第64話 必要な物
「他の訪問者様の情報ですか。そちらにつきましては私が所属する以前のことなのと、どこまで話してよいのかわからない部分もありますので、一度持ち帰らせて確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、もちろんです」
夜ノ宮さんはだいぶ若いし、過去の日本帰還スキル持ちとは実際に会っていないのかもしれない。そちらの情報については次回になりそうだ。
その人たちが異世界でどういう行動をとってきたのか知りたいだけなので、そこまで重要視している話ではないが、一応な。
「今のところ、こちらの要望は以上です。今度はそちらが欲しいものなどを教えてください」
「はい」
こちらから直近でお願いしたい内容はすべて伝えた。今度は夜ノ宮さんの組織が取引したい物を確認する。
「なるほど、まだポーションや魔道具などは再現できていないのですね」
「はい。過去に訪問者様からいただいたポーション自体はこちらの世界でも使用できることは確認できております。また、原材料である薬草の栽培には成功したのですが、そこから魔力を込めてポーションを精製することがどうしてもできないのです」
やはりみんなで話していた通り、ポーションなどの魔法薬が第一だったようだ。過去に数度日本帰還スキルを持った祝福者と交渉をした際にポーションや薬草などの素材を手に入れたらしいけれど、まだ日本産のポーションの生産はできていないらしい。
「ですので、本日鈴木様からいただいたポーションなどはとても助かります。成分の分析や実験などにも使えますので、可能でありましたらその素材などを多めにいただければと思います」
「ええ、わかりました。それと、ポーションの上位互換であるハイポーションなどの要望はありますか?」
「……はい、もちろんてございます! 鈴木様がご満足いただける金額をお支払いいたします。これまでの訪問者様の話によりますと、ハイポーションは相当高価な品物でこれまでに数本しか手に入らなかったようなのですが、鈴木様は入手が可能なのでしょうか?」
「ええ、おそらくですが。ただ仰る通り、かなり高価な代物になると思います」
ハイポーションは高価だが、その分効果はポーションよりも遥かに上で、部位欠損までは治せないまでも、大きな怪我を癒すことができる。
とはいえ非常に高価ではあるが、ハイポーションは市場で購入することが可能だ。その上のエリクサーであればさらにその価格はさらに跳ね上がり、市場にすら出回っていないらしい。ユウカもエリクサーを手に入れるのにかなり苦労したみたいだからなあ。
ハイポーションはユウカ、アオイ、レインの全員が持っているのだから改めて考えるとみんなすごいよなあ。これまでの日本帰還スキル持ちの人たちでもそう簡単には手に入れられなかったに違いない。まあ、レインだったら漫画と引き換えならば何十本ものハイポーションを用意できそうな気もするけれど。
「ちなみにエリクサーというハイポーションの上位互換であるポーションなどはご存知——」
「っ!? どんな病や怪我でも治せるという伝説のポーションですか! そ、そちらも手に入るのでしょうか!」
ここにきて初めて夜ノ宮さんのいつも冷静にしていた表情が崩れた。どうやら他の日本帰還スキル持ちの人からエリクサーの存在を聞いていたようだ。
異世界ではお伽話に出てくるような伝説のポーションみたいだし、やはりそれほどの物らしい。レインがアビストータス戦の時に用意したエリクサーはレイン個人の物ではないから、それを譲ってもらうとなると、相応の対価が必要となるだろう。
そうか、ユウカの妹の春華ちゃんのことは調べられていないと思ったが、もしかするとエリクサーなんて伝説級の物を手に入れられるはずがないと想定していたのかもしれないな。今後は俺のことについて詮索しないよう伝えたが、そこからバレなければいいのだが。
「可能性はゼロじゃないですが、難しいと思います。それに日本円に換算するとたぶんハイポーションの数百倍、数億円以上の価値があると思いますよ」
「……そうですよね。そもそも実物が存在するかもわからない物でしたので、存在することがわかっただけでもすばらしい情報です。こちらの世界ではお金に糸目を付けずにそれを欲する者も多いと思いますから」
「確かに大金持ちの人とかはいくら払ってでも求めそうですよね」
お金よりも自分の命の方が大事だものなあ。億万長者なら一家に一本はエリクサーを持っておきたい気もする。
「どちらにせよ、まだポーションを再現することができない状況ですし、逆にそのような物があれば争いの火種にもなりそうです。上の者には伝えますが、おそらく最上級のトップシークレットになりそうですね」
「争いの火種ですか……。そういえば異世界の存在は日本以外にも知られているのですか?」
なんだか聞き逃せない単語が出てきた。
そういえば俺の日本帰還スキルは名前からして日本限定に思えるけれど、もしかすると外国人も似たようなスキルを持っていたりするのだろうか? あるいは別の異世界なんてものが存在していても不思議ではない。




