第55話 二学期 新学期そうそう問題が!(ソフトバージョン) 初出09.4.9
「おはよう有希!」
「あ、おはよう!」
登校中のオレの肩をたたいたのは千里だった。千里とは前から仲が良かったが、読者モデルをやるようになってからは、以前よりずっと仲良くなった気がする。それは秘密を共有しているということも関係しているかも知れない・・・
「ねえ有希、二学期始まったらすぐに体育祭の準備が始まるって知ってた? まだ暑いのにね。」
「・・うん・・・」
でもオレは体育祭には出ないことになっている・・・その間に手術するからだ・・・でもまさか本当のことなんか言えるハズない・・・それに、まだどういう理由にするかも決めていないから、オレは何と言っていいかわからない・・・ヘタなことは言えないのだ。
「なんかポールダンスっていうのやるらしいわよ。」
「ポールダンス?」
ポールダンスって・・あのポールにつかまりながらセクシーに踊るやつだろうか・・・でも女子校の体育祭であんなダンスするとは思えないし・・・
「ポールダンスってどんなの?」
「わたしも良く知らないんだけど、高いポールからリボンみたいのが垂れてて、それをみんなで編んでいくみたいよ。」
「・・ふ〜ん・・・」
なんかさっぱりわからない・・・
「でも、有希ちょっと焼けたね。」
「あ・・うん・・・ちょっとね・・・」
プールに行ったからなんだけど、そんなこと言ったら水泳の授業を休みにくくなりそうだ・・・まだ1回だけ水泳の授業があるけど、オレはもちろん休むつもりだ。レナとプールに行った時は運良くバレなかったけど、学校でクラスメイトの前で水着になるなんて、いくらなんでもヤバすぎる。
「このまえ海の中道に行ったから、少し焼けたかも・・・」
「海の中道? 何しに?」
「あ、水族館とか・・・」
「え? 水族館で焼けたの?」
「いや・・あの・・水族館に行く前に海浜公園でちょっとウロウロしたのよ・・・」
オレってウソが下手だなぁ・・・つくづく思う・・・
校門の前では新学期そうそう服装検査をしていた・・・夏休み開けで服装が乱れていないかチェックしているのだろう・・・でもオレはまったく変わっていないし、そもそも服装を乱そうなんて考えはないから心配ない。
オレたちは挨拶をしてそのまま行こうとしたのだが、なぜかオレだけ長山鏡子〈ながやま きょうこ〉先生に呼び止められてしまった。
「戸田さん、あなた髪は伸ばしてらっしゃるの?」
「あ・・はい・・・」
オレはそろそろ切ろうかと思っていたのだが、編集長の佐々木さんにしばらく切らないように言われてしまったのだ・・・でもオレはちゃんとお下げにしているし・・・何か問題があるのだろうか・・・
「まあ、校則にはっきりした決まりはないですが、それ以上伸ばすのなら三つ編みにした方がいいんじゃないかしら? あまり長いお下げはみっともないですよ。」
「・・は・・はい・・・」
でもオレ・・・三つ編みなんて出来ない・・・お下げだってやっと上手に出来るようになってきたばかりなのに・・・
「どうしよう・・・」
「どうしたの? 有希。」
「わたし、三つ編み出来ないんだ・・・」
「あ!そっか・・有希お下げも苦手だったもんね。」(21、25話参照)
「う・・うん・・・」
「わたしも三つ編みはやったことないなぁ・・・だれかに教えてもらったら?」
「・・うん・・・」
でも・・・そんなにすぐに上手に出来るとは思えないし・・・かあさんも最近は忙しいみたいだから、毎朝やってもらうのも気が引ける・・・
今日は始業式だけで授業はなかったから、放課後オレは職員室に向った。
「失礼します。」
オレは職員室に入ると長山先生のところに行った。
「あ・・あの・・先生・・・」
「あら? 戸田さん、どうなさったの?」
