入口には護衛兵が立ち、女王の雪華に頭を垂れると玉座の前の扉を押し開く。
玉座の間の最奥には3段の段差の上に、漆黒の玉座がある。
玉座に続く階段の一段目の傍らには、初老の男が1人立っていた。
初老の男が頭をたれると、雪華は視線で目礼すると階段を登ると
2年前まで、父が座っていた玉座に雪華はゆっくりと腰を下ろす。
初老の男は雪華の父の弟、叔父に当たる。
叔父の名は、ベルベット。
ベルベットは、縁国の宰相をしている。
ベルベットの容姿は白髪まじりの黒髪に、漆黒の瞳をしている。
ただベルベットの頭には角が存在しない。
鬼族の角は、生まれ落ちた時には存在しない。
第二次性徴期に角が生え始める。
王族でありながら、角が生えてこなかった叔父上は貧弱だった。
オーガの進化種の特有の強い肉体が、鬼族の王族の特殊能力だった。
長寿である鬼族の王族の特徴も、ベルベッドには遺伝していなかった。
金の角を持った縁国の王族の血は、雪華1人となっていた。
「すまない。
私が弱いばかりに、重責を背負わせてしまった」
ベルベッドは玉座に座る姪に、重々しく謝罪をする。
「問題ない。
強い者の宿命だと父も言っていた。
それに私は叔父上には、何時も助けられている」
雪華は顔を合わせれば、謝罪の言葉を繰り返すベルベッドに辟易していた。
宰相として、雪華の王位を保佐し続けていた叔父であるベルベッドには感謝しかない。
王に就任したといっても、即位後すぐに2年間も戦場を駆け抜けていたから。
縁国の政は丸っと、ベルベッド叔父上に押し付けていたのだ。
心置きなく、戦場に出兵してスバン王国に勝利できたのも叔父上のおかげだと雪華は本気で思っていた。
歳のせいか叔父であるベルベッドは、雪華の言葉に感極まって、さめざめと涙を流していた。
叔父であるベルベッドに泣かれるのを、苦手としていた。
今となっては数少ない、雪華の肉親なのだ。
そして、父と違い叔父上は身体が生まれながらに弱く、縁国の王族と比べたら老化速度も早いのだ。
両親を同時に2年前に他界して以降、戦場で仲間の死に立ち会いすぎた結果、雪華は身近の者でアレばあるほど誰かを失うことを常に恐れていた。
雪華は縁国の王族の特徴が強く出ている為に、すこぶる丈夫で長寿であることが約束されている。
だから、1人長く生きることになる運命を受け入れていたつもりでも、心の整理ができてはいない。
「叔父上、涙を拭いておけ。
奴らが来る時刻だからな」
雪華はぶっきらぼうに、叔父ベルベッドに忠告をする。
本日はスバン王国に勝利してからの、初めての戦後処理について話し合う日なのだ。
敗戦したスバン国王自ら、縁国への貢物と戦後処理の話し合いにやってくる。
戦場以来、半月ぶりに相まみえるスバン国王に雪華は武者震いしていた。




