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オレは女子高生・ソフトバージョン  作者: AT
第2章

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54/61

第54話 懲罰 レナが考えたオレへの復讐(ソフトバージョン)初出09.4.3

 今日はレナとマリンワールドに行く約束の日・・・なぜかレナはうちまで迎えに来るという・・・オレは朝8時ごろからレナが来るのを待っていた。


 レナが来たのは8時半になった頃。なんか大きなバッグを肩から下げている・・・レナは来るなりオレを引っ張って、オレの部屋に入った。

「ユウ、わたしが選んであげた服は?」

「え?」

オレはいきなりの事でワケがわからずうろたえた・・・

「最初に天神に行った時に買ったじゃない。あのショッキングピンクのヤツよ!」(26話参照)

「あぁ・・あれ・・・」

オレは言われるままに洋服ダンスに掛けていた服を取り出した。


「どうするの?この服・・・」

「ユウが着るに決まってるでしょう。」

「え?」

オレは驚いた・・・だってこれは・・・

「これはレナが・・わたしがもっと自分に自信を持てたら着ればいいって・・・」

「そんなこと言った?」

「言ったよ!」

「もし言ったとしても、あれから3か月も経ってるじゃない。」

「・・うぅ・・・」

そんなに経ったっけ・・・?

「でも・・わたし・・まだ自信ないよ・・・」

「何言ってんの? 着なきゃ自信なんて持てるハズないじゃない!」

「・・・・・」

なんか言ってることが前と違う・・・


「とにかく着なさい。ほら!」

「ちょっと待ってよ・・・ほんとにこれじゃなきゃダメなの?」

「ダメよ!」

これは罰だ・・・そうに違いない・・・レナはやっぱり花火のことで怒ってたんだ・・・それでこんなの着せてオレに恥ずかしい思いをさせて復讐しようとしてるんだ・・・


「・・・わかったよ・・・着ればいいんでしょう?」

何でも言うことを聞くと言ったのはオレだ・・・イヤだけど・・・とても断われない・・・

「じゃぁ・・下で待っててよ・・・」

「いいじゃない女同士なんだから。更衣室にも一緒に入ったことあるから恥ずかしくないでしょう?」

「あれは・・レナが勝手に入ってきただけじゃない・・・」

いきなり入ってきたから・・・オレがもう女の子の身体なのも・・・ナプキンしてるのもバレちゃったんじゃないか・・・


 オレは仕方なく肩ヒモが外せるタイプのブラを探してヒモを取った・・・

「・・・・・」

レナの前で裸になるなんてやっぱり恥ずかしい・・・でもレナは出て行く気はまったくないようだ・・・これも罰なのかも知れない・・・オレは出来るだけレナから胸が見えないように部屋着を脱いで、急いでブラを着けた。


 しかし、モデルの撮影で似た服を着た経験があったのは有り難かった。そうでなければこんな服、着こなすのにも苦労しただろう・・・モデルをやることは思ってたよりオレにとってプラスになるかもしれない・・・

3段にフレアーになった黒いスカートの腰を調節し、ヒラヒラがついた衿が肩まで開いたショッキングピンクのシャツの肩の位置を整えた・・・こういう服は着こなさなきゃカッコよく決まらない・・・

「どう?これでいい?」

オレは腰に片手を添えて撮影でやったようなポーズを取ってみせた。

「いいじゃない! なかなか着こなせてる。ユウったら実はこっそり着てたんじゃないの?」

「そ・・そんなことないわよ・・・」

モデルのことはまだ言えない・・・でも雑誌が発売されたら、JINONはレナも見てるんだからバレてしまうかも知れない・・・いくらバッチリお化粧してるからオレに見えないといっても、いとこだったらオレだとバレないとも限らない・・・


 「じゃぁ、次は化粧ね。」

そう言ってレナは自分のポーチから化粧品を取り出した。

「え?・・・お化粧なら自分でするわよ・・・」

こんな色っぽい服だからとレナに濃いお化粧されたらたまらない・・・それにどうせならいつも使ってる化粧品の方がいいし・・・

「ダメよ。今日は普通のお化粧じゃダメなのよ。」

「・・・どうして?」

「まだ言えない・・・」

「・・・・・」

レナのやつ・・・なんか企んでる・・・?