なんか長山先生ってちょっと怖いイメージがあるから緊張する・・・
「・・あの・・今朝、先生に髪を三つ編みにするようにって言われたんですけど・・・」
「ええ。」
「・・わたし・・三つ編み出来ないんです・・・」
「あら? そうなの?」
「はい・・ずっと髪の毛は短かったから・・・実は・・お下げもやっと上手に出来るようになったばかりで・・・最近まで、おかしな時は母に直してもらったりしてたんです・・・」
「そうなの・・・それで?」
「それで・・あの・・三つ編みのやり方教えて頂けないかと・・・」
「なんだ、そんなことなの? もちろんよろしいわよ。」
「それじゃ、まず先生がやってみましょうか?」
「あ・・はい・・お願いします・・・」
オレは髪をまとめてもらう時に左右に細い三つ編みを作ったことはあったけど、お下げを三つ編みにするのは初めてだ・・・どんな感じになるかドキドキする・・・似合わなかったらどうしよう・・・
先生はオレの髪をほどいてきれいに梳かしていく・・・
「戸田さんは真直ぐで綺麗な髪してるわね。」
「そ・・そんなこと・・・」
真ん中から分けた髪を、さらに3つに分けて、手際良く編んでいく・・・あまり親しくない長山先生に面と向ってやられるとかなり照れる・・・
「どうかしら? 先生は似合ってると思うけど。」
「は・・はい・・・」
髪を三つ編みにしたオレは、なんか昔の女子高生みたいだ・・・でもそんなに変じゃないかも・・・
「あなたは近頃の若い娘ではめずらしくお淑やかな雰囲気を持ってらっしゃるから、三つ編みも可愛らしくて良いと思うわよ。」
「・・・・・」
お淑やかなんて・・・そんな風に言われると恥ずかしくて顔が赤くなっちゃいそうだ・・・
「それじゃ、練習してみましょうか。」
「あ・・はい・・・」
先生はイスの背に3本のヒモをくくりつけて、三つ編みのやり方を教えてくれた。いくつかやり方があるらしいが、一番普通の方法を教えてもらった。 3本のヒモを並べて、右の1本を真ん中と左の間に入れる・・・そしてこんどは左のヒモを真ん中と右の間に入れる・・・見てると案外簡単そうだ・・・
「やってごらんなさい。」
「・・はい・・・」
しかし、いざやってみるとそんなに簡単ではなかった。
「あ、下からもってきてはダメよ。常に上から持ってこないと。」
「・・はぃ・・・」
上から・・上から・・注意しながらやってみる・・・あれ・・・?・・なんかヘンだ・・・
「2回同じ側から持ってきちゃダメでしょう?」
「あ・・はぃ・・・」
思いのほか難しい・・・
何度かやっているうちに、なんとか出来るようになってきたが、出来上がりは先生がやったようには綺麗じゃなかった・・・先生がやると綺麗に整っているのに、オレがやると編み目が不揃いだし、なんだかヨレヨレだ・・・
「常に同じ強さで編まないとそうなってしまうのよ。それにもっと丁寧に編まないといけないわね。」
「・・は・・はぁ・・・」
「髪を編むにはまだ時間がかかりそうですね。」
「・・・・・」
なんか情けなくなってくる・・・
「わかりました。それじゃ、しばらくヒモで練習しなさい。そして上手に出来るようになったら髪を編みましょう。それまでは今のままでいいわ。」
「え?」
「三つ編みが上手に出来るようになるまで、お下げのままでいいですよ。」
「あ・・ありがとうございます・・・」
それは助かった・・・でもちゃんと練習して出来るだけ早く三つ編みできるようにならなくちゃ・・・
「そういえば、戸田さんは茶道も習ってるんですって?」
「い・・いえ・・習ってるっていうか・・お手伝いするついでに教えていただいてるだけで・・・」
「なぜ茶道部に入らなかったの?」
長山先生は茶道部の顧問だからこんなことを聞くのだろうか・・・?
