第42話 必要な物
これまではいろいろとドタバタしていたけれど、ようやく多少は落ち着いてきた。ある程度日本の物を購入できる状況になってきたし、このケーキのように生活の質を向上させるものをいろいろと買ってもいいだろう。
もちろんあまり高価な物は買えないがな。
「……そうね。こっちにはない物だと、紅茶とかミルクティーみたな飲み物がたまにでいいから欲しいかも。それとちょっと高いと思うんだけれど、家電がいくつか欲しいわね」
家電か。こちらの世界には電気を使った道具が発展していないが、魔法を使った魔道具があり、祝福者が多いため、日本に近い物も数多くある。
明かりやコンロ、ミキサー、洗濯機、掃除機などはこの屋敷にも揃えられているが、それでも足りない物があるのだろう。
「炊飯器と電子レンジがあると便利かしら。今ご飯はお鍋で炊いているけれど、コンロをひとつ使っちゃうのと、火加減を間違えるとすぐにお鍋が焦げちゃうのよね……。あと電子レンジはこっちの世界にないから、あれがあると料理の幅が広がるの」
「あっ……炊飯器か。確かにそれは早急に欲しいね。というか、今まで気付かなくてごめん」
「ううん! そこまで手間ってわけじゃないし、お鍋だとおこげも楽しめるからね。それにいっぱい炊いてマジックバッグに保存できるから、もしあればでいいわ」
「いや、今後もご飯は食べるだろうし、これは早めに解決しないといけないな」
今の食事はすべてユウカが担当してくれている。ユウカはそう言っているが、ご飯を毎回鍋で炊くのはだいぶ面倒だろう。
そして確かに電子レンジに近い構造の魔道具は今のところ見たことがない。電子レンジはマイクロ波を当てて振動によって温める仕組みだから、それを魔法で再現するのは難しいのかもしれない。料理をする際に電子レンジがあった方が便利なのも間違いないだろう。
「炊飯器も電子レンジもそこまで高いやつじゃなければ購入できると思うけれど、電源をどうするかだな……」
俺もひとり暮らしを始めた時にどちらも揃えたが、安いやつなら炊飯器は5000円くらい、電子レンジは10000円くらいあれば揃えられる。
ただ、問題は電源の方だ。日本にいればコンセントから簡単に電気を使えるけれど、この異世界にはコンセントなんてない。
「ソーラーパネルを使うのがいいかもしれません。でも、ソーラーパネルって結構高かったような気もします……」
「そうね。うちにも取り付けたけれど、100万円以上かかったって言ってた気がするわ」
「「100万円!?」」
俺とアオイの声が重なる。よく見かけるソーラーパネルってそんなに高いのか……。
アウトドア用の小さいソーラーパネルもあった気がするけれど、たぶんあれだと電力が全然足りないよなあ。
「それに屋敷にソーラーパネルを取り付けていたら、ここに日本の物を持ってこれる祝福者がいますって宣伝しているようなものか……」
「そちらについては魔道具で偽装することができると思います」
「おお、それはすごい! 問題は値段の方か」
前に使っていた虚無のローブのように認識を逸らせることができるのかもしれない。達人には見破られてしまうかもしれないと言っていたから、屋根ではなく目立たないベランダとかに設置すれば問題ないだろう。
問題はソーラーパネルの値段か……。もっと日本のお金を一気に稼ぐ方法が必要になるな。
「他にいい方法がないか、あとでネットを使って調べてみよう。アオイの方はなにかある?」
日本帰還を使えばすぐにネットで調べられるのはありがたい。あとでまとめて調べてみよう。
「そうですね……。私も漫画の続きが少し欲しいかもしれません」
「うん。漫画は俺もちょっと気になるし、どちらにしろレインにも送るからちょうどいいかな」
アオイも前世で読んでいた漫画が気になるらしい。俺も久しぶりに漫画はちょっとみたいし、きっとレインも昔読みたかった漫画を読み終えたら、新しい漫画も読むだろうからちょうどいい。
「それと、可能なら日本のセキュリティ用の道具が欲しいです。屋敷に設置している魔道具は魔法を極めた者や固有スキルを持つ祝福者なら一部をすり抜けることができるかもしれません。ですが、日本のセキュリティシステムがあれば、それを防ぐことができるかも」
「なるほど。確かに魔道具と日本の道具の両方があれば完璧なセキュリティになりそうだね。よし、そっちも調べてみよう」
虚無のローブは気配を完全に消す魔道具だけど、監視カメラなどには映ってしまう。同じように日本の物理的なセキュリティならそれを防げるかもしれない。
こちらも一緒に調べてみるとしよう。
「……ふむふむ、ポータブル電源と発電機か。低予算だったら、こっちか」
日本へ戻ってスマホで情報を検索してみるとソーラーパネル以外にも方法があった。ポータブル電源とは予め家庭用コンセントなどから充電をして、電力を溜めておけるものだ。肝心の充電方法だが……ユウカの実家のコンセントを貸してもらうのはひとつの手段だが、毎回借りて電気代を払うのも手間がかかる。
災害時やアウトドア用の発電機が5万円ほどで購入できるので、こちらの方が良さそうだ。
発電機の充電方法だが、ひとつ目はガソリン。俺は知らなかったが、災害時用の発電機は車の燃料であるガソリンを入れれば発電できるらしい。ただし、ガソリンを購入するためには身分証が必要となるので、これは俺には無理だ。相変わらずいろんなところで身分証は必要だな……。
もうひとつはコンロなどに使うガスボンベから発電ができるらしい。ガスボンベ一本で4000mAhのスマホが20~30回充電できるということは結構な発電量がありそうだ。長期的なコスパはソーラーパネルやガソリンの方がよさそうだけれど、現状できるのはこっちだな。
「監視カメラも今はこんなのがあるのか……。技術の進歩はすさまじいな……」




