第35話 お米
「うん、もちろん。僕が2人の他にマークしていた祝福者がこの国にもう1人いるね。それに僕が調べられるのは国内だけだけど、他国にもそういう祝福者は絶対にいると思うよ」
「……なるほど」
やはりというべきか、日本に未練のある祝福者はまだいるらしい。
「他の祝福者と、特にその人のことについては引き続き調べてもらってほしい。素行に問題なさそうだったら、実際に接触して心残りの内容を聞いてみて、俺の固有スキルで解消できそうだったら協力を申し出ていいかも」
「祝福者の仲間を集めていくんだね。オッケー、任せておいてよ!」
そう言いながらサムズアップするレイン。
……なんだかそのサムズアップの動作は久しぶりに見た気がする。16年前となると、若干ながら俺たちと世代のズレがあったりするのかもしれない。
「ちゃんと同盟の名前もあった方がよさそうだね。時間のある時に考えておいてよ」
「う~ん、シンプルに祝福者同盟とかでいいと思うけれどな。まあ、それだと他の祝福者の同盟とかぶったりするのか。みんなと相談をして考えておくよ」
絆を深めるという意味でもそういった同盟名はあった方がいいのかもしれない。もちろん俺の存在は広めたくないので、さっきレインとアオイが言っていた名前は却下だ。
……というか、それがなくても俺の名前の入っているのは勘弁である。屋敷に戻ったら2人と一緒に考えてみよう。
「うん。それと、こっちはいずれでいいんだけれど、日本のお米をこっちの異世界で育てさせてくれると嬉しいな」
「米?」
「うん。実はこっちの世界のお米は日本の米とは味が全然違うんだよ」
「あっ、それは知ってる。こっちの米は日本の物より細長い種類なんだっけ?」
ユウカの屋敷では日本のお米を食べるようになったし、ちょうど王都へ来る時におにぎりをみんなで食べてきたところだ。
特におにぎりとして食べるのなら、日本のお米の方が断然おいしい。
「そうそう。個人的に僕が食べたいということもあるんだけれど、それを除いてもこの異世界に広めておきたいんだよね。やっぱり元日本人である祝福者にとってお米は特別なものだからさ」
「確かにそれはわかるわね」
「同意する」
レインの言葉にユウカとアオイが同意する。
俺の場合は異世界に来て一月くらいだったからある程度耐えられたけれど、何年もご飯が食べられなかったら相当きついんだろうなあ。
「過去に日本のお米を巡って祝福者同士で大きな争いがあったらしいよ。それこそ地形が変わるくらい大きな戦いだったらしいね」
「うわあ……」
そういえば前に固有スキルを持った祝福者同士の争いでできた谷とかがあると聞いたけれど、もしかしてそれのことか?
そんなことで……いや、くだらない理由と言うのはちょっと早計か。日本人にとって米はそれくらい大事なものだしな。
「今後祝福者によるそういった争いが起きないようにしておきたいんだよね。僕も一応この国の王族の一員だし、この国も結構好きだからさ。もちろんカケルくんの存在は確実にバレないようにするよ。どちらにしてもだいぶ時間のかかる計画だから、頭の片隅にでも置いておいてくれると嬉しいな」
「ああ、わかった」
お米を作るのはだいぶ時間がかかるはずだ。田んぼを作るのは魔法や魔道具のあるこの世界なら早くできるかもしれないけれど、収穫まで1年近くかかる気がする。そしてそこから普及させるのにはかなり時間がかかるだろうし、確かに今すぐ考えるような話でもなさそうだ。
米か、米の種や苗とかどこに売っているんだろうな? それと米作りの本とかも一緒に持ってきてあげた方が喜ばれそうだ。米作りはかなり専門的な知識がいると聞いたことがある。
……というか、今聞き捨てならないことを言っていなかったか?
「過去に日本のお米が持ち込まれていたことがあった……?」
「その話は初めて聞いたわね。カケルと同じような固有スキルを持っていた祝福者がいるの?」
そう、それだ! アオイとユウカの言う通り、日本の物を持ちこめる固有スキルを持った祝福者が俺の他にもいるのか。
「ああ、今はいないと思うよ。そうだね、これまで僕が調べた祝福者や固有スキルの法則についてもみんなと共有しておこうかな。これまで国の諜報部を使って祝福者を調べたのに加えて、過去の祝福者も調べていたんだ。王族という立場もあって、そういった情報を集めることは容易だったからね」
どうやらレインは今の祝福者だけでなく、過去の祝福者についても調べていたらしい。
そういえば俺はこの異世界の祝福者のことについては転移者と転生者がいて、転生には2つ種類があることくらいしか知らない。
他にどんな法則があるのだろう?




