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魔力ゼロの無敗者  作者: マンタS
第7章 大国会談と四獣
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伝言

 コウヤと『四獣』との決着がつく、少し前のドルス魔国。



「リュークさん。聞いてほしい事があります」



「…何だ?」



「コウヤからの伝言があるんです」



 そう話した沙霧の顔は、いつになく神妙なものだった。



「…話してみろ」



「彼は、ここから旅立つ前にこう言っていました。『何か世界レベルの不足の事態が起これば、人を助けろ』と」



「…っ!…つまり奴は、この状況で人を助けに行けと、そう言っていたのか?」



「はい。今の状況は正に、その世界レベルの不足の事態だと思います。この状況で人々を助ければ…」



「多くの人達から信頼を得られる、という事か…」



 それを聞いて、リュークの心境は複雑なものとなった。無論、コウヤの考え通りに動けば事態は好転するだろう。だが、傷付いた者が多いのはこちらも同じ。



 この状況で人々を救いに行く、つまりは無数の魔獣達と戦いに行く事を意味する。そうすれば、少なからず犠牲が出るだろう。



 この状況下でそんな事をしようとする者がいるのか、そんな事を強制しても良いのか。そして、コウヤの思い通りに事態を動かして良いのか。



 そんな考えが頭の中を駆け回っていた。



 そんな中唐突に、耳に声が飛び込んできた。



「私は、やった方が良いと思います。ですが、それを皆さんに強制する程決断し切れてもいません。だから…」



「…1人で行くとでも言うつもりか?」



 沙霧の顔に衝撃が走った。そして、直ぐに顔を元に戻す。



「はい。それが1番都合が良いですから……」



 視線を落とし、暗い声と表情でそう言った。それを聞いたリュークは、無性に苛立った。



「調子に乗るな!お前1人で助けられる命などたかが知れている!…それに、帝国での一件を気にしているのならそんな考えは今すぐ捨てろ」



「っ!」



 図星。自分の考えを、全て当てられた。



「あれはお前だけの責任じゃない。気づけなかったのは、俺達も同じだ。お前だけが責任を感じる必要は無い」



 自然と、涙が溢れた。



「だって、私が悪いんじゃないですか!コウヤが対処していなければ、私のせいでこの国は潰されていたかも知れないんですよ!

 私なんて、この国にいる資格はっ…」



「ある!」



 衝撃を受けた。



「確かにお前は失態を犯した。それは否定しない。だが、今日のお前はどれだけの魔人族を救った?」



「っ!」



「お前は、あの失態を変えるだけの功績を残した。だから、この国に居て良いんだ」



 今までに聞いた事がない程、穏やかな声だった。その声を聞くと、自然と涙が治まってきた。手で涙を拭い、自分の考えを伝えることにした。



「…そう言ってもらえて、とても嬉しいです。だからこそ、私はこの国の為に戦いたいんです」



「…そうか。なら、行くと良い。だが…」



 身体を沙霧の方に向けるリューク。そして、その隣に空中から現れたルドーが降り立つ。そしてその反対側には、『幻影』テノムがいつのまにか立っている。



「俺達も共に行く。大人数は動かせないからな。少数精鋭で行こうじゃないか」



「っ!」



 そう言ってくれたリュークに、その横から笑いかけてくる2人に、かつてない程の感謝と、安心感を覚えた。



「はいっ!行きましょう!」



 満面の笑みで答えた。 



 ――――――――――――――――――――――――



 そして『魔王』シーナも沙霧と同じく、『黒氷の魔人』イリアから同じコウヤの伝言を聞いていた。



「コウヤ君。いつかこんなことが起こるって、知ってたのかな?なら、私に教えてくれても良いのに…」



 少しいじけているシーナを見て、イリアは、コウヤから聞かされていたことを思い出す。この地震は、コウヤが意図的に引き起こしたもの。つまり、世界を地獄に変えたのはコウヤなのだ。



 だが、それを伝える事はコウヤに止められているし、ここでシーナに伝える訳にはいかない。それを悟っていたからこそ、イリアの気分は暗かった。



「良し!なら速く助けに行こう!」



 こうしてどこまでも明るい表情と声を見せるシーナを見ていると、本当に暗い気持ちになる。何故なら、イリアは悟っているからだ。



 シーナはコウヤを()()()と信じて疑わないが、コウヤはそうは思っていない。飽くまでイリアの考えでしかないが、恐らくコウヤはシーナの事も、魔人族の事も、沙霧の事も、()()()()()()()()()()



 自分が利用できる駒。それ以下とは思っていても、それ以上とは思っていない。コウヤは自分達をその程度としか思っていないのだと、イリアは考えている。



「はい」



 だからこの状況が、彼が作ったこの状況が、これからどうなっていくのか全く予想が出来ず、ただ流されていくことしか出来なかった。



 ――――――――――――――――――――――――



 心の中で誓いを立て、裕翔はゆっくりと目を開けた。一度大きく深呼吸をして、隣に黙って佇んでいる存在に目をやった。



 大きく、白いフードを被っているので口元しか顔は見えないが、()()()()()()()その顔は、例え見えていなくとも、その姿に顔を写すことが出来た。



 そんな存在を見て、裕翔は本当に悲しくなった。これ以上見つめていれば涙が出てくるのを知っていたので、()()の建物に目をやる。



 その建物は、地震が起こった後のこの世界において数少ない、倒壊していない建物の1つだ。その建物の名は、『大監獄・デスタード』。人間ランク黒の凶悪犯罪者達を牢に繋いでいる、世界最大の監獄だ。



 任務は、あの中に囚われている数多の凶悪犯罪者達を解放する事。そして、『神』に()()させる事。



「…さぁ、行こう」



 隣にいる存在にも声を掛け、任務を開始した。



「『五十連・封印の波動(ロック・バースト)』」



 それを、大監獄に放った。

次回で、今章最終回です

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