1-1
この物語の主人公、縁 雪華。
縁国は魔物のオーガが進化した鬼族の統べる国である。
漆黒の波打腰まで届く長髪。
こめかみの上の方には、立派な黄金の2本の角が鬼族の女王の証だった。
雪華は閉じていた目を開けると、黄金の眼差しが押し開かれる。
雪華の視線の先には、世界地図が開かれていた。
雪華は生まれてこのかた、黄金の瞳を隠して魔法の目薬を使い、深緑の瞳に変えて生きてきた。
この国には龍玉眼という、龍玉眼の乙女の伝説が存在する。
ドラゴンエッグ大陸において、龍玉眼の乙女を巡って大戦が3度起こったと言われている。
ドラゴンエッグ大陸の王族と、カルル共和国のカルル教団の上層部にのみ、忌まわしい龍玉眼についての本当に伝説が語り継がれている。
その伝説故に、龍玉眼の乙女を各国の王は求め続けた。
雪華は生まれながらに、この呪にしかならない龍玉眼持ちの乙女として生を受けたのだ。
雪華の両親である前縁国の国王夫妻は、約2年前に亡くなった。
父、フィリップは戦死した。
父と命を共有する呪いを互いに掛け合っていた。
母、サーチェは、父の死とともに心臓麻痺で亡くなったのだ。
身体の弱かった母、サーチェは雪華を産んで更に身体を壊した。
生まれた雪華の瞳が黄金であった事で、自身を酷く責めて、心を病んでいた。
サーチェを愛していた、父フィリップは、サーチェ以外との間に子供を作ることを提言する臣下を拒絶して妻サーチェを愛し守り抜いた。
2ヶ月前まで隣国のスバン王国と戦争を行なっていた。
発端は、スバン王国による、縁国の港を奪う為の侵略戦争が始まりだった。
縁国は建国80万年になる。
80万年以前は、永久国がこのドラゴンエッグ大陸の統治者であった。
ドラゴンエッグ大陸の大国は、中央のスバン王国と、東に位置する永久国の2強とされていた。
西のルルド国は、標高の高い山奥にあり他国の侵入を完全に遠ざけていた。
西の海岸線は、切り立つ崖がひたすら続く海岸線。
北のザリード国の港は、年の半分は氷に閉ざされている。
縁国は、繰り返す戦争で緑地がなくなり、砂漠化が進み水源が乏しいが、港があって海洋貿易は盛んだった。
東に位置する永久国の港が、ドラゴンエッグ大陸の中で一番、使い勝手が良いがスバンであっても永久国と全面戦争するには互いが強国すぎるためだった。
ゆえに、南の縁国へ領土を奪う侵略戦争をけしかけた。
縁国は小国ゆえに、西の隣国のルルドと東の隣国の永久国に援軍の派遣を要請したが、断られていた。
ルルドは、母サーチェの母国なのだが、ルルド国は険しい山の山頂に築かれた王国なのだ。
軍を大きく動かすには適さない地形のために、このルルド国は地の利に守られている。
ザリード国は北にあるゆえに、進軍できるのが年の半月に限られる。
年の半分は雪に閉ざされるからだ。
ザリード国はオークの進化種のググル族は鬼族と同様に腕に覚えのあるパワータイプの国民が多い。
そのため、スバン王国にとって縁国は実に魅力的な国と見られていた。
建国以来、スバン王国と縁国は戦争を行っていたが、その度に東の永久国の援軍によって縁国は窮地を救われてきた。
だが、今回に限って永久国の援軍要請を進言したが、断られたのだった。
雪華は卓上に広げた地図を見下ろして、ため息をついた。




