↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレは女子高生・ソフトバージョン  作者: AT
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/61

第49話 報告 フクザツな気持ち(ソフトバージョン)   初出09.3.6

 花火が終っての帰りの電車は超満員だった・・・来る時はそれぞれの時間で来た人たちが、いっせいに帰るのだから当り前といえば当り前だけど、オレにとってはかなりの苦痛だった・・・


 レナの家は天神から2つ目の平尾駅だからさっさと降りてしまい、オレと長谷川と麻衣は春日原まで向かう・・・レナと長谷川は結局なにも話さないままだったが、長谷川と麻衣はいつの間にやら仲良しみたい・・・長谷川は初めての人は苦手なんて言ってたのに・・・やっぱり女の言うことはあてにならない・・・


 やっと春日原の駅についた時には、オレはもうヘトヘトだった・・・すし詰めの満員電車に乗っているとチカンとかされそうで、いつお尻に手が伸びてこないかと身体に変な力が入ってしまうのだ・・・


 駅に降りてふと思う・・・これから長谷川の家に寄って浴衣を脱がせなきゃいけないけど、こんな夜中に麻衣をひとりで帰すわけにもいかないし・・・このまま長谷川の家に連れていくしかなさそうだ・・・あまり気乗りしないけど・・・


 そういえばレナは、もし偶然オレたちと遇わなかったら、ちゃんと麻衣をうちまで送ってきてくれたのだろうか・・・送ってくれたとは思うけど・・・なんか心配だ・・・


 「ねえ、麻衣・・ちょっと長谷川さんの家に寄るけど・・いい・・・?」

「うん、いいよ。わたしも長谷川さんの家に行きたい!」

「・・別に・・遊びに行くワケじゃないんだから・・・長谷川さんの浴衣と、わたしの服も置いたままだから行くだけなの・・・」

「わかってるよ、そんなこと言われなくても!」

「・・・ならいいけど・・・」

「ふふっ・・・有希ったら、麻衣ちゃんには形なしね!」

「・・・・・」

オレはやっぱり男なのだろう・・女の子の口の達者さにはとてもかなわない・・・オレももっと女の子に近づけば、麻衣に負けないくらい口が達者になるのだろうか・・・なんかあまり期待出来そうにないけど・・・


「でも、やっぱり兄妹ねぇ、麻衣ちゃんもどことなく有希に似てる。」

「ほんと? あたしもお姉ちゃんみたいにキレイになれるかなぁ!」

「・・・そ・・そうね・・・お姉さんより・・キレイになるんじゃない・・・?」

そりゃぁそうだ・・・麻衣は本当の女の子なんだから、男のオレよりずっとキレイにならなきゃオカシイってもんだ・・・


 しかし家では麻衣に“お姉ちゃん”と呼ばれることには慣れてしまっていたが、こうして長谷川のまえで呼ばれると、どうにもいたたまれない・・・長谷川はいったいオレと麻衣をどんな兄妹だと思っているのだろうか・・・姉妹みたいな関係だなんて信じているだろうか・・・当のオレでさえ時々奇妙な感じがするというのに・・・

「ねえ・・麻衣ちゃんは・・そのぉ・・有希とは仲がいいのね・・・」

「うん、あたしお姉ちゃんのこと大好きだもん!」

「・・えっと・・それは・・有希が男の子のころから・・・?」

「!」

長谷川のやつ何てこと聞くんだよ・・・

「お姉ちゃんは女の子だよ!男なんかじゃないもん!」

麻衣は膨れっ面でそう言った。

「あ・・ごめん・・そうよね・・・有希は女の子だもんね・・・」

「そうよ!」

麻衣はオレのことを思ってそう言ってくれたのだろうか・・・オレも麻衣が本当のところどう思っているのか良くわからないところがある・・・前は兄だったオレのことを、完全に女の子だと思えるものだろうか・・・オレがもし、麻衣が急に男の子になったとしたら、男の子として見ることは出来ない気がする・・・やっぱりうちの家族はどこかヘンなのだろうか・・・