「あんまりケバいお化粧しちゃイヤだよ・・・」

「わかってるって。」

レナが持ってきた化粧品はオレが持ってるファンデーションより少し厚塗りになるみたいだ・・・

「出来たよ。別にケバくないでしょう?」

「・・うん・・・」

たしかにそんなに濃い化粧じゃない・・助かった・・・少しは気を使ってくれてるみたいだ・・・

「じゃぁ、行こう!」

「・・う・・うん・・・」

オレはマリンワールドに行くのには乗り気だったが、この恰好ではさすがにテンション下がっちゃう・・・こんな恰好じゃ目立ってしまいそうだ・・・これはかなりの罰ゲームに違いない・・・レナもヒドイこと考えてくれたものだ・・・



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 電車で天神につくと博多駅に行くために地下鉄に乗り換える・・・オレが地下鉄の方に行こうとすると、レナがオレの手をつかんだ。

「ユウ、そっちじゃないよ。」

「え? でも地下鉄じゃ・・・バスで行くの?」

「違うよ、買わなきゃいけないものがあるの。」

「・・・なに買うの・・・?」

「来ればわかるって!」

なんか不敵な笑みだ・・・また何か企んでるのだろうか・・・


レナは天神コアのエスカレーターを上がっていく・・・いったい何を買うんだろう・・・

「ね・・ねぇ・・・買い物ならまたこんどすればいいじゃない・・・」

「これから必要なものを買うのよ。」

「必要なもの?」

何だろう・・・水族館に必要なものって・・・イルカのショーとかで濡れるといけないからビニールの雨ガッパでも買うのかな?


 「ここよ。」

「・・・・!」

そこは水着売場だった・・・ワンピースとかビキニとか色とりどりの女性物の水着が売られている・・・

「・・・なんで? なんで水着なんか・・・マリンワールドに行くんじゃないの・・・?」

「もちろんマリンワールドにも行くけど、でもその前に暑いから海浜公園にあるプールで遊んで行こうと思って。」

「・・そ・・そんな・・・無理よ・・・」

オレに女性物の水着なんて着れるワケないじゃないか! そりゃぁオレの身体もだいぶ女の子っぽくなってきたけど、股間には男の子のモノがあるし・・・そんな状態で水着なんて・・・

「だいじょうぶよ。」

「だ・・大丈夫なワケないじゃない・・・だって・・わたし・・付いてるんだよ!」

「ユウは知らないんだろうけど、水着の股の部分って結構しっかりしてるのよ。女の子だって割れ目が見えたりしたら恥ずかしいんだから。それに下に水着用のサポーターも着ければ万全よ!ユウのなんか目立たないって!」

・・・そりゃぁ、オレのはそんなに大きくないし・・・女性ホルモンを使うようになってからは、すっかり縮んでしまったけど・・・それでも・・・

「・・いくらわたしのが小さくても・・・見ればわかっちゃうよ・・・」

「だいじょうぶだって! 女の子だってそこそこ“ふっくら”してるコもいるんだから。」

「そんなぁ・・・」

いくら女の子が“ふっくら”してたって・・・“もっこり”してるのとはレベルが違うんじゃないのかなぁ・・・?


「さあ、入るよ。」

レナは嫌がるオレを引っ張って店の中に入っていく・・・こんなところ・・いるだけでもいたたまれない・・・

「・・ビ・・ビキニはやめてよ・・・」

もう観念しているのが悲しい・・・でもオレはレナには元々かなわないし・・・今回はオレのお詫びでもあるから・・・お詫びに何でもするって言ってしまったから・・・せめて少しでもマシな状況を願うしかない・・・

