第42話 面接 佐倉に付き添うオレ 初出09.1.23
雑誌JINON〈ジノン〉の地方姉妹紙、九州JINONの編集部は薬院〈やくいん〉にあった。薬院は天神のひとつ前の駅だ。そんなところに九州JINONの編集部があるなんてちっとも知らなかった・・・
オレと佐倉は駅から少し歩いたところにある編集部が入ったビルの下までやってきた・・・編集部ってどんなところなのだろう・・・なんかドキドキする・・・佐倉も同じ気持ちのようで、オレたちふたりはしばらくビルの外で躊躇してしまい、なかなか中に入れずにいた。
しばらくすると向こうからふたりの女の子たちがやってくる・・・福岡市内のコだろうか・・・オシャレが板に付いているような気がして、なんだか気押されしてしまう・・・
オレは袖口とスカートの裾にヒラヒラしたレースで飾られた白い、でも少しクリームがかったシフォンワンピース・・・佐倉は七分丈の白いパンツにピンクのチェック柄の短いワンピースとちょっと子供っぽいが、それなりにオシャレはしていた・・・しかし、なにぶん風紀が厳しい学校だから髪は真っ黒だし、爪だって素のままだ・・・オレは軽く化粧していたが、佐倉にいたっては化粧もしていない・・・これじゃどっちが面接受けにきたのか判りゃしない・・・
佐倉がパンツスタイルで来るのなら、オレも下にレギンスでもはいて来れば良かった・・・スカートも短かめなのに生足で来てしまったのを少し後悔した・・・
ふたりはオレたちの前を通り過ぎるとビルの中に入っていく・・・もしかしてこのコたちも面接に来たのかも・・・オレは急いで佐倉の手を取った。
「わたしたちも行こう。」
オレはふたりに遅れまいと佐倉の手を引っ張って、ふたりが待っているエレベーターのところまで行き、何くわぬ風を装って一緒にエレベーターが降りて来るのを待った。
1階にエレベーターが到着すると、オレたちはふたりの後から乗り込んだ・・・思った通り先に乗ったふたりも編集部がある階を押している・・・釦を押したコがオレたちを見たが、オレたちが同じ階に行くことを知るとピクリと眉が上がった・・・ふたりがオレたちをライバル視したとしても、それ以上の反応はなかった・・・あるいはまったく相手にされてないのかも知れない・・・たぶんそっちの確率の方が高そうだ・・・
編集部がある階に着いてドアが開く・・・オレたちがふたりの後に続いて降りると廊下にはすでにたくさんの女の子たちがいた・・・みんな面接を受けに来たのだろうか・・・20人以上いるようだ・・・みんな可愛いコばかりだ・・・
編集部なんていうから、どんなところかと思ったが、普通のビルのワンフロアーのようだった・・・廊下に面していくつかのドアがあり、奥にあるつきあたりの部屋から人が出入りしているところを見ると、あそこが編集部なのだろうか?・・・ドアのすき間から机が並んでいるのが見える・・・
バッグから携帯を出して時間を見てみた・・・まだ少し時間がある。
「ねえ千里・・・ちょっと来て・・・」
オレは佐倉の手を引っ張ってトイレを探した。
「なに? 有希トイレに行きたいの?」
何のんきなこと言ってるのだろう・・・
「あんた他のコたち見た? みんなバッチリ化粧してるじゃない!」
「・・・だって・・わたしお化粧したことないし・・・有希もお化粧してるから驚いたくらいよ・・・」
二光さんは高校生はみんな化粧くらいするって言ってたけど、長谷川をはじめオレの学校にはしないコも結構いるみたいだ・・・
オレはトイレを見つけるとふたりで個室に入った。
「ちょっと有希・・・なにするの?」
のんきにもほどがある・・・オレは自分のバッグを佐倉のヒザに乗せて言った。
「お化粧に決まってるでしょう!ほら、前髪あげてて・・・」
オレは佐倉に自分の前髪を持たせると、バッグから乳液とファンデーションを出し、手の上でかるく伸ばして手早く塗っていった・・・二光さんに教わったスッピンメイクの方法だ。これなら短時間に出来るし、佐倉の清楚な感じをいかすことが出来る・・・いくらバッチリメイクをしても、お化粧で個性が消えてしまっては何にもならない・・・まあ、これも二光さんの受け売りだけど・・・
