第874話 返答
俺を朝起こしたのはクレハ……
ではなく、通信石だった。
「誰だ、こんな朝早く……って、もう昼近いか」
通話の相手は1ー1。ノアだ。
「もしもし」
『やあ、ユキマサ君。返答の結果を伝えに来たよ』
俺は飛び起きる。
「聞かせてくれ。どうなった?」
*
数時間前。
──〝中央連合王国アルカディア〟
その王宮に一人の少女が足を運んでいた。
言うまでもない。ノアだ。
「やあ、ジークパングさん。返事を聞きに来たよ」
王宮には〝三王〟
ジークパング・ネモゴールド
ヴァンドール・ブラッディナイト
ユリィ・ドットマダム
が鎮座している。
「来たか。大聖女。待っていたぞ」
「ハハッ、相変わらず。すげェ魔力じゃのう」
「おはようございます。ノアさん」
ジークパングは険しそうな顔をし、ヴァンドールは嬉々とした顔をし、ユリィはのほほをとしている。
「それで。ユキマサ君の指名手配は撤回して貰えるのかな?」
ヒュウっと、部屋の中なのに冷たい風が吹いた。
「我々の返答は戦争じゃ。致し方ないが稗月倖真の指名手配の撤回はしない。どうしても〝アルカディア〟は力に屈するわけにはいかないのだ。それが例え相手が〝聖教会〟でも」
しばしの沈黙。そしてノアが口を開いた。
「そっか。残念」
くるりと踵を返し、その場を去ろうとするノアにジークパングが声をかけた。
「大聖女。待ってくれ。一つ頼みがある」
「頼み?」
戦争と言った次の口で一体何の頼みがあるのかと思いながら、ノアは一応話しを聞く。
「我々が勝利したら、稗月倖真は死刑となるだろう」
「そう」
ノアのたった二文字の言葉で場が凍り付く。
静かなる、怒りを込めた殺気だ。
「もしだ。もし稗月倖真の首を跳ねた時。その時は──私の首も跳ねてくれ」
そう言ってジークパングはノアに頭を下げた。
「私が言うのもなんだけど。本気? ジークパングさん」
「魔王を二人も倒してくれた者を処刑すると言っているんだ。私の首ぐらい跳ねねば示しがつかん」
「じゃあ何で戦争なんて……」
「戦争何ていつの時代もそんなものだ。大義名分。愚かな権力の為の犠牲の前にある。だが、何度も言うが人類の最高機関である〝中央連合王国アルカディア〟が力に屈するわけにはいかないのだ。分かってくれ、大聖女」
またもやしばしの沈黙。
そしてノアが口を開く。
「そっか。分かったよ。でもね、私たちの大切な大将の首がかかってるんだ。私も皆も手加減はしないよ」
17歳の少女が放つ言葉の重みでは無かった。
流石のジークパングも冷や汗を流す。
「じゃあ、まあ。返事と頼みは分かったよ。この国の〝アーストライト大聖堂〟は聖教会の皆と一緒に撤退かな。お爺ちゃんにも伝えないとね。当面は拠点を〝大都市エルクステン〟に移すよ。っと、敵地で長居は無用か。じゃあね」
殺気を消し、今度こそノアはその場を後にした。
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