「わかってるって、いくらわたしでもユウにビキニ着させるほどイジワルじゃないよ。」

「・・・・・!」

やっぱりオレ・・イジワルされてるんだ・・・

「ワンピースでも素敵なのいっぱいあるんだから。これなんか色っぽくていいんじゃない?」

そう言ってレナが手にとったのは黄色に大きなハイビスカスの柄がついた、背中が腰まで大きく開いた水着だった。

「・・こ・・こんなの無理よ・・・」

「そうね、ユウにはこんな大人っぽいのは似合わないよね。」

その水着をふたたび掛けたのでオレはホッとした。レナも少しはわかってくれてるようだ・・・


「ユウには大人っぽいのより、もっと可愛いのが似合いそうだもんね。」

・・・やっぱりわかってない・・・

「これがいい!これ着てみてよ。」

「・・・・・!」

それは今オレが着ている服よりもっと鮮やかな濃いめのピンクで、肩にかかる部分が無くて胸元がゆるいカーブを描いている・・・肩ヒモは白くて後ろでバッテンになっている・・・形だけみればスクール水着に近いかも知れないが、全体的なイメージはずっと女っぽい・・・

「・・だめよ・・・こんなの着れない・・・」

尻込みするオレだったが、レナはそんなこと気にもせず更衣室へと連れていく・・・

「さっさと着てみて。下にこれはくのよ。」

そう言って水着とサポーターを渡され、更衣室に押し込まれた・・・


 オレは更衣室の中でひとり困りはてていた・・・しかし・・もはや観念するしかなさそうだ・・・それに実際に着て見せれば・・レナだってオレが女性物の水着を着るなんて無理だってわかってくれるかも知れないし・・・

 オレはまずスカートとパンツを脱いでサポーターをはいてみた・・・けっこうピッチリしている・・・

「・・・・・」

男の子の部分は股間に押し込んでみると思ったより“もっこり”しなかった・・・

上を脱いでブラを外し、水着を着る・・・肩ヒモをして、胸をカップの中に収めた・・・下からサポーターがはみ出ていないか確認する・・・大丈夫みたいだ・・・


 「レ・・レナぁ・・・一応着たけど・・・」

オレはカーテンから顔だけ出すと、そこには店員もいて驚いた。

「どれ、見せて!」

レナがいきなりカーテンを開けたので、オレは慌てて両手で股間を隠した・・・店員さんにオレが男だとバレたらどうしようと焦った・・・

「いいじゃない!可愛いよユウ。すっごく似合ってる!」

そしてオレの耳に口を近づけて、小さな声で言った・・・

「アソコも全然目立ってないよ。」

「・・うぅ・・・」

それは良いことなのだろうか・・・女の子になったオレにとっては・・・良いことに違いない・・・でも水着を着ても目立たないなんて元男としてはちょっと悲しい・・・


 店員さんが気付いていないかとチラッと見てみるが、別におかしな素振りは見せていない・・・オレが男だと気付かれていないのだろうか・・・

「ユウこれにしなさいよ。」

そしてまたオレの耳に近づいてこっそり言う・・・

「これにしなかったらビキニにしちゃうけど?」

「・・そんなぁ・・・」

それじゃぁ、これに決めなきゃダメってことじゃないか・・・レナはさらに追い討ちをかけてくる・・・

「ねえ店員さん、彼女すごく似合ってますよねぇ。」

「ええ、お似合いですよ!」

・・・店員が似合わないなんて言うハズない・・・そう解っていても「お似合いです」なんて言われるとオレとしてはなんだか絶壁から突き落とされたような気持ちになってしまう・・・こんな気持ちになるのはオレの心の中にはまだ男の気持ちが残っているからなのだろうか・・・


「・・う・・うん・・・これにする・・・」

オレには選択権がない以上、もっとヒドイことにならないうちに手を打った方が利口だ・・・オレの気持ちなんてレナにはお見通しのようだし・・・

「うん、それがいい!」

レナの笑顔が憎たらしい・・・オレの気持ちを知っててこんな罰を与えるなんて・・・



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 「ねえ・・ウソよね・・・?」

「なにが?」

「この水着着てプール入るなんて・・・買っただけなんでしょう? こんなの買わせて、わたしを恥ずかしがらせる罰だったんでしょう?」

「なに言ってんの? 水着買っただけじゃ意味ないじゃない。」

「・・・・・」

「もちろんプールに入るよ。」

「・・だって・・タオルとか持ってきてないわよ・・・」

「ユウは心配しなくて大丈夫! わたしがちゃんと持ってるから。」

そう言ってレナは肩から下げてる大きなトートバッグを叩いてみせた・・・最初からそのつもりだったんだ・・・

「そのお化粧もウォータープルーフなのよ。」

「・・うぉーたーぷるーふ・・・?」

「水に入っても取れないやつ。だからそのままプールに入れるよ。」

「・・・・・」

こりゃぁ、何がなんでもオレをプールに入れる気らしい・・・オレも腹をくくるしかないのか・・・



 海の中道海浜公園は国営の公園だ・・・遊園地のようなものだが、せいぜい観覧車があるくらいで絶叫マシンとかはない、どちらかといえば自然や花壇の花とかを楽しむための家族で楽しめる公園だ・・・そんな施設の中にサンシャインプールがある・・・


