第56話 5日後
アビストータスを倒してから5日が過ぎた。その間にアビストータスが倒されたことはレインのいる王都にまで届いているらしい。
ハヤテが例の長距離を話せる水晶のような魔道具を屋敷にまた持ってきてくれた。明日日本で買い物をして、ハヤテに持たせて返す予定だ。
『いやあ~大地喰らいが倒されて、王都では大ニュースになっているよ! ソラバルの街ではお祭り騒ぎだってさ。これもカケルくん率いる僕たち境界の円卓の初めての成果だと思うと感慨深いねえ~』
「俺が率いているわけじゃないぞ……」
「そうね、カケルが中心にいるとバレないようにするために円卓という名前にしたのだから気を付けなさいよ」
「カケル様が中心なのは構成員だけが知っていればいい」
「………………」
いや、さすがにあの3人の戦いを見て、俺が率いていると言えるほど、俺の顔の面は厚くない。アビストータスとの戦いで、アオイの隕石の魔法やユウカの最後の一撃で本当に地形が変わってしまったからな……。本当に固有スキルの力はとんでもない。
ちなみに俺たちの同盟名はみんなで相談をして境界の円卓という名前に決定した。境界が祝福者という意味を暗に込め、円卓というのはアーサー王の円卓から来ており、その名の通り丸い円状の卓のため上座や下座などはなく、そこに座る者は全員が対等という意味があるらしい。
その前にレインが『祝福者の世界戦線』、通称SSSという謎の案が出たけれどみんなで却下した。今回はたまたま魔物と戦うことになったけれど、俺も戦線という名を入れるのは反対である。その後にアオイが『境界の円卓』という案を出してくれて、それに決まった。レインも円卓会議というフレーズをえらく気に入っていたようだ。
まあ、秘密裏に祝福者たちで相互扶助する組織なので、表立って組織名を使うことはないと思うけれど、結束力や仲間意識も出るのでいい案だと思う。
「こっちの方は誰がアビストータスを倒したのかバレていないけれど、王都の方も大丈夫そう?」
「私もベルリアの街の冒険者ギルドに話を聞かれたけれど、そっちは誤魔化しておいたわ」
アビストータスが真っ二つになっていたこともあり、剣聖であるユウカが倒したのではないかと冒険者ギルドに聞かれたらしいが、自分一人ではあの硬い甲羅を斬ることはできなかっただろうと答えてくれた。……まあ、実際にアオイの力がなければ難しかったので、嘘ではない。
そしてそれはそれで、Sランク冒険者であるユウカも倒せないほどの魔物を誰が倒したかという話になって、ソラバルの街から少し離れたこの街でも話題になっている。
『街の方では誰が倒したか話題になっていたけれど、ちゃんと秘密裏に動いていたからバレることはなさそうだね。ただ、僕も最近はちょっといろいろと動き過ぎているから、こういったことが続くと、父上だけにはバレちゃうかもね……』
言われてみると、これまではあまり噂も聞かないほどだった第四皇子のレインがユウカやアオイと友誼を結んだあとに今回の出来事があった。さすがにもうないと信じたいが、同じようにレインやユウカやアオイが動いた時に事件が起こったとなると、いろいろ察せられる可能性がある。
「レインの父親というと……まさかこの国の国王様?」
『うん、そうだよ。もしもカケルくんの存在がバレたとしても、父上は祝福者に寛容だから、むしろ協力してくれると思うけれどね。それに仮にカケルくんを敵に回すとしたら、アビストータスを倒したアオイちゃんとユウカさんまで敵に回すことになるから、僕は命を懸けて止めるよ!』
「そうね、それは覚悟しておいたほうがいいわ」
「国ごと滅ぶ覚悟で来るといい」
「いやいや、その場合はみんなで他国に逃げようよ!」
なんで国と戦うことになるんだ……。そんなことになる前に全力で逃げるぞ……。
『僕としても絶対にカケルくんを失うわけにはいかないからね! それにギュスターも全力で今回のことを隠すように今も駆け回っているから多分大丈夫だよ』
「「「………………」」」
ギュスターさん、本当に申し訳ない。日本のケーキがおいしかったと言っていたし、彼のためにいっぱい購入してくるとしよう。
それに俺のことがバレてしまったとしても悔いはない。みんなのおかげで俺のお世話になった人が大勢いるソラバルの街を守ることができた。恩人であるブルーノさんの誇りも守れたし、きっと喜んでいることだろう。
あんなにすごい魔物を倒してしまうなんて本当にすごかった。アオイの魔法、ユウカの剣技、レインの悪意察知に王族の権限と、改めて境界の円卓とはとんでもなくヤバい組織だよなあ……。
俺の頼みに付き合ってくれたみんなにはとても感謝している。また日本でなにかいろいろと買ってくるとしよう。




