第72話 家族の支援
「というわけで、歴代の日本帰還スキルを持っていた祝福者たちも他人を別の世界へ連れて行くことはできなかったらしいんだ」
「こちらの世界の者と日本人の子供ですか。なるほど、そういう可能性もあったのですね……」
「子供も駄目なのね……」
赤の他人だけでなく、家族やその子供も共に移動できないとなると、やはりこの日本帰還という固有スキルは他人を連れて世界を渡ることはできないのかもしれない。
「やっぱり現状ではみんなを日本へ連れて行くことは難しそうだね……」
「大丈夫よ、カケル。家に帰れなくても、家族が元気に暮らしていることがわかって、連絡が取れるだけで私は十分に満足しているわ!」
「私も両親が生きてくれていて、私の冤罪が晴らされたことで心残りはありません!」
俺やアオイのようにすでに日本で死んでしまった場合は家族が無事に過ごせていればそれで満足だけれど、特にユウカの場合は日本で失踪扱いになっているし、もしも日本に帰すことができたら実際にご家族と会わせてあげられるのだが、今のところそれは難しいようだ。
とはいえ、2人の表情を見ると、今は本当にそれで満足しているらしい。レインも彼のご両親はすでに亡くなっていて、日本にご家族への未練はないと言っていたから、今のところは大丈夫そうか。
「まだ俺で4人目らしいし、他に可能性はあるかもしれないから、引き続き可能性を探っていこう」
「はい。私も日本に帰る魔法の研究を引き続き行っていきます」
「ありがとうね、カケル、アオイ」
前例自体が少ないし、こっちの世界には固有スキルや魔法がある。まだ日本に戻ることを諦めるのは早い。
アオイの方も魔法を研究してくれている。ただ、日本へ帰る方法はまだほとんど進んでいないので、転移魔法のようなものから研究をしているらしい。転移魔法もあれば王都まで一気に行けるし、かなり便利だよな。
転移魔法でコツを掴んで一気に日本まで転移ができる可能性もあるし、今後に期待しよう。
「それでアオイに相談なんだけれど、今回のポーションでかなりの大金が手に入るそうだけれど、実家にお金を送ったりしておく? アオイの実家のことはすでにISEOに知られているし、例の事件の賠償金みたいな感じにすれば自然に渡せると思うけれど」
続いてポーションや素材の代金でかなりのお金が入ることを伝える。
「……そうですね。すでに私のことは知られているようなので、カケル様にご迷惑がかからないようでしたらお願いします」
「わかった。夜ノ宮さんに相談しておくよ」
もちろんアオイを失ったご両親の悲しみはお金では埋め合わせられないけれど、お金はないよりもある方がいい。すでにアオイのことは捕捉されているわけだし、そこは気にしなくてもいいだろう。
「私の家は前に金貨を渡してあるし、まだバレていないみたいだし、止めておこうかしら」
「そうだね、ユウカの家のことは秘密にしておこう」
ユウカの実家のことはまだ知られていないみたいだし、以前に緊急時は売ってほしいと金貨を渡していたから、今は大丈夫そうだ。
「そのこともあるし、護身用の魔道具を渡したいから、アオイのご両親にももう一度会いに行った方がよさそうだね」
「お手数をお掛けします」
アオイの母親とはパソコンに貼った付箋のIDとパスワードを確認しに行った時以来だ。アオイが転生したことは説明せずにうまくこれまでのことを説明しないといけない。
場合によっては転生したことを話してもいいかもしれないけれど、俺も別の世界に転生したことは家族に言いたくないから難しいところだ。すでに一度死んでしまったことと、外見が変わって別人になってしまったから、そのまま前世と関わるのは躊躇われる。もちろん家族が困っていたら力になってあげたいが。
「とりあえず1回目の取引はこんなものかな。また来月位にポーションの素材と、今度はこっちの世界の鉱物なんかも欲しいって言っていたよ」
「なるほど、未知の鉱石というのも定番ですね」
「こっちでも有名な鉱石はかなり高いから初めはそれほど高価な物じゃないほうがよさそうね」
「そうだね。最初は安価であっちにはない金属でよさそうだ」
こちらの世界には元の世界にない鉱石がいくつもある。代表的なものだと魔法適性の高いミスリルや最も硬いといわれているオリハルコンだな。
ただし、それはこっちでもかなり高価なので、最初はもっと手ごろな物からでいいだろう。
こっちのほうはある程度必要な物が揃ったけれど、どうしようかな? 一旦はお金をもらっておき、恩を売っておく形でいいかもしれない。