 外から見たプールは夏休みということもあり、かなりの混みぐあいに見える・・・この公園の性格上、家族連れがほとんどのようで、カップルとかナンパ目的の男の子は少ないみたいだ・・・それはオレにとっては幸いなことだが、逆に派手な水着を着た女子高生のオレたちが目立ってしまうのではないかという心配もある・・・


 「レナぁ・・やっぱりやめようょ・・・絶対バレるって・・・」

オレは最後の抵抗を試みてみた・・・だってもし女性の更衣室で男だとバレたら・・・ニューハーフだと思われるならまだしも、変態や痴漢と間違われたら大変だ・・・女性の更衣室をのぞくために女の子のふりをしてたなんて思われたら・・オレ立ち直れない・・・・

「なに言ってんの、ユウが男だとバレるハズないじゃない。」

「・・な・・なんでよ・・・」

「だって、ユウは女の子の中でもかなり可愛い方なんだから、もっと自信持ちなさい!」

レナはそう言ってオレの背中を“バシッ”と叩いた。

「イタッ・・・」

これって頑張れという意味なんだろうか・・・自分でこんなヒドイことしてるくせに・・・


 女子更衣室の中も子供とお母さんでいっぱいだ・・・なかには中学生くらいの女の子もいるが、高校生らしき人はいなかった・・・こんなところで絶対男だとバレることは出来ない・・・オレに出来ることは、できるだけ女らしく振るまうことくらいだ・・・


「ひゃっ!」

ロッカーに荷物を入れていると、急に足にさわられてオレは思わず声を上げてしまった・・・野太い声にならなくて良かった・・・見ると小さな男の子がオレの足にしがみついている・・・オレの声で気づいたお母さんらしき人が慌ててやってきた・・・

「あっ・・ごめんなさいね、この子すぐきれいなお姉さんになついちゃうんです・・・」

引き離そうとするが、男の子はオレの片足にしがみついて離れようとしない・・・オレは男の子の頭をなでて言った・・・

「ごめんね、お姉ちゃん着替えなきゃいけないの。離してね?」

すると男の子は納得してくれたのか、やっとオレから離れてくれた。

「ありがとう。」

オレが言うと男の子は恥ずかしそうにお母さんの影に隠れてしまった。


「あぁ・・びっくりした・・・」

親子が行ってしまうとオレはホッとした・・・どうやらお母さんにも男の子にもオレが男だとバレなかったみたいだ・・・

「ユウもやるじゃない。あの男の子ユウに惚れちゃったかもね。」

「な・・なにワケわかんないこと・・・」

オレが男だとバレなかったとしても、オレに惚れるハズないじゃないか・・・レナったら、なにかといえばオレを女っぽい方に持っていこうとするんだから・・・




 オレはカーテンの中で水着に着替えた・・・しっかりとサポーターの中に入れ込んでいるせいか、オレの股間は全然目立たない・・・こんなに目立たなくなるものなのか・・・? これはオレのがすごく小さいってことなのだろうか?・・・まあ、いまとなっては大きくなくて良かったかもしれないけど・・・男だったら彼女が出来た時にガッカリされたかも・・・

「ユウ!着替えた?」

レナに声をかけられて我に返り恥ずかしくなった・・・オレなんて想像をしちゃったんだろう・・・それに・・・彼女とHしてる想像のオレが・・なんで女なんだろう・・・オレ自分でもワケわからなくなってるのかな・・・


