第38話 フリーマーケットの商品
「とりあえずこれくらい用意してみたけれど、どうかな?」
「「「………………」」」
翌日の早朝、改めて王城へ向かい、レインの部屋へ案内された。そして昨日と同じように俺たちだけとなり、レインが用意してくれたマジックバッグの中身を出して見せてもらうと、そこには様々な物が文字通り山となっている。
昨日俺たちが伝えたフリーマーケットで売れ行きが良かった商品に加えて、他にも日本で売れそうなレインの選んだ商品もある。たった1日でこれだけの品物を集めてきたらしい。
「十分だよ。というか、たぶん俺一人じゃこんなに捌けないと思うけれど……」
「よく1日でこれだけ集めたものね……」
「しかもこれだけの容量が入るマジックバッグはかなり高価なはず……」
俺だけではなく、ユウカとアオイも若干呆れている。
ちなみにマジックバッグはその容量によって値段が変わり、俺がユウカから借りているマジックバッグはこの半分も入らない。一体いくらするのかわからない……。
「よかった。少ないよりは多い方がいいからね。足りなくなったらいつでも言ってよ」
「……当分は大丈夫だと思うけれどな。それじゃあ、これを日本のフリーマーケットで売って、そのお金で漫画を買って送るってことで」
漫画やその他の物を購入してくるお金の元になるフリーマーケットで販売する商品はレインが用意することになった。そのお金の一部はフリーマーケットで販売する俺の手数料ということで俺たちも使わせてもらう。
これで商品を仕入れる手間が省けるのは俺たちにとってもありがたいことだな。
「うん。特にカケルくんには労力をかけちゃって申し訳ないね。僕も昨日1日じっくり考えたけれど、やっぱり現状はフリーマーケットで販売するしか日本のお金を手に入れる方法はなさそうだよ。どうしても身分証のないのがネックになっちゃうんだよねえ……」
「そうなんだよ。転生だとそこが一番の問題なんだ……」
「僕は事故死だから間違いなく死亡扱いになっているだろうし、使っていた口座なんかも閉じられちゃっているだろうなあ」
やはり戸籍や身分証がないと厳しい。実際のところ、それらがないと不法滞在者と一緒の扱いだ。犯罪行為をすればいくらでも稼げると思うけれど、それはなしだ。
捕まっても日本帰還を使えば戻って来られるとはいえ、警察の御用になるわけにはいかない。
「とりあえず、いい方法が見つかるまではフリーマーケットで頑張るとしよう」
ユウカのご家族や俺の家族に協力を要請するのは最後の手段だ。
レインに確認したところ、電子書籍よりも紙の方がいいらしいので、クレジットカードを借りてネットで購入する必要はなさそうである。今は電子書籍が普及していて、たいていの漫画がすぐにネットでダウンロードできると伝えたけれど、慣れた紙のほうがいいらしい。
俺もどちらかというと紙で買うことが多かったな。ユウカとアオイは電子で購入することが多かったらしく、少し時代の流れも感じる。すでに市場になく、どうしても手に入らない漫画は申し訳ないがユウカの実家にまとめて取り寄せるしかないか。
「申し訳ないけれど、よろしくね。他にいい方法があって、僕に協力できることがあればなんでもするから教えてよ!」
「ああ、その時はお願いするよ」
フリーマーケットでは俺ひとりで稼げるお金には限界があるので、なにかいい方法を探したいところだ。
なにせレインが欲しい漫画のリストの物を揃えるには何十万円もかかるし、他にも今出ている新しい漫画なんかもほしいらしい。さらにアニメを視聴するためには最低でもポータブルDVDやBDプレイヤー、電力を使うための電源などが必要となる。
いや、将来的にゲームもやりたいと言っていたから、モニターを購入した方がいいのか。どちらにせよ、だいぶ日本のお金が必要になる。なにかもう少し大金を稼げる方法があればいいのだけれどな。とりあえず今は頑張ってフリーマーケットでお金を稼ぐとしよう。
「2万円分くらいは稼げることができたか。でも、土日と比べるとやっぱりお客さんがだいぶ少なかったなあ……」
王城から宿へ戻り、昨日予約した身分証を必要としない小規模なフリーマーケットに参加をしてきた。しかし、身分証を必要とせず、前日に予約できるようなフリーマーケットはとても小規模で、なおかつ今日は平日だったこともあってお客さんはほとんどいなかったな。
レインからたくさんの商品を預かり、値段を安めに設定して頑張って呼び込みをしたにもかかわらず、2万円ちょっとしか売り上げはなかった。前回みたいに朝一から大量に購入してくれるお客さんがいなかったのも痛かったし、フリーマーケットで物を売るのはあまり安定せずに運にも左右されそうだ。今後はお客さんの数が多い土日をメインにフリーマーケットに参加した方がいいかもしれない。
とはいえ、これで新品でもある程度の漫画は購入できるだろう。これだけあれば次の土日まで……いや、あの人の漫画に対する情熱なら1~2日で読み切ってしまいそうか。まあ、次の土日までは我慢してもらうとしよう。
これでいったん王都でできることは終わった。あの宿もすごく快適なのだが、アオイは少し居心地が悪そうだ。それに料理は高級食材を使ってすごくおいしいのだが、それがずっと続くと普通のご飯も食べたくなってしまう。ぼちぼちベルリアの街へ戻るとしよう。