 「有希!どこまで行くの? 行き過ぎてるわよ!」

「・・あ・・ごめん・・・」

物思いにふけってしまい、いつの間にか長谷川のマンションを通り過ぎようとしていた・・・そっか・・駅から近いんだった・・・


 「ただいまぁ。」

長谷川の後に続いてオレたちも入っていく・・・

「・・ま・・またおじゃまします・・・」

「あら? もしかして妹さん?」

「・・あ・・はい・・妹の麻衣です・・・」

「こんばんわ。」

麻衣もちゃんと挨拶してくれた・・・

「戸田さんにこんな可愛い妹さんがいるなんて知らなかったわ・・・さぁ、遠慮しないで上がって?」

オレたちは長谷川のお母さんにうながされて家の中に入った。


 「それじゃ・・わたしたち着替えるから、麻衣はここでおとなしくしてるのよ。」

「もう・・わかってるよ。あたしもう中学生だよ!」

「・・そ・・そうよね・・・でも・・・」

オレは麻衣の耳元で小声で言った・・・

「・・余計なことは言わないでよね・・・」

「うん、わかってるって!」

「・・それならいいけど・・・」

本当にわかってるんだろうか・・・オレのことではいろいろ秘密があるのに・・・心配だなぁ・・・




 オレは長谷川の部屋で、長谷川の浴衣の帯をほどいていく・・・考えてみれば男が女の子の浴衣を脱がしているわけで、長谷川のお母さんにヘンに思われないか心配になってくる・・・

 浴衣の前がはだけて下着が見えると、オレは急いで目をふせた。

「・・あ・・わたし後ろ向いてるからさ・・・着替えたら言って・・・」

「・・うん・・・」

後ろで長谷川が浴衣を脱ぎ、服を着る音を聴いてると、いたたまれない気持ちになってくる・・・


 「着替えたけど・・・」

オレは長谷川が脱いだ浴衣をきれいに畳んだ。着物や浴衣はちゃんと畳んでおかないと、おかしなところにシワが出来てしまうと面倒だ。

「ねえ、有希・・・ひとつ聞いてもいい・・・?」

「・・い・・いいけど・・なに・・・」

いったい何を聞かれるのだろう・・・ただでさえドキドキしてるのに・・・

「・・有希・・なんで・・ナプキンなんかしてるの・・・?」

「・・あ・・そのこと・・・」

どうしよう・・・適当にごまかした方がいいだろうか・・・長谷川はアノ日と設定した日はオレがナプキンを持ってるのは知ってるし・・・でも・・また後からバレたら、また嘘をついたことになる・・・

「・・あ・・あの・・正直に言うけど・・・長谷川さん、不安神経症って知ってる?」

「・・・知らないけど・・・」(注:長谷川さんは白石先生からは有希の不安定な状態は聞いていますが、不安神経症という病名までは聞いていません。28話参照)

「・・前にね、レナと買い物に行ったとき・・男の人にナンパされちゃって・・・」(26話参照)

「ナンパ?!」

「・・う・・うん・・・それで・・わたし・・どうしたらいいのか判らなくて・・・怖くなって・・・気づいたらちびってたの・・・」

「え?・・・オシッコ?」

「・・うん・・・・」

恥ずかしくて顔から火が出そうだ・・・


「それでナプキンしてるの?」

「・・うん・・白石先生に聞いたら・・わたしその不安神経症って病気になりかけてるらしくて・・・それで同じような状況になるとまたちびっちゃうんじゃないかと思うから・・・その時、心配しなくていいようにナプキンをするようにすすめられたの・・・またちびっちゃうと、どんどんヒドくなっちゃうんだって・・・」

「そうだったの・・・じゃあ、それって病気なんでしょう?」

「・・うん・・まあ・・・」

「それじゃ、恥ずかしがることないじゃない。」

「・・うん・・まあ・・そうだけど・・・」

それは長谷川が女の子だからだ・・・男がナプキンするなんて、理由がどうであれ恥ずかしいに決まっている。


 「有希、そういうこと言ってくれればいいのに。」

「だって・・・恥ずかしいんだもん・・・」

「でもレナちゃんには言ったんでしょう?」

「あ・・それは違うよ! まえにレナと服を買いに行った時・・更衣室に一緒に入ったときに、わたしがナプキンしてるの気づかれて・・・それで・・・・気づかれもしないのに、わざわざ言わないよ・・・」

「そっか・・そうかもね。」

長谷川の声のトーンが心なしか優しくなった気がした・・・

「もう、あんまり秘密にしないでよね。」

「・・うん・・・」

でもオレにはまだまだ他人には言えないことがいっぱいある・・・いくら長谷川がオレにとって特別な存在だとしても、言えないことは言えない・・・


 オレは一瞬、読者モデルのことも長谷川に言っておこうかと思ったが、それはさすがにやめておいた。だってこれは佐倉との話だし、まだ黙っておこうと言い出したのはオレの方だ・・・けっきょく親や岡本と原口にはバレてしまったけど、関係ない長谷川にまで言ってしまってはオレの信用に関わるってものだ。


