第36話 祝福者の法則
「まず、祝福者は日本人しかいない。その代わりに日本中どの都道府県からでも転生や転移してくる可能性があるみたいだね。ちなみに僕は新潟県出身だよ」
レインが日本語で書かれた紙の束を持ってくる。そこには様々な人の名前、年齢、性別、身長や体重など様々なデータが書いてあった。
……もしかするとあれは祝福者のデータか? ユウカとアオイのこともだいぶ調べていたようだし、どうやってそこまで調べたんだろう。
「確かに私が今まで会ったことのある祝福者は全員日本人ね」
「私も」
「理由はさっぱりわかってないんだけれどさ。それと今から僕が伝えることは過去300人くらいの祝福者の記録から割り出した推測だから、間違ったことがあるかもしれないからね」
「そ、そんなに祝福者がいたんだ……」
「といっても、僕が調べたのは50人くらいだよ。残りの祝福者はこれまで国が記録していた分だ。実はこの国では祝福者の情報は管理されている。まあ、あまりに強大な固有スキルを持った祝福者の情報を管理しないわけがないよね」
言われてみるとその通りだ。
先日見た強力な魔法を扱えるアオイのような祝福者の状況を国が把握していないわけがない。リスク管理も含めて情報は集めているわけか。
「ぶっちゃけると冒険者ギルドは特に監視対象なんだよね。こちらの世界に来て、何も持っていない祝福者は最初冒険者になることが多いんだ。そこで黒髪黒目の転移者だったら、すぐに監視対象だよ」
「「………………」」
まさにレインが言っている通りに行動していた俺とユウカが顔を見合わせる。なるほど、身長や体重や年齢なんかのデータは冒険者に登録した時の物を集めたというわけか。
「もちろん祝福者が困窮していたら秘密裏に保護するようにもなっているんだよ。固有スキルによっては誰かの助力がなければ詰むような状況もあるからね」
「なるほど……」
俺の固有スキルもそれに近かった。
冒険者ギルドで俺が別の世界から来た転生者と伝えていたら、その時点で保護されていたのかもしれない。
「話を戻すけれど、祝福者は今のところ全員日本人。転移者が転移してくる場所はパワースポットとかじゃなくて、本当にランダムみたいだね。転移者の年齢も子供から老人まで確認できているよ」
「へえ~」
「赤ちゃんからの転生者は僕みたいな王族の子に産まれることもあれば、農家の子供に産まれることもある。新しい身体が構成される場合は若い年齢の身体になるみたいだね。人族以外もあるけれど、人口比率的にか、人族が多いみたいだよ」
転生者の方もある程度調べているようだ。
本当によくそこまで調べたな。
「次に固有スキルについてだね。固有スキルについてはその人の資質や性別と関係なく、完全にランダムに与えられるみたいだ。そして固有スキルはその人唯一無二のものじゃない。実は同じ固有スキルを持つ祝福者もいるんだよ」
「「「えっ!?」」」
衝撃の事実に俺たち3人の声が重なる。
「つ、つまり日本帰還を持っている祝福者が他にいるってこと!?」
「正確に言うと過去にいたというべきかな。例えばユウカさんの『剣聖』とアオイちゃんの『魔導王』、この2つの固有スキルを過去に持っていた祝福者の記録はいくつか残っているんだ。ただし、同じ固有スキルを持った者が2人以上同時に存在した記録はない。推測だけれど、その祝福者が死なないと、同じ固有スキルを持った祝福者は現れないんだと思うよ」
……なるほど、同時期に同じ固有スキルを持つことはないということか。同じスキルを持つなら固有じゃないと思ったけれど、それなら一応固有スキルかな。
「過去にカケルと同じ日本帰還の固有スキルを持った日本の米を持ちこんだかもしれないってことね」
「そういうこと。ただし、もしかすると別の固有スキルの可能性もあるよ。実は戦闘系や生産系の祝福者は他国にいても把握しやすいんだけれど、カケルくんの日本帰還や特殊な固有スキルだと、それを隠す祝福者が多いんだよね。まあ、そういった祝福者は狙われやすいから、それも当然なんだけれど」
戦闘系や生産系の固有スキルなら名を上げれば勝手にその固有スキルも広まってしまうんだな。そして当然俺のような非戦闘系固有スキルはそれを隠す。
「お米だけじゃなくて日本の物が広まったこともあったから、それを手に入れる固有スキルがあったことはすでに把握していたんだ。カケルくんが日本帰還の固有スキルを持っていることを確信した理由のひとつでもあるね」
過去に日本の物を持ってくる固有スキルが存在すると知っていたからこそ、ずっと俺という存在を探していたということか。
なるほど、どんな固有スキルが存在するのかを知っているのは結構なアドバンテージになるな。もしも祝福者と戦う状況になるなら、その情報の価値は計り知れない。
「……カケル様のこともその記録に加えるの?」
「あっ……」
アオイの言う通り、祝福者の情報を記録しているのなら、俺のことも記録されるのか。
可能ならば他言無用にしておいてほしいが、国で管理しているようだし、こればかりは仕方がないか……。
「いやだなあ~アオイちゃん、そんなの誰にも言うわけないじゃないか。その記録は限られた者しか見られないけれど、どこから情報が洩れるかわからないからね。カケルくんの安全が第一だよ! 今回はそのためにもアオイさんに依頼という形を取って王都へ呼んだわけだからね」
「それはありがたいけれど、本当にいいの?」
「もちろん。それとこの固有スキルを書き写したリストを渡しておくから、有意義に使ってよ。一応国家機密でもあるから、他の人には秘密にしてほしいけれど、すべてはカケルくんの思うがままにしてくれていいからさ! 他にも僕に協力できることがあったら何でも言ってね!」
「あ、ああ……」
王族であるレインの協力もそうだけれど、もしかするとこの祝福者が持つ固有スキルの情報が一番価値があるかもしれない。
「僕があの漫画をどれほど切望していたことか……! カケルくんとめぐり合わせてくれたこの奇跡に感謝します!」
「「「………………」」」
そう、手を組みながら祈りを捧げるレイン。
先ほどからニコニコと明るく陽気な様子だけれど、国家機密のリストを渡してくれたり、俺の存在を国へ秘匿してくれたりと、俺のために相当ヤバい橋を渡ってくれているんじゃないか……?
さっきの忠誠の宣誓についても、俺が思っているよりも重い覚悟だったのかもしれない……。よほどあの漫画の最終巻を読めたことが嬉しかったんだろうなあ……。




