第65話 確認作業
「ええ、初めは日本だけで異世界のことを厳重管理しつつ研究していたのですが、やはり人の口に戸は立てられないらしく、諸外国に情報が漏れてしまったようです。今では主要国の上層部のみが知っており、ポーションなどを他国と協力しながら研究しております」
「なるほど……」
さすがにこの情報化社会で完全に秘密裏に研究をするのは難しいのだろう。かなり昔からある組織みたいだし、どこにでも金に目がくらんで情報を売るような人はいるのかもしれない。
まあ、研究という意味では他国に協力を求めるのはいいことなのだろう。ポーションが作れなくとも、何らかの治療薬の発見などに繋がるかもしれない。
「ですが、鈴木様や黒崎様の情報につきましては最小限の者しか知らず、情報管理体制も整っておりますので、どうかご安心ください」
「わかりました。そちらは信用します」
仮に情報が洩れて外国の人たちが俺を拉致しようとしてきたとしても、俺はいつでも異世界へ帰れるわけだし、あまり心配はなさそうだ。とはいえ、これまで以上にできるだけ俺のことがバレないように動いた方が良さそうではあるな。
……それに、外国からでも異世界に帰れるのかはちょっと気になるな。外国から帰れないとちょっと困ったことになるし、落ち着いたら一度実験をしてもらってもいいかもしれない。
「本日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」
「はい、こちらこそ、今後ともよろしくお願いします」
夜ノ宮さんと取引のことを話しあい、今後のことなどを決めてからコーヒーショップを出る。
夜ノ宮さんが綺麗な女性ということもあるが、それ以上に俺の知らない側の世界を垣間見たようで、なんだかとても緊張した……。今言った言葉通り、夜ノ宮さんの組織とは今後ともよい付き合いができればいいな。
とりあえず、そのまま少し歩いてコンビニへ行き、ATMで先ほどもらったキャッシュカードの中身を確認する。
「おお……」
思わず声が漏れてしまう。教えてもらった暗証番号を入力すると、ATMの画面にはこれまで見たことのないゼロの数が並んでいる。
ドキドキしながら10万円を引き出してみると、普通にお金を下ろすことができた。今までフリーマーケットで稼いできたお金が途端に少なく見えてしまう。
ということは、免許証もクレジットカードも本物なのだろう。先ほどの話を聞いているだけではあまり現実味がなかったけれど、こうして目の前にある10枚の一万円札を見ると、一気に現実感が湧いてくるから不思議だ。
そのまま人気のないところまで場所を移動してから日本帰還を使って屋敷へと戻る。
「カケル、大丈夫だった!」
「カケル様、変なことはされなかったでしょうか!」
「……うん、大丈夫だよ」
屋敷へ戻ってくると、いきなりユウカとアオイが俺の方へ詰め寄ってきた。
昨日夜ノ宮さんのことと、ああいった取引を持ちかけられたことを話してから、2人はだいぶ俺のことを心配してくれている。少なくとも俺に危害を加えるつもりはないみたいなんだけれどな。
そのままレインも含めて、今日話したことなどを伝えた。
『へえ~そんな大金や本物の身分証やクレジットカードをたった1日で用意できるなんて、僕が思っていたよりも大きな組織みたいだね! 異世界調査交流機関かあ~漫画に出てくる秘密組織みたいで最高だね!』
「本当に警察よりも強い権限を持っているのね……」
「さすがにハッタリだと思っていた……」
やはり、たった1日でそれらの物を用意したことについてはみんなも驚いていた。
その組織名が格好いいかはわからないけれど、ユウカとアオイの言う通り、強い権限を持っている組織だと認識しなければならない。
「とりあえず、当面はポーションやその素材を中心にして、簡易な魔道具なんかを用意すれば大丈夫そうだね」
みんなと予想した通り、まずはその辺りを取引用に用意すればいいらしい。今度は素材などを中心に持っていった方だようさそうだ。
ちなみに素材として薬草や魔物の体内から取り出した魔石などは病原菌や細菌などがいないかを調べるらしい。過去の祝福者が持ってきた物にはそれらがなかったようだが、下手をしたらバイオハザードが起こる可能性もある。夜ノ宮さんが慎重に薬草と魔石を銀色の袋に入れたのはそういった理由があったのかもしれない。
マジックバッグに生物は入れられないし、日本帰還スキルで生物は持ち運べないので、どちらかで弾かれたのだろう。病原菌や細菌なんかも生物枠として含まれるのかな。
「なぜ日本でポーションが作れないのかは少し興味がありますね。今度日本で栽培した薬草と、失敗したポーションをもらってきていただいてもよろしいですか?」
「もちろん。そうか、もしかするとアオイならその原因が掴めるかもしれないね」
アオイは魔道具なんかを作れるし、魔法薬の調合なんかもできる。
うまくいけば、失敗している原因がわかるかもしれない。もしも成功したら、日本の医療に革命が起こりそうだ。
次に連絡を取る際、夜ノ宮さんに用意してもらうとしよう。