 長谷川が着ていた浴衣を畳んで箱に入れ終えてしまうと間がもたない・・・

「・・それじゃ・・わたし帰るね。」

「え? 有希は着替えないの?」

「家まで近いからこのままでいいよ。それに、かあさんにも見せたいし・・・」

「そうね、有希のお母さん、あんまり可愛いからビックリするんじゃない?」

「・・も・・もう・・やめてよぉ、そんなお世辞いうの・・・」

「ふふっ・・またそんなこと言ってる!有希はほんと変わらないわねぇ。」

・・・オレほど変わったヤツはそんなにいないと思うんだけど・・・



 「麻衣、帰るわよ。」

「え、ちょっと待ってぇ・・」

見るとケーキを食べている・・・

「あ、戸田さんの分もあるから食べて行って。」

そう言って長谷川のお母さんがオレの分のケーキをテーブルに置いた。美味しそうなイチゴのショートケーキだ・・・

「有希も食べて行きなさいよ。」

たしかに断るわけにもいかないし、オレは女の子になってからは、以前より甘いものが好きになってしまっている・・・

「・・じゃぁ・・いただきます。」

けっきょくオレもケーキをご馳走になってしまった。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



 「美味しかったね、ケーキ。」

「・・うん・・・」

麻衣に返事をしながらも、長谷川と別れてからオレは不安になっていた・・・レナになんて言おう・・・冷静に考えてみれば怒っているのは長谷川ではなくレナの方だ・・・それなのにオレはレナを放り出して長谷川の機嫌をとってしまった・・・レナは怒っているに違いない・・・


 「ねえ麻衣・・なんでレナと来てたの?」

「ん?なんでって?」

「だって、レナと花火大会に行くなんて言ってなかったじゃない・・・」

「だってレナちゃんから電話かかってきたの、お姉ちゃんが家を出た後だもん。」

「・・・そのとき・・わたしのこと・・なんか言った?」

「なんかって?」

「わたしが・・その・・長谷川さんと花火大会に行ったこととか・・・」

「あ、言ったよ。“お姉ちゃんいる”って聞かれたから。」

「そ・・そう・・・」

レナは最初から知っていたんだ・・・それなのに“展示会の準備終ったの?”なんて聞いて・・・どういうつもりなんだ?

「言わない方が良かったの?」

「・・ううん・・そんなことないよ。」

オレのために麻衣にまで嘘をつかすのは可哀想だ・・・麻衣は何にも悪くない・・・



 家に帰るとオレはすぐに自分の部屋に向かった。レナに電話するためだ・・・

「・・あ・・もしもし・・レナ・・・?」

「うん。」

「・・あの・・今日はごめん・・・怒ってるよね・・・」

「・・・別に怒ってないよ。」

「・・ほんと・・・?」

怒ってないハズがないと思うんだけど・・・

「有希がウソついてるの、わかってたから。」

「え?いつから・・・?」

「最初からよ。有希ウソ下手なんだもん。」

「うっ・・・」

「でも浴衣デートしてるとは思わなかったけどね。」

「・・で・・デートじゃないよ・・・」

「そう?」

「そうよ・・女どうしなんだし・・デートのハズないじゃない・・・」

「・・・ふ〜ん・・そうなんだ。」

そうだよ・・オレと長谷川がデートするハズないじゃないか・・・一回したことはあるけど・・・あれはまた別の話だ・・・


「でも楽しみだなぁ、有希に何してもらおうかな・・・」

「え?! なんのこと?」

「だって有希、お詫びに何でもしてくれるんでしょう? 言ったじゃない。」

「・・あ・・え?・・でも・・レナ怒ってないって・・・」

「わたしが怒ってないのと、有希がお詫びしたいのとは別でしょう?」

「そ・・そうなの・・・?」

「そうよ。有希の気持ちはありがたくいただくわ。何してもらうか考えておくから、楽しみにしてて。」

「・・・・・・」

なんかえらいことになってきた・・・怒ってないって言ってるけど・・やっぱり怒ってるに違いない・・・

「あの・・わたしに出来ることじゃなきゃダメよ・・・」

「わかってるから安心して、女の子なら誰でも出来ることしか言わないから。」

女の子なら・・・? なんかすごくイヤな予感がする・・・



 「有希、お帰り。麻衣も一緒だったのね。」

「・・うん・・・」

「浴衣、似合ってるわよ。ピンクの方にしたの?」

「うん、長谷川さんが紺の方がいいっていうから・・・」

「そう、写真とっておきましょうよ。」

「うん・・・」

オレは時々、可愛い服を着た時などに、かあさんに写真を写してもらっている・・・これもオレがしばらく経ってから見た時に、ちゃんと前より女の子らしくなっているのを自覚できるようにするためだ。だからオレは写してもらった写真をまだ見たことはない・・・


