第897話 エメラルドの邂逅20
*
休憩が終わると、仕事もラストスパートだ。
この時間になると追加のパンは焼かないみたいだ。せっせと店主さんが焼き釜を清掃している。
「おばさん、休憩ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「休憩遅くなってごめんね。お客も少なくなってきたら、後はゆっくり働いてちょうだい」
パン屋の奥さんはそう言うと優しく私とクレハの頭を撫でた。
それから2時間後。
お店は閉店の時間をむかえた。
「二人ともお疲れさまでした」
奥さんは私たちを労った後、封筒を渡して来た。
「はい、今日のお給料よ」
「わぁ! おばさん、ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます!」
奥さんと、店主さんにお礼を告げ、帰り道袋を開けると銀貨が6枚と銅貨が4枚入っていた。
「あれ? クレハなんかお給料多くない?」
「え?」
「だって私たち1時間休憩してたわよね」
「そういうこと、あのお店はね休憩も大切なお仕事として認められてるの、だからあってるよ」
「そ、そうなの? 凄いわね」
クレハの家に帰るとどっと疲れが出た。
今日もよく寝れそうだ。
*
翌日は仕事はお休みだった。
クレハも今日はフリーらしい。
朝食をいただいた後、クレハとお婆ちゃんと一緒に買い物に出掛けた。
「エメレアちゃん、お婆ちゃんがボール買ってくれたよ。一緒に投げ合いっこしよ」
「え、ええ。分かったわ」
公園に移動し、クレハとボールで遊ぶ。
「エメレアちゃん、行くよー!」
えいっ、と、クレハがボールを投げる。
それを私がキャッチしクレハにボールを投げ返す。
そんなことが楽しかった。ただボールを投げ合ってるだけなのに自然と笑みがこぼれた。
*
それから2年が経った。
相変わらず、私はクレハの家にお世話になっている。
すると外から大きな声が響いた。
「号外!! 号外!! 〝自由都市ラテンバ〟に魔族サイハテ襲来!! 〝八柱の大結界〟の〝魔術柱〟の破壊及び〝大聖女〟ヌア・フォールトューナ様、死亡!!」
パラパラパラとニュースプテラから号外新聞がばら蒔かれる。
「「「「「!?」」」」」
「ヌア様が死亡!? バカな、人類屈指の実力者だぞ!?」
グレンさんが号外新聞を手にし額に汗を滲ませる。
「娘のノア様は無事なのか!? くっ、この記事だけじゃ全ては分からない」
「グレン。一応、避難の準備をしておきなさい。この街にも〝魔術柱〟がある」
「分かった。いつでも避難できるようにしておくよ」
魔族……怖い。
今の私の大切な場所が一瞬で奪われてしまいそうな。そんな気がした。
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