チークは付け過ぎに気をつけて・・・アイラインは目尻の方に多めに・・・下まぶたには白いペンシルで少し明るめに・・・本当は眉毛も少し整えたかったが、ハサミも無いしここではどうしようもない・・・髪も何とかしたかったが、オレ自身が髪をセットするのは苦手だからこれもどうにもならなかった・・・それでも最初よりはずっと良くなったと思う。
ちなみにオレは後ろとサイドをアップにして、上でおだんごにしていた・・・もちろんかあさんにやってもらったのだが・・・こんなことなら佐倉も一度オレの家に連れてきて、かあさんにやってもらえば良かった・・・でも、そんなことをしたら面接に行くこともバレちゃうし、オレも読者モデルに応募したのも知られてしまうから、どっちみち無理か・・・オレはかあさんには、ただ遊びに行くと言ってきたのだ。たぶん佐倉もそうじゃないかと思う。だって親に言ったら怒られそうだし・・・どうせ採用されるわけないのだから、親に話したりして怒られたりしたら、それこそ怒られ損だ・・・とりあえず面接だけ受けてみて、後は黙っていればいい・・・もし間違って採用されることにでもなったら・・・? そのときはその時だ・・・
オレたちがトイレから出ると女の人が、面接に来たコたちを廊下の片側に並ぶように言っている・・・オレたちも急いで一番最後に並んだ。
女の人は並んだ女の子たちの最初から面接の通知を確認してから何か渡しているようだ・・・女の人はグレーのスーツに細めのオシャレなメガネをかけ、髪をアップにして後ろでまとめている。シャツの釦を2番目まで開けた胸元とタイトなスカートが色っぽい・・・なんかすごく仕事がデキそうな大人の女性って感じだ・・・
近くに来ると、送られてきた応募用紙と写真で本人と確認した後、胸につけるための番号の札を渡しているのだと判った。オレの横で佐倉はすごく緊張してるみたいだ・・・オレもこんな場では絶対緊張すると思って、ちゃんとナプキンをつけてきていたが、佐倉が緊張しているせいか思ったほどの緊張はなかった・・・もちろんオレはただ付き添ってきただけだというのも大きいだろう。いくら何でも自分の面接だったら緊張しないワケがない。
とうとう佐倉の番が来た・・・佐倉も他の女の子と同様に面接の通知を渡し、番号の札を貰って胸に付けている。女性の方は応募用紙の上にその番号と同じ数字を赤いペンで書いていた。佐倉の手が震えて、なかなか上手く番号札が付けられないのを見て、手伝ってやろうとした時、オレは女性に声をかけられた。
「面接の通知持って来た?」
「え?!・・・」
オレは慌てた・・・考えてみれば付き添いのオレがここに居ていいのだろうか・・・
「あ・・あの・・・わたし、千里の付き添いで来たんです・・・あの・・ここに居ちゃダメだったら・・外で待ってますけど・・・」
すると女性は笑顔になった。
「そうだったの、居てもいいけど・・・あなたは応募しなかったの?」
オレはチラッと佐倉を見てから言った。
「あの・・わたしも千里と一緒に応募したんですけど・・・受からなかったみたいで・・・」
すると女性はオレを上から下まで見た。
「そうねぇ・・・どうせ来たんだから、あなたも面接受けなさいよ。」
「え?・・で・・でも・・・」
オレは断ろうかと思ったが、応募しておいて断るのもヘンに思われそうだし・・・
オレがどうしようかと躊躇していると、佐倉もそれを察したのか
「有希、いっしょに受けようよ・・・そのほうがわたしも心強いし・・・」と言う・・・
それはそうかも知れないが・・・もちろん受けたとしても採用なんてされないとは思うが、万一受かってしまったらどうするんだ・・・? オレは男なのに・・・
「あなた名前は?」
「あ・・戸田有希です・・・」
女性に聞かれ、オレは思わず答えていた・・・
「あら、男の子みたいな名前ねぇ。漢字は?」
「えっと・・戸田は・・扉の戸に田んぼの田・・・有希は・・有明海の有に希望の希・・です・・・」
「戸田・・有希・・と。それじゃ応募用紙探しておくから。」
そう言うとオレは番号札を渡された・・・佐倉の次の番号・・・どうやら最後らしい・・・
「あ・・はぃ・・・」
なんだかワケもわからないうちに、オレまで面接を受けることになってしまった・・・仕方なく番号札を胸に付けようとしたが、今度はオレの手が震えてなかなか付けられない・・・
「わたしが付けてあげる・・・」
佐倉がオレの胸に番号札を付けてくれた・・・さっきまで佐倉の方が緊張していたのに、あっという間に立場が逆転してしまったようだ・・・