 オレはカーテンを開けて出ていった。

「ねえレナ、本当におかしくない?」

恥ずかしくて足が震える・・・

「バッチリよ。」

「うしろ・・サポーターはみ出てない?」

「だいじょぶ、ユウ可愛い! なんか可愛すぎてイジワルしたくなっちゃう。」

「キャッ!!」

急にレナに胸をつかまれてオレは両手で胸を押さえて屈み込んだ・・・良く胸が大きなクラスメイトがこういうことやられてるのは見たことがあるけど、オレがやられたのは初めてだ・・・


「・・うぅ・・・やさしくしてょ・・・」

いまでも十分イジワルなのに・・・これ以上イジワルされたら・・オレ泣いちゃいそうだ・・・

「ほら、こっち来て、座って。」

オレはレナにベンチに座らせれると、背中を向けるように言われた・・・

「な・・なにするの・・・?」

「プール入るのに、こんなに長くちゃ邪魔でしょう?」

そう言ってレナはオレの髪の毛をまとめてくれた・・・両側に丸くまとめた髪型は何だか中国娘みたいだ・・・恥ずかしいな・・・こんなのオレに似合うのかなぁ・・・


 

 プールサイドに出てみると、やはり家族連れでいっぱいでオレは足がすくんでしまった・・・

「ユウ、なにしてんの!」

レナに引っ張られ太陽の下に出ていく・・・こうなったら早く水に入った方が安心できそうだ・・・

 レナは白いビキニだ・・・オレもいつかはこんなの着れるようになるのだろうか・・・プールサイドを歩くと人の目が気になる・・・なんかやたらお父さんに見られてる気がする・・・こんな鮮やかな色の水着じゃあたりまえか・・・


 プールに入ると少し緊張も解けてきた・・・やっぱり股間が見えないだけでだいぶ違う・・・久しぶりにプールに入ったから泳ぎたい気分だったが、アナウンスで飛び込んだり、クロールしたり、潜水したりしてはいけないと言っている・・・たしかにこんなに混んでいたら危ないかもしれないが、それじゃお風呂と大差ない気がする・・・オレは水泳はスポーツで唯一けっこう得意なのに、クロールや潜水出来ないんじゃストレスたまっちゃう・・・


 ふと少し離れたところに浮き輪で浮いている子供が目についた・・・さっきオレに抱きついてきた男の子だ・・・あたりには、あのお母さんも、お父さんらしい人もいない・・・ひとりで大丈夫なのだろうか・・・でもたぶんプールサイドから見てるんだろう・・・レナが変なこと言うからなんか気になっちゃう・・・男の子はオレと目が合うと手を振っている・・・さっき抱きついたのがオレだとわかってるみたいだ。


 しばらくプールに入っていると、なんだか水着も気にならなくなってきた。こんなに混んでいたらオレのこと見てる人なんていないと思う。オレとレナはけっこう楽しく過ごしていた・・・暑いから水の中は気持ちがいい! これでいっぱい泳げれば最高なんだけどな・・・



「あれ?」

「どうしたの? ユウ。」

「男の子がいない・・・」

「だれ?」

「わたしに抱きついた子・・さっきまでいたのに・・・」

「もう上がったんじゃないの?」

そうだろうか・・・でも・・・なんかヘンだ・・・


「!」

浮き輪?・・・浮き輪が浮いてる・・・裏返し・・・? その時オレの脳裏に昔の記憶らしきものが蘇ってきた・・・オレ浮き輪で遊んでて溺れたことがある・・・?

「レナ!監視員呼んできて!」

オレはそう言うなり一気に水の中に潜った・・・たくさんの足が重なっている・・・その先に・・・オレは夢中でプールの底に沈んでいる男の子の方へ向って泳いでいった。目は開けているが虚ろで意識はないようだ・・・全然動かない・・・


 オレが男の子を水面に抱え上げた時には、もう監視員の人が来てくれていて、オレから受け取った男の子をプールサイドへと引き上げた・・・

 プールサイドにはすぐに人だかりが出来て、オレたちは人垣のすき間から、監視員が人工呼吸するのをみていた・・・慌てて駆けつけたお母さんが大きな声で男の子の名前を叫んでいる・・・

「・・大丈夫かなぁ・・・」

心配して見ていると、男の子は咳をして水を吐き出した・・・どうやら助かったようだ・・・たぶん溺れて間がないハズだから、もう心配ないだろう。


 そうだ・・オレこんなところにいたらダメだ・・・

「レナ、行こう!」

「え?」

オレはレナの手をとって急いで更衣室へ戻った。あんなところにいて誰が助けたとかいう話になったら大変だ・・・ただでさえ他人に注目なんかされたくないのに、こんな水着を着た状態で注目されてしまったら・・・オレまた緊張して漏らしちゃうかもしれない・・・そんなことになったらお漏らし女子高生として有名になってしまう・・・いや、それならまだマシな方かもしれない・・・男なのに女の子の水着を着て、そのうえお漏らしなんてことになったら完全に変態だ!