「はぁ・・あの頃はまだ習うことは決めてたんですけど・・実際に習ってなかったので・・流派とか違うといけないと思って・・・それに華道も習いたかったですし・・・」
「そうなの。どなたに習ってらっしゃるのかしら?」
「中学の時の家庭科の先生で・・・わたしの恩師なんです。」
「・・・戸田さんはどこの中学だった?」
「春日二中です・・・」
「え? 春日二中の家庭科の先生っていえば・・三吉さんじゃなかったかしら?」
「・・はい・・そうです・・三吉先生をご存知なんですか?」
「ええ、三吉さんとは同じ先生に習った仲なのよ。」
「え?! そうなんですか・・・?」
オレは驚いた・・・三吉先生と長山先生が知り合いだったなんて・・・
「三吉さんとはだいぶ会ってないけど・・お元気かしら?」
「はい!ついこの前も習いに行ったばかりです。」
「そう、それは良かったわ。・・・でも・・・えっと・・・どう言ったらいいのかしら・・・戸田さんは・・中学のころは男の子だったんでしょう?」
「あっ・・は・・はい・・・」
「でもさっき恩師と言わなかったかしら?」
「・・は・・はい・・・」
「男の子なのに三吉さんに習ってらっしゃったの?」
「あっ・・」
そういうことか・・・
「あの・・わたし・・心は女だったんですけど・・ずっと男として生活してきたから、やっぱり女の子らしく出来なくて・・・それで高校生になる前に、三吉先生にいろいろ教えていただいたんです。」
「まあ、そうだったの・・・どうりでしっかりした躾けが出来ていると思ったわ。」
たしかに三吉先生にはそうとう躾けられたけど・・・でもおかげでこうして女の子として生活していけてるのだからオレはすごく感謝しているのだ・・・
「先生ね、戸田さんのこと本当は男の子だと聞いていたから、どんな子なのかと思ってたら、女性らしくて他の子たちにも溶け込んでるから感心していたのよ。」
「え?! ・・そうなんですか?」
まさか長山先生がオレのことをそんな風に見ていたなんて思いもしなかった・・・ひとの考えてることなんて話してみないとわからないものだ・・・
「でも・・わたし、それほど女性らしくないです・・・ただ仕草とかしゃべり方で女性らしく見せてるだけで・・・」
「いいえ、そんなことないわ。仕草やしゃべり方は重要ですよ。自分では見せてるだけだと思っていても、真面目にやっていれば、ちゃんと身になっていくものです。」
「・・そ・・そういうものでしょうか・・・」
オレにはどうも良くわからない・・・オレのやっていることの先に・・本当の女の子があるのかどうか・・・このままで本当に女の子になれるのかどうか・・・
「・・わたし・・内面ももっと女の子らしくなりたいと思うんですけど・・・どうすればいいのか良くわからないんです・・・」
「先生は性同一性障害ってどういうものか良くわからないけど、あなたはそのままで良いんじゃないかしら?」
「そのまま・・?」
「人間って急には変われないものよ。それに戸田さんを見てると変わる必要はないように思うけど?」
「・・・・・」
「戸田さんは男だからとか女だからではなく、あなた自身が魅力的なのよ。それを自分で解ってないだけだと思うわよ。」
「・・・・・」
「あえて直すところがあるとすれば、オドオドしたところは良くないですね。もっとしっかりしなくては。」
「・・は・・はい・・・」
でも・・オレが魅力的なんて・・・そんなことないと思うけど・・・長山先生がオレにお世辞言うとも思えないし・・・
「心配しなくても、あなたはちゃんと成長していると思いますよ。女性としてだけでなく、ひとりの人間としてもね。」
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「あれ? 有希じゃない。どうしたのよ、三つ編みなんかして。」
部室に寄ったら長谷川も来ていた・・・
「一瞬だれかと思ったわよ。」
「・・ヘ・・ヘンかな・・・?」
「ううん、可愛いわよ。」
いや・・別に可愛くなくても良いんだけど・・・
「ほんと・・戸田さん可愛い!」
「うわっ!・・い・・井川さん・・いたの・・・?」
井川聡子〈いがわ さとこ〉は存在感がないから、居るのに気づかない時が良くある・・・急に現れるから心臓に悪い・・・(29話参照)長谷川とは秘密の話も多いのに・・・
「戸田さんって、どんな恰好でも似合うから羨ましいです。」
「・・そ・・そう・・・?」
井川聡子と話していると、どうも調子が狂ってしまう・・・オレはどっちかといえば苦手なタイプだ・・・
