第49話 偵察
「まさか空を飛ばしながら、その様子を映し出せる魔道具が存在するとは……」
「僕たちの世界だと電気という力を使って動く機械って言うんだよ。それにしても、今はこんな便利な物が一般人でも手に入るんだね……」
異世界人のギュスターさんと16年前にこの世界へ転生してきたレインがドローンを見て驚いている。
さすがにレインのころだと、ここまで高性能なドローンが普通の家電量販店で簡単に手に入ることなんて予想できないだろうなあ。
「あっちの世界で飛ばすにはいろいろと制限があったりするんだけれどね。それにこれくらいのやつだと、バッテリーは30分くらいしかもたないんだ」
日本でドローンを飛ばすには電波法なんかがあって、飛ばせる場所が限られているが、この異世界では関係ない。さすがに異世界でwifi通信やGPS機能などは使用できず、自動帰還機能や飛行データの収集などはできないが、これは無線の電波で動くタイプなので異世界でも問題なく使用できる。
業務用のもっと高価なドローンであれば、数十キロメートル以上離れた場所まで飛ばすことができ、バッテリーも大容量で自動障害物回避機能まで付いているらしのだが、その分お値段も非常に高く20~30万円ほどになって完全に予算オーバーだ。
ちなみにこのドローンでもそこそこいいタイプなので5万円ほどした。ドローンの他にも今回の戦闘で使える道具をいくつか購入して完全に予算オーバーだったので、ついにユウカの実家に頭を下げてお金を借りてしまった……。
現状でもヒモのような状態なのに、借金までしてしまって本当に情けない限りだ……。この件が終わったらすぐに借金を返すために頑張ろう。今回の件についてはユウカのご家族には絶対に無茶はしないと動画でユウカ本人が説明してくれた。ご家族はユウカの意思を尊重してくれたようだが、俺もユウカとアオイには絶対に無茶をさせるつもりはない。
「……人材や魔力すら使わずにはるか遠くの景色を見渡すことができる道具。こんな物が手に入るとなれば、従来の戦い方そのものが変わってしまいますな。なるほど、レイン様がカケル殿のことを秘匿して保護するという理由がようやく理解できました」
「でしょ」
「「「………………」」」
実際の理由は漫画やアニメなどを確保するためだったと思うのだが……。
でも確かにギュスターさんの言う通り、ドローンみたいな物が存在すれば戦闘方法なども一変するかもしれない。もちろん加担する気はないが、人同士の戦闘ではこれほど便利な道具もないだろう。
「……こいつがアビストータスか。周囲の木々と比べると、確かにめちゃくちゃデカいな」
ドローンを操作し、草原の先へ飛ばすと、真っ黒で巨大なものが現れた。始めは黒い山と思ったが、ドローンを近付けていくにつれて、それが山ではないことがはっきりとわかった。
光をほとんど反射しない漆黒の甲羅には無数の突起物が生えて剣山のようになっている。その体躯は数十メートルもあり、とても生物とは思えないほどの大きさだ。巨大な前足を動かし、ゆっくりと前へ進んでいる。足や頭も甲羅と同様に漆黒だが、巨大な瞳だけが不気味に赤く輝いていた。
そして巨大な口を開け、地面に生えた大きな巨木を地面ごと一口で喰らう。まさしく大地喰らいと呼ぶにふさわしい、規格外の魔物だ。
「さすがにSランク相当の魔物だけあるわ。身体の大きさだけで言うと、これまで私が見た中でも一番ね」
「確かにすごく大きい。私もこんなに大きい魔物は初めて見る」
アオイとユウカがアビストータスの大きさに驚いている。ユウカはSランク冒険者で様々な魔物を倒してきた。そしてアオイも魔法の研究の素材を手に入れるため、これまでに様々な魔物を屠ってきたらしい。
……当時は日本へ帰りたかった一心だったと思うけれど、たったひとりで本当に無茶をするよなあ。
「あれ、なんか周囲にも魔物がいない?」
「アビストータスは周囲にいる魔物を惹きつける性質がございます。先日ソラバルの街の者たちによる総攻撃で削られましたが、また集まってきたのでしょうな」
「なるほど……」
巨大なアビストータスの周囲には二十体近くの魔物がまるで取り巻きのようにまとわりついている。アビストータスは木々などの植物を喰らい、魔物や人などは食べないから、周囲の魔物には見向きもしていない。
強者に引き寄せられる魔物の習性みたいなものなのかな。
「身体は大きいけれど、動きがだいぶ遅いのは事前の情報通りか」
「ええ。これならまったく問題ないわね。周囲にいる魔物の方が速いくらいよ」
「私も問題ありません。そもそも周囲に近寄りませんので」
アビストータスの動きを見て、ユウカとアオイがそう答えた。
確かにこの動きなら、撤退が容易ということも頷ける。
「了解。それじゃあ作戦通りにいこう。だけど、絶対に無理はしないでね。うまく進路を変えさせることができればそれで作戦は成功だよ」
「ええ、任せておいて!」
「行ってきます、カケル様!」
2人は力強く頷く。
あとは2人の力に託そう。