 少し乱れていた髪を整えて、写真を写してもらう・・・オレも両手を前で揃えて、三吉先生に教えてもらった着物を着た時にキレイに見える姿勢をとる・・・せっかく写してもらうのだからキレイに写りたい・・・

「そうだ、さっき有友から電話があったんだけど・・」

「え?! 兄さんから?」

「こんどのお盆には帰ってこれるらしいわよ。」

「ほ・・ほんと?」

オレは嬉しいのと困ったのが同時におとずれて、どう言えばいいのか判らなかった・・・兄さんが帰ってくるのはすごく嬉しいけど、オレはもう弟ではない・・・いきなり女になって会うなんて、いったいどうやって接したらいいのか困ってしまう・・・


「どうしたの? 嬉しくないの?」

「・・嬉しいけど・・・兄さん・・女になったわたし見てどう思うかな・・・」

「そんなこと心配してるの?」

「・・そんなことって・・・」

オレにとっては重大なことだ・・・

「心配しないで、有友はそんなコじゃないわよ。有希が男の子でも女の子でも同じように接してくれると思うわよ。」

・・そうかな・・それならいいんだけど・・・でも、オレの方が同じように接することが出来るかどうか・・・


 オレは兄さんのことが大好きなのに、もし女になったことで兄さんに嫌われたらと考えると悲しくなってしまうのだ・・・







‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



おまけ「名前」について


 このテの話では「めぐみ」「のぞみ」「いくみ」などの最後に“み”がつく名前が使われることが多く、また、「恵=めぐみ→めぐむ」「望、希=のぞみ→のぞむ」のように男から女に変わるに従い、読み替えを行う場合もある。

この「オレは女子高生」の主人公「ゆうき」も定番のひとつですが、他の名前の場合とは違う点があると思う。まずひとつは、他はどちらかといえば“女っぽい名前だけど男につける場合もある”のに対し、「ゆうき」という名前は“男っぽいけど女の子につける場合もある”名前だということ。それはたぶん語感が“勇気”を連想させるからだろう。

もうひとつは、漢字の組み合わせがいろいろあるということ。変換に「勇気」「有紀」「裕紀」「裕樹」などの他にも多くの組み合わせがある。そんな中で「有希」を選んだのは、あまり男っぽ過ぎず、女っぽ過ぎない感じが欲しかったから(個人的な感覚ですが)。


 名字については、このテの話では特殊な名字にしないのが基本だと思う。『天使な小生意気』の「天使=あまつか」のように物語との関連がある場合は別ですが、普通は「佐藤」「鈴木」「山田」などよくある名前にする場合が多い。

有希の名字を「戸田」にしたのはあまりに普通だと感情移入しにくいという理由で、良くは見かけないけど、そんなに珍しくもない、また、名前自体に例えば「白鳥」「早乙女」のような特別な意味を感じないということで選んでみた。

また、芸能人にイメージが比較的少ないというのも選んだ理由。「戸田恵子」と「戸田恵梨香」がいますが「戸田恵子」は有希とイメージがかぶらないし(笑)「戸田恵梨香」の場合は、あくまで「とだえりか」であり“戸田さん”というイメージが無いと思うので(これも個人的な感覚ですが)。


 ちなみに、有希に自分のことを「オレ」と言わせたのは、「ぼく」「僕」「ボク」ではちょっと軟派すぎるし、「おれ」「俺」では男っぽすぎるという理由。もちろんこれも個人的な感覚ですけど。


 もうひとつ「オレは女子高生」というタイトルは、大昔のドラマ「ボクは女学生」をもじって付けました。フォーリーブスの北公次という、今でいえばキムタクが女子高に入るという感じのドラマです。もちろん学生服のままでセーラー服なんか着ませんが(笑、でも宣伝写真では着てた。)大竹しのぶのデビュー作ということでも有名です。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。