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第67話 久しぶりの味


「……本当に懐かしいです。昔の昼食はよく食べていました」


「俺もだよ。ファーストフード店は早くて安いから助かるんだよなあ。あとはコンビニの弁当やおにぎりなんかも多かったな」


 ハンバーガー、牛丼、中華料理などをテーブルに並べて、3人で晩ご飯を食べている。


 アオイも俺と同じらしい。社畜をしていると、昼休憩を1時間なんて取れないから、すぐに食べられるファーストフード店か、コンビニで買ってきたものをパソコンで仕事をしながら食べていたものだ。


 ……今更社畜時代のころのことは思い出したくないけれど。


「ハンバーガーなんかはあまり食べなかったけれど、テスト前は友達と一緒にお店で勉強しながら食べたりしたわね」


 ユウカが懐かしそうにそう言いながらポテトをつまむ。


 ユウカがこの異世界へ転移してから2年が過ぎているが、当時は女子高生だったからテスト前はみんなで集まって勉強などをしていたのだろう。そう言えば俺も学生のころはファミレスで学割のドリンクバーと安くて量の多い山盛りポテトで粘っていたなあ。


「こっちの世界の食材もおいしいけれど、こういうのも久しぶりに食べると悪くないかな」


「ええ。この前のカップラーメンも久しぶりに食べたらすっごくおいしかったわ」


「本当に久しぶりでおいしいです。カケル様、本当にありがとうございました」


 ユウカもアオイも久しぶりに日本のお店の味を楽しめたみたいだ。


 ユウカが作ってくれた料理はとてもおいしいけれど、たまにこういったジャンクな味を味わいたくなってしまう。俺は数か月ぶりだけれど、ユウカは2年ぶり、アオイは4年ぶりくらいになるらしいから、こういったジャンクな味も楽しんでくれたらしい。


 特にアオイはだいぶ長い間こういったものを食べていなかったので、すごく懐かしそうに食べている。……俺として最近のことだし、社畜時代の昼食によく食べていたものばかりなので、それほどよい思い出ではないのだがな。


「改めて味わってみると、こっちで売っている牛丼とは全然違う」


「ハンバーガーもそうね。やっぱりソースや味付けは日本の方がおいしいわ」


 この異世界には日本からの転移者と転生者が多いので、牛丼やハンバーガーを売っているお店もあるのだが、米は日本の米よりも細長くて甘みも薄く、味付けなどは明らかに日本のものの方がおいしい。


 それでもそこそこの値段がしたので、俺は食べたことがなかったけれど。


「あとは食後のデザートにアイスを買ってきたよ」


「わあっ、久しぶりね!」


「懐かしいです! それに普段は食べられないちょっといいやつですね!」


 食後にはケーキも買ってきているが、アイスクリームも購入してきた。2人に聞いたところ、こちらの世界にもホワイトミルブルという牛のような魔物の乳を使ったアイスクリームのような物があるらしいけれど、甘みが足りなくて舌触りもよくないそうだ。


 日本のアイスクリームのように、冷やしながら空気を含ませるよう攪拌(かくはん)させるやり方がよくないのかもな。


「久しぶりに食べるとおいしいなあ。こっちの世界だと甘いものは高いから贅沢な味なんだろうね」


「ええ、砂糖菓子なんかはまだまだ高いわ」


「祝福者が甜菜(てんさい)から砂糖を得る方法を発見したらしいですが、まだそれほど安くはないですから」


 濃厚なのにくどさはなく、ミルクのまろやかなコクと上品な甘さが広がり、冷たさが口の中を心地よく駆け抜けていく。一緒に入っている黒くほろ苦いクッキーがアイスクリームの甘さをより引き立てる。


 日本で売っているアイスクリームの中ではこのクッキークリーム味が一番好きだ。とはいえアオイが言っていたようにこのアイスは少し高めなので、給料日の時くらいしか買えなかったが、まさか異世界に来てから自由に買えるようになるとはな……。


 ちなみにいくつか購入してきた中からユウカは期間限定のほうじ茶ラテ味で、アオイはチーズケーキ味を選んだ。最近はいろんな味が出ているらしい。


 こちらの世界にも砂糖は流通しているようだが、まだそこまで安価ではないらしいので、甘いお菓子なんかはまだ高いらしい。


「明日荷物を受け取ってからになるけれど、レインとギュスターさんも喜んでくれるといいな」


「ケーキを喜んでくれたみたいだから、きっとこのアイスも喜んでくれるわよ」


「ですが、特にレインにはバレないように注意してもらわないといけないですね。こういったプラスチックのゴミから王城の中にいる人へバレてしまう可能性もありますから」


「そうだね。ギュスターさんには改めてお願いしよう」


 アオイが持っているアイスクリームのカップの蓋。こっちの世界だとプラスチック製品はまだないので、こういった物からも日本帰還スキルのことがバレてしまう可能性もある。日本から持ってきた物のゴミはすべて日本のゴミ箱に捨てているので、今後もそこは注意していこう。


 さて、明日はこちらが用意した物を渡しつつ、あちらが用意してくれた物を取引する。法律的に怪しそうな護衛用の道具なども用意してくれているらしく、ファミレスなどの公共の場で取引をするのは難しいので、夜ノ宮さんに指定された場所へ行く。


 ISEOの拠点に案内してもいいとメッセージで言われていたが、さすがにいきなりそこへ行くのは怖いので他の場所をとお願いしたところ、とあるホテルの一室を提案された。調べてみると、かなり高級そうなホテルのスイートルームだった。相変わらず得体のしれない組織だよなあ……。


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― 新着の感想 ―
ホテル…密室…。まだ、罠じゃないかとつい、疑ってしまいます。いざとなったら逃げられるけど、身内を脅しに使われたら?アオイさんの家族だけでなく、ユウカさんやカケルさんの家族の事もバレてるんじゃあ?大丈夫…
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