 「早く着替えて!」

「なんでそんなに急いでるのよ。」

「もう・・いまのところはまだ、わたしが男だってバレてないみたいだけど、注目されたらバレるかも知れないでしょう?」

「・・そうか・・・そこまで考えなかった・・・ユウってそういうことには気が回るのね。」

「バレないように必死なのよ!」

オレが必死にバレないようにしてるから、いまだに女の子として生活していけてるんじゃないか・・・


 でもレナもやっと事態の深刻さをわかってくれたようで、オレたちは急いで着替えてプールを出た。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 「でもユウのこと見直しちゃった。」

「え? なんで?」

「だって、男の子が溺れてるのに気づいて、すぐに助けに行ったじゃない。」

「あぁ・・べつに大したことじゃないよ、水泳得意だし・・・どっちみち監視員の人がすぐ来てくれなかったら、わたし人工呼吸とか出来なかっただろうし・・・」

「でもスゴイよ!カッコよかった。」

「・・・・・」

男のころなら“カッコいい”って言われたら嬉しかったかも知れないけど、女の子になった今では“カッコ良さ”はあまり重要じゃない気がする・・・



 オレたちはその後、マリンワールドに行ってイルカのショーを見たり、ラッコがエサを食べるのを見たりして過ごした。

オレはあんな水着を着させられた後のせいか、色っぽい服もそんなに気にならなかった。


 罰だったのかも知れないけど、救助したりしたけど、結果的には楽しかったと思う・・・




 それにしても気になるのは、男の子がいないのに気づいた時にオレの脳裏に蘇ってきた記憶だ・・・あれはいったい、いつの記憶なのだろう・・・かなり小さいころのような気がするが、なにしろオレは溺れていたから何が何だかわからない・・・プールではない気がするが・・・海なのだろうか・・・オレの記憶では小さいころに海で泳いだことはないけど・・・

「どうしたの? ユウ・・・」

「・・ん・・いや・・何でもないよ・・・」

でも・・レナはオレが忘れていることも知っているのだから、もしかしたら溺れたときに一緒にいたかも・・・

「ねえレナ、もしかして、わたしが小さいとき溺れたの知ってる?」

「・・・ううん、知らない。」

「そう・・・」

「なに? どうしたの?」

「いや・・プールで男の子が溺れてるって思ったとき、わたし溺れたことあるような気がしたのよ。」

「昔のこと思い出したの?」

「ううん・・・わからない・・・気のせいかも・・・」

でも、あの溺れた苦しさを伴った記憶が、オレの思い違いだとは、どうしても思えなかった。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 オレは夕飯のあと、かあさんに聞いてみた。オレがもし溺れていたら、かあさんが知らないワケがない・・・

「ねえ、かあさん・・・わたし小さいころ、海かどこかで溺れたことある?」

「え? 有希は溺れたことなんかないと思うけど?」

「・・そう・・・」

「どうかしたの?」

「・・今日ね・・・昔のこと思い出したような気がしたんだ・・・なんか・・溺れたことがあるみたいな気がして・・・」

「そうなの?」

「・・でも・・気のせいかも・・・だってもしわたしが溺れてたら、かあさんが知らないハズないもの。」

「まあ、そうね。」


 せっかく昔のことを思い出したと思ったのに・・・ちょっと残念・・・でも・・オレは昔のことを思い出すのが少し怖い・・・だって・・もし思い出したとき、それが今のオレを変えるほどの記憶だったりしたら・・・オレはどうすればいいのかわからない・・・


 だからオレは残念に思ったと同時に・・少しホッとしたのだった。








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