佐倉の細い指が安全ピンを刺しているオレの胸元・・・ときどき佐倉の指が胸に触れる・・・そこにはブラジャーをしたオレの胸が・・・男なのに女性のように膨らんだオレの胸がある・・・だがオレを女の子だと信じて疑わない佐倉は、オレの胸に自分の手が触れてもまったく気にしない・・・もしオレが男だとバレてしまったら、佐倉はこんなオレをどう思うのだろうか・・・そんなことを考えていたら、オレはよけいドキドキしてしまう・・・
「有希すっごいドキドキしてる・・・だいじょうぶ?」
そう言って佐倉は、少しも躊躇することなくオレの左胸に手をあてた。
(あっ・・・)
オレは思わず出そうになった声を必死で押しとどめた・・・ブラの中で乳首が尖っていくのがわかる・・・
「・・だ・・だいじょうぶ・・・急にこんなことになっちゃって・・・ちょっと緊張してるけど・・・」
本当はちょっとどころじゃなかったが・・・オレは何とかそう言った・・・
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オレたち女の子は全員ひとつの部屋に入れられた・・・普段は会議室か何かだろうか、大きなホワイトボードが壁ぎわに置いてある・・・長い会議机が隅っこにあり、いくつかは折畳まれていた・・・なぜか長い机の上にはお菓子やジュースを置いてある・・・空けられた中央のスペースには、オレたちが座るためのパイプイスが多数並べてあった。オレが急遽面接することになったがイスの数は十分だった。オレと佐倉は隅っこに座り、他の女の子たちを眺めていた。
女の子たちは3人づつ呼ばれて部屋を出ていき、面接が終るとまた戻ってくる・・・だいたい一組15分くらいかかっている・・・オレの番号は32・・・とするとオレたちの番までは2時間半もかかる計算になる・・・
「有希・・あそこのお菓子食べていいみたいよ・・・」
見るとすでに数人のコたちがお菓子を食べ始めている・・・たしかに何もせずに3時間近くも待つのは辛いから、ああやって自由に食べられるようにお菓子を置いているのだろう・・・しかしみんな慣れてるみたいに見える・・・こういう面接に来たことがあるコも多いのかも知れない・・・
「何か持ってくるね・・飲み物は何がいい?」
「あ・・お茶・・・」
どうやらこういう時は女の子の方がキモが座っているらしい・・・オレはとてもお菓子を食べるような気持ちにならないが、女の子の佐倉は大胆にお菓子をとって戻ってきた・・・さっきまで緊張してたのが嘘のようだ・・・この様子なら面接も心配いらないのではないだろうか・・・なにせオレはもう佐倉の心配をしてる余裕はないのだ・・・
しかし、女の子の中に男のオレがひとり混じっているというのもヘンな感じだ・・・まあ、学校でも女生徒の中に男はオレひとりなのは同じだが、学校では同じメンバーだし、気が知れたクラスメイトだからオレもずいぶん慣れているが、こんなに他人ばかりの中だと学校とは全然ちがう・・・そんな中で女の子の恰好をしていると、すでにオレにとっては普通になったと思っていた女の子の服なのに、なぜか女装しているような気になってくるから不思議だ・・・
・・・?・・・オレはふと疑問が湧いてきた・・・この女の子たちはけっこう慣れてる感じだが、それはこのコたちが他の雑誌の読者モデルとかに応募して、面接したものの採用されなかったという事ではないのだろうか・・・? 他のコたちはオレや佐倉よりずっとオシャレだし可愛い・・・そんな彼女たちが採用されないのなら、オレたちが採用される可能性なんて無いんじゃないだろうか? そんなふうに考えると、なんだか緊張していた自分がバカバカしく思えてきた・・・最初からオレたちなんか受かるハズがなかったのだ・・・
そう思うとオレもお腹が空いてきて、佐倉が持ってきたお菓子に手を出した・・・
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オレたちの番まですごくかかるような気がしていたが、お菓子なんか食べながら待ってると、気づいた時にはもう25から27番の人が呼ばれていた・・・次の次がオレたちの番・・・どうやら最後はオレと佐倉のふたりだけになりそうだ・・・
