第884話 エメラルドの邂逅7
*
クレハの家は本当にギルドの直ぐ近くにあった。
大きすぎず小さすぎずの綺麗な家だ。
「こっちだよ。エメレアちゃん」
「あ、はい」
クレハに導かれるまま私は家にお邪魔する。
「お婆ちゃん、ただいま!」
「お、お邪魔します」
恐る恐るお邪魔すると絵に描いたような、お婆さんが出てくる。
「おかえり、クレハ。その子がエメレアちゃんかい?」
「あ、はい。エメレア・エルラルドです」
「私はマリア。お婆ちゃんて呼んでおくれ」
クレハと私の頭を撫でるお婆ちゃん。
ああ、この人もとってもあったかい手だ。
「あ、はい。お婆ちゃん」
真っ直ぐに言われちょっと照れくさかった。
「私のことはエメレアって呼んでください。ちゃんもいらないです。クレハも」
「そうかい? じゃあ、エメレアって呼ばせて貰おうかね」
「え、私も? エメレアちゃんって響き好きなんだけどな」
「あ、無理にじゃなくていいです。ちゃんでもくんでも好きに呼んでください」
流石にエメレアくん呼びは少し嫌だったが、幸いそうは呼ばれなかった。
「エメレアちゃん、絵本読も!」
「え、絵本ですか……?」
兄さんの寝る前の物語のお話は聞いたことはあるが、実物の絵本は見たことがない。
こっちこっち。と、クレハが私を自身の隣の椅子に招き、私は招かれるまま椅子に座る。
クレハが読んでくれたのは何処にでもあるような恋愛系の、強いて言えば王子様とお姫様が苦難を乗り越えて結ばれるという、ありふれたお伽噺だ。
クレハは嬉々として読んでいたが、私は本の内容はあまり興味は無かったが、誰かに絵本を読んで貰うというのが嬉しかった。
「クレハ、凄いですね。読み書きができるんですか?」
「あ、うん。お婆ちゃんたちに教わったり、週に二回〝ギルド教室〟にも通ってるんだ」
〝ギルド教室〟聞いたことがある。
大きなギルドでは殆どが、小さなギルドでも多少なり、子供たちに読み書きや魔法を教える場所だ。
もう少ししたら私も行く予定だった。賃金はそんなに高くない。一日銅貨二枚が相場だ。
何でも、ギルド講師の給料は〝聖教会〟が出してるらしく。
確か〝聖教会〟は凄いお金持ちと聞いた。
本を読み終わるとクレハは「街を見に行かない?」と、誘ってきた。
クレハ曰くギルド周辺なら路地裏でも人攫いも無く、子供だけでもめったなことが無い限り心配は無いらしい。
少し迷ったが、このクレハからは悪意は感じられない。
信じてみても……いや、私は信じたい。
このクレハと言う少女を──
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