第898話 エメラルドの邂逅21
*
少し時を遡る。
──〝自由都市ラテンバ〟
ハチノス大聖堂
そこには主神女神アルテナに祈りを捧げる。長い銀髪の30ぐらいの女性と9歳ぐらいのノアがいた。
「ノア、お祈りは出来た?」
「うん♪ 出来たよ、お母さん♪」
次世代の大聖女となるノアをヌアは英才教育を施していた。
魔力の纏い方。魔法の使い方。剣の扱い。
「今日はお父さんも帰ってくるし。特訓は軽めにしときましょうか」
「うん♪ 分かった」
いつもの平和な日常。
そんな光景は一瞬で砕かれた。
──ゴロゴロゴロ! ドッカーン!!
都市に落雷が落ちた。
「!?」
ただの落雷ではない。そう真っ先に気付いたのは当代の大聖女ヌア・フォールトューナだ。
慌てた様子で大聖堂の外に出ると、街が燃えていた。
「大変。直ぐに水を──〝水打玉〟!」
ヌアの魔法は凄まじい。初級の魔法だが燃え盛る街の火を一瞬で消し去った。
だが、次の瞬間、奈落の底から響くような恐ろしい声が響いた。
「オイオイ、もう消しちまったのかよ」
3mを越える身長に筋骨粒々の全身紫の身体に6本の強靭な太い腕、そして凄まじい魔力。
「魔族サイハテ……なぜ、ここに……」
ヒヤリと嫌な汗を掻くヌア。
「野暮なこと聞くなよ。俺の目的は2つ。忌々しい〝天聖〟が作った〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟の破壊。そして大聖女──お前の心臓だ! イイ具合に育ってんじゃねぇか。美味そうだ」
じゅるりと舌舐めをするサイハテ。
「ヌア様! ご無事ですか!」
青みがかった黒髪の修道士の青年がかけ寄って来る。
「カイザー、皆を連れて逃げなさい! 貴方でもこの魔族には歯が立ちませんよ」
カイザー・ブラウン。聖教会のNo.3だ。
「ま、魔族サイハテ……しかしヌア様は?」
「あれの相手が出きるのは今のこの場所で私だけです。サイハテは私が撃ち取ります!」
カイザーは息を飲んだ。この二人は格が違う。自分が戦っても1分と持たないだろう。
「分かりました。どうかご無事で」
踵を返すカイザーの前に一人の少女がヌアに向かって走ってきた。
「──お母さん!!」
「ノア!」
「お母さん逃げよ! 私が時間を稼ぐから!」
そう言うとノアはサイハテに向かい走りだした。
「〝八十五連金剛総覇〟!!」
バババババーン!!
と、八十五連撃の蹴りがサイハテを襲う。
だが、サイハテはその場から1cmほど後退しただけだった。
「!?」
「いいぜぇ、いいな、お前」
「ノア下がりなさい」
ヌアに言われてノアはサイハテから距離を取る。
「ノア。いい──よく聞いて」
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