でもこれは良いことかもしれない・・・だってもし万が一、佐倉が採用されるなら、オレが一緒の方が引き立て役になれるってもんだ・・・なにしろオレは採用される必要などないのだから。
30番までのコたちが帰ってきて、とうとうオレたちの番が来た・・・
オレと佐倉は隣の部屋に入るとペコリと頭を下げた・・・なんか高校の受験の時を思い出す・・・あの時はまだオレは男だったのだが・・・
イスに座るように言われ、オレたちは3つ並んだイスのふたつに座った・・・オレたちの前には男の人が一人と女の人が二人・・・男の人は短髪に鼻の下だけヒゲを生やしている・・・穴が開いたジーンズに洗いざらしのTシャツ・・その上にジャケットを羽織っている・・・目つきが鋭くてちょっと怖いかもしれない・・・女の人のうちの一人は派手な服に大きなイヤリング・・・下は黒いパンタロン・・・なんかセンスが良くてオシャレな感じだ・・・そしてもう一人の女の人はさっきの女性だった・・・女性は言った。
「あなたたちは友達なの?同じ学校だけど。」
「はい。」
オレたちは同時に答えた。
「友達4人で応募したんですけど、この佐倉さんだけ面接の通知が来て・・・」
オレはさりげなく本当は佐倉だけに通知がきていた事をアピールした。
「あれ?じゃあ君は?」
男の人がオレに聞いたが、それには女性が答えてくれた。
「このコは彼女の付き添いで来てたんだけど、どうせだから一緒に受けるように私が誘ったのよ。」
オレはどんな顔をしたらいいか良くわからない・・・
まず佐倉がいろいろ聞かれた・・・佐倉はハニカミながらもちゃんと答えている・・・オレはといえば隣でどうにも落ちつかなかった・・・
佐倉への質問が終り、オレの番がきた・・・佐倉の質問を聞いてオレの答えを用意していたのだが、オレへの質問は、いきなり思いもしなかったことだった。
質問したのは男の人だった・・・「戸田さん?君はなんでこんなボケた写真を送ってきたの?」
「あっ・・・」
オレは思いもしない質問に言葉を詰まらせた・・・言われてみれば確かにおかしな事だろう・・・読者モデルに採用されたいコがボケた写真を送ってくるなんて・・・それに・・・考えてみれば、採用してもらおうとしている人間がボケた写真を送るなんて失礼な話だ・・・
「・・・ご・・ごめんなさい・・・わたし・・読者モデルなんて採用されるハズないと思って・・・」
「それでわざとボケた写真を?」
「あっ・・違います・・・そうじゃないんです・・・あの・・・」
オレはどう言ったらいいのか迷った・・・だって横には佐倉がいる・・・あまり詳しく話すと岡本が写した写真がボケてたことがバレてしまう・・・
「あ・・あの・・・その・・・」
するとオロオロしているオレを見かねたのか佐倉が話だした。
「あのぉ・・わたしたち4人で応募したんですけど・・わたしたちの分は戸田さんが写してくれたんです。彼女は写真が上手だから・・・でも彼女の分は別の友達が写したからボケてたんじゃないかと・・・」
「そうなの?」
「ぁ・・はぁ・・・だいたい・・そんな感じ・・です・・・」
なさけない、消え入りそうな声しか出なかった・・・そんなオレの手を佐倉がそっと握ってくれた・・・“大丈夫だよ”とでも言うように・・・付き添ってきたのに、逆に励まされるなんて・・・オレってなんてダメなヤツなんだろう・・・
「まあ、写真のことはいいじゃない。ここに本人がいるんだから!」
女性がそう言ってくれてオレはホッとした・・・
「それもそうですね。」
どうやら男の人も笑って納得してくれたようだ・・・笑うと案外やさしい感じがした・・・男の人は佐倉の応募用紙を見ながら
「戸田さんは写真に興味があるんだ?」と言った。
「そ・・そんなんじゃないんです・・・ただ・・どっちかっていうと好きなだけで・・・」オレは慌てて手を振って否定した。それなのに佐倉ときたら、とんでもないことを言い出した。
「そんなことないじゃない!有希すっごく上手なんですよ。」
オレは一気に顔が真っ赤になってしまう・・・オレの話題なんか膨らませなくていいのに・・・もうどうしていいかわからない・・・
すると今まで黙っていた、もうひとりの女の人がオレに質問した。
「そのワンピースは自分で選んだの?」
「い・・いや・・あの・・はい・・・お母さんと一緒に買いに行ったんですけど・・・なんか・・可愛かったので・・・」