「自分でやったんですか?」
「い・・いや・・長山先生にやってもらったんだけど・・・」
「長山先生?」長谷川が驚いたように言った。
「なんで長山先生なんかにやってもらったの?」
「いや・・髪が長くなったから、三つ編みにしなさいって言われたんだけど・・・三つ編みなんて出来ないから・・・習いに行ったのよ。」
「へ〜・・・大変ねぇ。」
「あ・・でも、ヒモで練習して、上手に出来るようになってからで良いって言ってくれたから・・・長山先生ってけっこう良い人よ。」
「早く三つ編み出来るようになって下さいね。」
「え? なんで・・・?」
「だって戸田さんが三つ編みやってる姿なんて・・想像しただけでワクワクしちゃいます。」
「・・や・・やめてよ・・井川さん・・・」
井川さんったら・・・いったいどんな想像してるんだろう・・・
「でも有希もどんどん女子力が上がっていくわね。」
長谷川がニヤニヤしながら言った・・・
「・・・・・」
長谷川は、オレが長谷川と井川の両方がいるところでしゃべるのが苦手なのを知ってるようで、すぐにこういうイジワルな言い方をしてくる・・・きっとオレが困るのを楽しんでるに違いない・・・
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次の日から体育祭の練習が始まった。オレは出ないのだから練習もやらなくていいかと思ったが、どうもそうはいかないみたいだ・・・白石先生と話したのだが、突然親戚のお葬式とかで休むことになったのだ。最初は盲腸か何かの手術をすることにしようかと計画していたが、それだと傷がないのを見られてもマズいので、手術するというのは止めようということになったのだ。おかげで、オレは体育祭の直前まで練習しなきゃいけなくなってしまった・・・
体操服に着替えるため、スカートを脱いでエンジ色のブルマーをはく・・・オレは体育の日は必ずガードルをはくことにしている・・・それは股間の膨らみを隠すためだ・・・オレのがいくら小さいからといっても、ブルマーは生地が柔らかいから膨らみが目立たないか心配なのだ・・・
夏服のセーラー服の白い上着を脱いで、体操着を着ようとすると、急に岡本に声をかけられた。
「有希、プール行ったの?」
「え?!」
オレは驚いた・・・プールの話なんてしなかったのに・・・
「な・・なんで?」
「だって、背中に水着の跡がついてるよ。白い跡がバッテンになってる。」
「!」
気づかなかった・・・考えてみれば焼けてるのだから、水着の跡がついていても全然不思議じゃない・・・オレはなんでそんなことに気づかなかったのだろう・・・
「有希は水泳が苦手なのかと思ってた。」
「・・そ・・そんなことないけど・・・」
「じゃぁ、こんどのプールは出るんでしょう?」
「えっ・・・それは・・・」
えらいことになってしまった・・・水着の跡を見られては、いまさら泳げないとは言いにくい・・・
「・・う・・うん・・・泳げないことはないんだけど・・・」
「楽しみ!有希の水着見たかったんだぁ!」
・・・なんで・・・どいつもこいつも・・・オレに興味津々なんだよ・・・どうしよう・・・スク−ル水着なんて着れないし・・・そもそもそんなの持ってない・・・
「それではポールのリボンを持ったら赤と白交互に並んでください!絡まっていたらちゃんとほどいてね!」
うちのクラスの担任の山口智佳〈やまぐち ともか〉先生がメガホンで指示を与える・・・オレたちは言われるまま、真ん中に立てたペンキで白く塗られた高いポールのテッペンから垂れた紅白のリボンを持つと、ポールを中心に円になって広がった。
「赤のリボンを持った人は時計回り、白の人は逆に進みます!」
オレたちは紅白のリボンを持った者どうしで向かい合うかたちになった。
「それじゃ、まず赤のリボンを白の人がくぐって下さい! くぐったら今度は逆に白のリボンを赤の人がくぐります!」
ポールダンスというのは、正確には『メイ・ポールダンス』というヨーロッパのお祭りの時にやるダンスの事だった。5月にやるから『メイ・ポールダンス』というらしい・・・やっぱりあのセクシーなダンスじゃなかった・・・当たり前か・・・
オレたちは言われるまま手を上げたり下げたりして踊りながら、前から来る人をくぐっては、今度は自分が手を上げて下を通すというのを繰り返す・・・するといつの間にかポールに巻き付いていく紅白のリボンが綺麗に編み込まれていた・・・なんとなく三つ編みに似てるかもしれない・・・なんか楽しい・・・!
