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第58話 謎の組織


「……異世界とはいったい何の話です?」


 明らかに俺に向かって話しかけており、間違いなく俺のことをなにか知っている様子だったが、とりあえずとぼけてみる。


 というか、展開がいきなりすぎて理解が追いついてこない。一体この人はなんなんだ?


「警戒されるのも無理はございません。ですが我々は訪問者様を害するつもりは一切ございません。そしてこの世界とは異なる別の世界、異世界が存在し、世界を行き来できる者がいることも知っております。可能でありましたら、訪問者様と取引がしたいと考えております」


「……取引?」


 どうやらこの人は本当に異世界の存在を知っているらしい。そして我々と言っていることからも、この人だけではなく、組織ぐるみで動いていることがわかる。


 俺を拘束するつもりなら、わざわざ俺に声をかけたりはしてこない。それにどうやって異世界や俺のことを知ったのか興味がある。いつでも異世界へ帰ることができる状態で話を聞いてみるしかなさそうだ。




「この度はお時間を取っていただき、誠に感謝しております」


「………………」


 目の前にいる20代前半くらいのスーツ姿で長身の女性が俺に向かって頭を下げてくる。


 今はサングラスを外しており、とても整った顔立ちをして、細身ながら引き締まったスタイルだ。どこかの会社員というよりはモデルと言われた方が納得できそうな容姿である。


 そしてそんな女性とチェーン店のファミレスで対面している。この女性から話をする場所はどこでもいいと言われたので、公共の場所で一番近いここへやってきた。一応尾行している人はおらず、ファミレスの一番奥の周囲に誰もいない場所を選んだ。


 ここに来るまでに多少落ち着いたが、まだ動悸は収まっていない。もちろん警戒は続けて護身用の魔道具は展開しつつ、いつでも日本帰還使えるように意識している。


「まずはこちらをどうぞ」


「……頂戴いたします」


 そう言いながら女性が何を差し出してくるのかと思ったら、まさかの普通の名刺だった。


 警戒をしつつも、社畜時代の習性でつい両手を添えて受け取ってしまう。


「……()()()調()()()()()()ですか?」


「はい。異世界調査交流機関、通称ISEO(Isekai Survey and Exchange Organization)の夜ノ宮(よるのみや)ゆかりと申します。以後お見知りおきを」


「………………」


 ツッコミたいところがいくつもあるのだが、夜ノ宮さんはそんな組織がさも普通に存在しているかのように話す。


「こちらはその名の通り、この世界とは異なる異世界の調査や交流を行う組織となっております。少し怪しく思われるかもしれませんが、国による正式な組織で、警察以上の権限を持つ組織と認識していただければと思います」


 警察以上の権限を持つ組織? なんだか一気に胡散臭くなってきたのだが……。


「まずは我々がどのように訪問者様を見つけたのかをご説明いたします。こちらをご覧ください」


「っ!」


 夜ノ宮さんが取り出したのはタブレットだった。そしてそれを起動し、画像を開く。


 そこには虚無のローブを着た俺がビルの中を歩いている姿が映っていた。おそらくこれは権藤の件で記者会見のあったビルに忍び込んだ時のものだ。


 ……監視カメラには気を付けて動いていたが、やはり画像が残ってしまったか。しかし、この時の俺はマスクをして顔を隠していたし、なぜそこから俺がこの監視カメラの映像の人物と一致するとわかったんだ?


「こちらはとあるビルの監視カメラの映像となります。次にこちらをご覧ください」


 そう言いながら夜ノ宮さんは画像をスライドしていく。そこにはビルとは別の場所の監視カメラで撮られたと思われる俺の写真が何枚も出てきた。


「先ほどのビルの監視カメラの映像から、背丈や歩き方、特徴的な動きなどを細かく解析しました。そして先日の記者会見で公開された被害者である黒崎葵様周辺、特にご実家付近に存在する監視カメラの映像をすべて確認しました。その結果、一致したのが()()()様ということになります。大変失礼かと存じますが、黒崎様にもお話をお伺いさせていただいております」


「………………」


 マジか、今の技術力だとそこまで判別することが可能なのか……。


 すでにアオイの実家にまで話を聞き、俺が伝えた偽名まで聞き出している。


「こちらのビルの不法侵入などの不法行為につきましては一切言及いたしませんので、ご安心いただければと思います。続けてこちらをご覧ください」


 続けて流れてきたのは動画だった。


「……これはさっきの公園?」


 そこに映っていたのはさっき夜ノ宮さんがいた公園で、俺がいつも異世界に帰る公園を上空から空撮したような動画だった。そして動画が進んでいくと、そこに突然灰色のものが現れる。その灰色のローブを脱ぎ、茶色い髪色が見えるまで動画が続いた。


 間違いなくこの動画は俺が異世界から日本帰還を使って日本に移動してきた瞬間の動画だ。しかし、あの公園を上空から撮れるような高いビルはなかったし、ドローンなどで偶然撮ったにしてはあまりにもできすぎている。


 いったいいつ、どうやってこんな動画を撮ったんだ?


「こちらは遥か上空に存在する静止衛星による()()()()となります。先ほどの監視カメラの映像から、訪問者様の行動範囲を割り出し、あちらの公園付近を確認し、こちらの映像を確認することができました」


「………………」


 衛星写真というものを見たことはあるが、まさかここまで拡大できるものなのか……。先ほどの監視カメラの技術といい、とんでもない技術力だ。俺が様々な場所へ瞬時に移動できる存在であることもバレている。


 そしてアオイの件からまだ一月も経っていないのに、監視カメラの映像から俺のことを突き止め、衛星写真などを扱える組織。名前は非常に胡散臭いけれど、警察以上の権限を持つというのも、あながち嘘ではないのかもしれない。


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― 新着の感想 ―
こんばんは。 まずは疑ってかかるべきでしょうね。古今東西こういう胡散臭い組織は一枚岩じゃない→こちらを搾取してやろうと考えてるゴミがいるのは定番ですから。
ハイテクスゲー!ちょっと予想してたけど、予想よりもハイテク!!衛星写真は、防ぎようが無い(汗)この人達と取り引きしたら、日本円稼ぎ楽になりそう!…信用出来るなら! それとは別に、せっかくのフリーマーケ…
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