「化粧は?自分でやった?」
「は・・はい・・自分で・・・髪だけお母さんにやってもらいました・・・」
なんでオレはこんなことを聞かれるんだろう・・・佐倉はこんなこと聞かれてなかったのにぃ・・・それともオレって自分で思っているよりヘンな恰好してるのだろうか・・・
「あ・・あの・・ヘ・・ヘンですか? わたしの恰好とか・・お化粧とか・・・?」
オレが思わず聞くと、女の人は
「あっ、そうじゃないの、服のセンスも良いし、化粧も上手だから聞いたのよ。」と言った。
「わたしのお化粧も彼女がやってくれたんです。有希ってちょっと男の子っぽい感じもあるけど、すっごく女の子っぽいところもあるんです。」
佐倉までそんなことを言いだす始末だ・・・オレのことはアピールしなくていいってのに・・・審査員の3人まで妙に頷かなくても・・・・
オレはその後もいろいろ聞かれたが、何を聞かれたかも良く憶えていない・・・オレはとにかく早く終ってくれることばかり願っていた・・・
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「有希受かるかもしれないね。」
女の子たちが大勢いる待ち合いの部屋に帰ってくると、佐倉がオレにそう言った。
「じょ・・冗談じゃないわよ・・・わたしが受かるハズないじゃない・・・」
まったく佐倉は何を言い出すんだろう・・・
「だって有希いっぱい質問されてたじゃない。時間もずいぶん長かったよ。」
「そ・・それは・・わたしたちが最後だったからじゃないの・・・? きっと審査の人も終りだから気を抜いて長くなっただけよ・・・」
「もう・・・有希ったら自分の魅力を全然わかってないんだから・・・あんなボケた写真じゃなきゃ、有希にも面接の通知きてたのよ。わたしに来て有希に来ないなんて有り得ないもん。おかしいと思ったのよ・・・ちゃんと撮りなおせば良かったのに。」
まさか、そんなことは無いと思うけど・・・
「あの写真のこと・・直美に言わないでね・・・気わるくするといけないから・・・」
「有希がそう言うなら言わないけど。でも有希って優しいよね。」
「そ・・そんなことないわよ・・・」
オレは優しくなんかない・・・ただ写真がボケてた方が、間違っても受からないだろうと思っただけだ・・・でも編集部の人が不愉快な思いをすることまでは考えが及ばなかった・・・
オレたち最後の面接が終ってからけっこう時間が経っている・・・どうせ受かってないんだから早くしてくれないかなぁ・・・と思っていたら、やっとあのスーツの女性がやってきた。
「はい、これから審査に通った方の番号を発表します。」
女性は番号を呼んでいく・・・いったい何人くらい受かってるんだろうか・・・10番までは3人だった・・・
「・・26番・・27番・・31番・・・」
31番・・・?
「え?!千里受かってるじゃない!」
オレは佐倉の手を両手で握って喜んだ。
「・・・32番・・・以上の人はこの場に残ってください。番号呼ばれなかった皆さんは今回は残念だったけど、これに懲りずまた応募してくださいね。あ、あと残ったお菓子は持って帰っていいから。」
・・・?・・・32番って・・・オレ・・・?
「良かった!有希も絶対受かると思った。」
こんどは佐倉が放心状態のオレの手を握ってブンブン振っている・・・
「・・・呼ばれた番号の人はもう少し待っててくださいね。それじゃ皆さん、今日はありがとうございました!」
女性はそれだけ言って行ってしまった・・・番号を呼ばれなかったコたちは好きなお菓子を持って帰っていく・・・
「・・・・・」
オ・・オレが・・?・・読者モデルに・・・?
「・・ち・・千里・・・どうしよう・・・」
「なに言ってるの、有希は可愛いから受かって当然よ! わたしの方が受かったのが不思議なくらいなんだから・・・」
・・・オレがモデルなんて・・・どうしたらいいのだろうか・・・オレはやっぱり来るべきじゃなかったのだ・・・
「でも、わたしが受かったのも、きっと有希のおかげだと思うわ。有希がお化粧してくれたから。」
佐倉が受かるのは何の問題もない・・・だけどオレは本当は男なのだ・・・佐倉は知らないから喜んでいられるのだ・・・
男が・・男のオレが女の子の服のモデルになんて、なっていいハズがない・・・