「それでは今と逆に動いてリボンをほどいて下さい! 次は本番と同じ音楽を流してやってみます!」
「なんかポールダンスなんてかったるいよねぇ。」
「・・う・・うん・・・」
練習が終わって着替えの時、オレは岡本に言われてそう答えたが、実はけっこう楽しくて、本番でやれないのを少し残念に感じていた。女子校の体育祭ってどんなのか知らなかったが、メイポールやフォークダンスや、どうやら競技というよりは見せるものが多いみたいだ・・・こういうのならオレもやりたかったかも・・・でも体育祭の日はオレは手術で休まなきゃいけない・・・
こんなにみんなで練習してるのに、急にオレだけ抜けるのも気が引ける・・・みんなに迷惑かけなきゃいいけど・・・
でもそんなことより、オレにとってはもっと大きな問題が・・・
「有希どうしたの? なんか元気ないね。」
「・・そ・・そんなことないよ!」
千里に聞かれてオレは慌てて笑顔を作った・・・
「心配なことあるんだったら、わたしに相談してね。」
「・・う・・うん・・・本当に何でもないの。」
千里の気持ちは嬉しいが、こればかりは相談できる問題ではない・・・いったいどうすればいいのだろうか・・・プールの日はあさってなのに・・・
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「はぁ〜・・・」
何度もため息が出てしまう・・・中庭のベンチで牛乳を片手にカレーパンを食べながら、何とか妙案はないものかと考えていたのだが、いくら考えても良い案など浮ぶハズもない・・・
「なに一人でため息ついてるのよ。」
「あ・・うん・・・」
長谷川がやってきてベンチのとなりに座った。
「どうしたのよ有希、元気ないじゃない。」
「・・う・・うん・・・」
長谷川に相談してみようか・・・こんなこと相談できるの長谷川しかいないし・・・でも相談されたって長谷川にもどうすることも出来ないだろうけど・・・
「え?! プール?」
「う・・うん・・・」
「あんたに水着なんて着れるわけないじゃない!」
「そうなんだけど・・・」
なんか言いにくいな・・・
「実は・・レナとプールに行って・・・焼けて水着の跡がついてるの岡本さんに見られちゃったの・・・」
「はあ? あんたプールで水着着たの?」
「・・う・・うん・・・で・・でも、好きで着たんじゃないよ・・・罰なんだ・・・」
「バツ?」
「・・うん・・夏休みの花火大会のお詫びに・・・何でもするって言ったら・・・こんなことになっちゃって・・・」
「レナちゃんも大胆なことするわねぇ・・・」
「イジワルなのよ・・・」
「それで、こんどの水泳の時間は休めなくなっちゃって・・・」
「どうする気?」
「・・いや・・・どうしよう・・・」
「でもさ、有希、水着着れたワケでしょう?」
「・・・う〜ん・・・まあ・・・」
全然気づかれなかったけど・・・
「有希のクラスはいつがプールの日なの?」
「えっと・・あさって・・・」
「わたしのクラスは明日よ。」
「へ〜・・・それが・・・?」
「明日、わたし帰ってすぐに洗って乾かすから・・・有希は忘れないようにサポーター持ってきなさいよ。」
「?・・・どういうこと?」
「だから、わたしの水着を貸してあげるって言ってるのよ。」
「え?! そ・・そんな・・・・」
オレが長谷川の水着を着るなんて・・・絶対ムリだ・・・だいいち長谷川はオレが着るのイヤじゃないのだろうか?
「大丈夫よ。わたしの方が背は少し小さいけど、そんなに体格も変わらないし。」
「そ・・そんなことじゃないよ・・・長谷川さんはイヤじゃないの?」
「何が?」
「・・だ・・だって・・・わたし・・・・長谷川さんは自分の水着を・・・そのぉ・・・男が着るなんて・・・イヤじゃないの・・・?」
「いや・・そう言われるとなんか・・・でも、有希はもう男じゃないじゃない。」
「・・そ・・それはそうだけど・・・でも・・・」
「心配しなくていいわよ。わたしはもう有希のこと男なんて思ってないから。」
「・・・・・」
「それに、有希はわたしと同じ中学だったこと知られてるから、水着が違ったら怪しまれるかも知れないわよ。」
「!」
それは考えなかった・・・
「それとも中学のスクール水着自分で買う? 中学の近所の文具店で売ってるはずだけど?」
「・・・うっ・・・それは・・・」
「でしょう? だったらわたしのを使いなさいよ。」
「・・・ほんとにいいの?」
「良いから言ってるんじゃない。」
「・・・・・」
なんだか妙なことになってきた・・・それにしても、長谷川ってオレのこと、もう男だと思ってなかったんだ・・・
「・・じゃぁ・・・貸してもらおうかなぁ・・・」
「そうしなさい。今年はもう終りなんだから、新しく買うのもったいないわ。来年になったら古くなったからって自分の水着を買えば良いじゃない。」
「・・うん・・・」
そういう問題でもないと思うんだけど・・・
水着はなんとか貸してもらうことになったとはいえ・・・オレには他にも問題が・・・知らない人の中ではバレなかったけど・・・クラスメイトの中ではもっと慎重にやらないと・・・もしもバレたらタダでは済まない・・・オレが男だとバレたら・・この学校にもいられなくなるかもしれないし・・・そんなことになるのはイヤだ・・・オレはもうこの学校が好きになってしまっているのだから・・・




