第896話 エメラルドの邂逅19
「もしかして君がエメレア殿か?」
「は、はい。エメレア・エルラルドです。あと殿は要らないです。エメレアって呼んでください」
「そうか、では、エメレア。私はシスティア・エリザパルシィだ。敬語も敬称も不要だ。何ならクレハのように姉と慕ってくれていい」
「うん、分かった。システィアお姉ちゃん」
「っと、すまない。ミカエラ騎士隊長を待たせてあるんだ。もう行かなければ。クレハ、エメレア、それじゃまた。仕事頑張るんだぞ」
そうしてシスティアお姉ちゃんはパンを買い、その場を後にした。
その後もお客さんは途切れなかった。
「変ねぇ、いつもなら個の時間になると落ち着いてくるんだけど、まだまだ来るわね。クレハちゃん、エメレアちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「私もまだまだ働けます」
パン屋の仕事、楽しい♪
お客さんも礼儀正しいし、クレハもいるし、パン屋の奥さんも皆優しい。
これで時給銅貨8枚も貰えるんだ。アドレナリンが出てくる。
2時間後、漸くお客さんが落ち着いてきた。
時間はあっという間に午後3の刻だ。
「クレハちゃん、エメレアちゃん、お店が落ち着いて来たから休憩入っちゃいなさい。まかないで、お店にあるパンなら2つでも3つでも食べていいわよ」
「え? お店に並んでるのを食べていいんですか? 売り物にならない焦げたパンとかじゃなくて?」
「そんなのをあげたりしないよ。ちゃんとしたパンを出すわ」
ホワイトだ。ホワイト企業だ。
「エメレアちゃん、選ぼ!」
と、クレハはコロッケパンとハムのバケットを取った。
私も恐る恐るにチーズパンとチョココロネを取った。
パンを貰った私たちは店の奥にある休憩室で並んでパンを食べる。
「「いただきます」」
チーズパンを口に運ぶとチーズのコクが口いっぱいに広がる。なるほど、この味ならあれだけお客さんが来ても納得だ。
「エメレアちゃんは本当に美味しそうに食べるね♪」
「だって美味しいんだもの。クレハだってとても美味しそうに食べてるじゃない」
「だって美味しいもん」
ふふふ♪ と、自然に私たちに笑顔が溢れる。そんな何気ない会話が幸せだった。そう感じられる時間がとても愛おしかった。
1時間の休憩とのことで、食事を終えても少し時間が余ったのでクレハとお喋りタイムだ。
システィアお姉ちゃんの話、お婆ちゃんの好きな食べ物の話、最初はクレハは家族の話を私にするのが悪いかなと、気を遣っていたが私が「大丈夫よ」と、言うと嬉々として話してくれた。
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