第876話 光明
*
食事を終え、片付けをしていると……コンコン、コンコンと控え目なノックが家に響く。嫌な気配はしないな。敵ではなさそうだ。
「鍵なら空いてる。迷惑じゃなきゃ入ってくれ」
すると、パタンと扉が開かれ、水色の長い髪の15.16歳の少女が家に入って来る。
「お邪魔します」
「ツヅリ」
現れたのはツヅリ・ノフトだ。
本人の希望で〝ハッピーエンド同盟〟への参加が決まっている。俺の頼れる友達だ。
「先程、大聖女様から〝通信石〟で連絡がありました。始まるのですね。戦争が……」
「巻き込んで悪いな。嫌だったら抜けてもいいんだぞ?」
「いえ、私の決めたことですのでお構い無く。私は貴方のためにも戦う覚悟です。今の〝アルカディア〟はあまり好きではありません」
「そうか。あ、まあ、茶でも飲んでけよ。いろはの魔女が激押ししてる湧水で作るからさ」
「いろはの魔女? まさかあの? ……いただきます」
一瞬〝え?〟という顔をした後に、ツヅリはいただきますと、軽くお辞儀をする。
「まあ、座ってくれ」
「こちらにどうぞ。ツヅリさん」
クレハがテーブルに案内する。
俺は〝アイテムストレージ〟から、リリリに貰った湧水の樽を取り出し、やかんに火をかける。
急須で淹れるのは〝ユグドラシル〟で貰ったエルフ茶葉だ。早いところエルフ茶(緑茶)だ。
次に〝アーデルハイト王国〟で何故か売ってたので買った。湯飲みに茶を淹れる。
俺とクレハと桜の分もだ。
ちなみに黒芒は食事が終わると俺の影に入り寝ている。
「いただきます」
「粗茶ですが、、、」
どこで習ったのか知らないが綺麗な作法でお茶を飲むツヅリは「あ、美味しい」と、瞳を光らせる。
「それでです。ユキマサさん。これからどうするつもりですか? 見たところ〝大都市エルクステン〟へも向かわないようですが……?」
「ノアからの連絡待ちだ。こうなった以上、俺も迂闊には動けない」
俺も茶を飲む。我ながら美味いな。
リリリの湧水とよく合うぜ。
「そうですか。確かに今は今は貴方は身を隠した方がいい。貴方が負ければこの戦争は私たちの負けになります」
負けか……
大将首が取られればそこまでか。
まるで戦国武将の気分だな。
……嫌な気分だ。
(ん? 大将首? そうか……!)
「ツヅリ!」
「え、あ、はい?」
「ありがとう。お陰て光明が見えそうだ」
「……!? !?」
慌てるツヅリ。
意味が分からないって表情だ。
「差し当たり。私は〝大都市エルクステン〟へ向かい、大聖女様と合流いたします」
「そうか、なら。ノアたちに伝えてくれ。ありがとうってな」
俺に出来ることがあるとするなら──
いや、今は黙っておこう。
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