第34話 忠誠の宣誓
「カケル様、我、レイン=オライオンはあなた様の忠実な僕となったことをここに宣言します! この命、カケル様のためにいかようにもお使いください!」
「「「………………」」」
おいしい昼食をいただき、再びレインさんの部屋へと戻って人払いを行ったあと、いきなりレインさんが俺の前に片膝をつき、自身の右腕に身に着けていた高価そうな赤い宝石の付いた腕輪を掲げるように差し出してきた。
……うん、さすがに3回目ともなると、俺も慣れてきたぞ。
「ええ~と、王族であるレインさんにそうやって畏まられたり、様付けされたりするとすごく目立つし面倒ごとになりそうだから、さっきみたいに普通に接してくれるとありがたいんだけれど」
「……それがカケルくんの望みであるなら従うよ。カケルくんのおかげで僕は前世でずっと心残りだった物語に終止符を打つことができたんだ。本当にありがとう!」
「それはよかったよ」
晴れ晴れとした笑顔で俺にお礼を言ってくるレインさん。その様子を見ると、先ほど渡した漫画の最終巻には満足してくれたようだ。
ただ、すごく大袈裟に言っているけれど、漫画を買ってきただけなんだよなあ。ユウカやアオイがとても重い未練を残していたこともあって、あまり大きなことをしたという実感がない。
いや、もちろん漫画を完結巻まで読めるということがすごくありがたいことであることはよくわかるが……。
「ちなみにその誓いみたいなポーズはこっちの異世界で流行ってたりするのかな?」
「そうか、カケルくんは異世界に来てからまだそれほど経っていないんだっけ。これは『忠誠の宣誓』というものだよ。自身が持つ武器や一番大切にしているものを主君となる者に捧げ、その者に生涯の忠誠を誓うという儀式なんだ。こっちの世界だと騎士がお姫様に剣を捧げたりして、お伽話とかによく出てくるんだ」
「生涯の忠誠……」
ちらっと両隣にいるユウカとアオイに視線を送ると、ふっと視線を外される。やっぱりみんなの謎の宣言はこっちの世界では意味があったらしい。
だけど一生の忠誠とか聞いていないぞ……。いや、いくらなんでも、さすがにお伽話の話だよな?
「ええ~と、その忠誠は置いておいて、今後何かあった時は協力してくれるという認識でいいのかな?」
「もちろん! カケルくんに降りかかる火の粉は僕が持ちうる王族の全権力を持って排除することを誓うよ! 他にも必要な物があれば何でも言ってね、王族はお金や人脈だけは相当なものがあるからさ。だからね、今後ともどうか僕に日本の物をお与えください!」
「「「………………」」」
すがすがしいくらい自分の欲望に忠実だな……。まあ、俺としても、王族の権限を使わせてもらえるのならとてもありがたい。
それにレインさんの固有スキルは戦闘には向かないけれど、使い方によってはすごく便利だ。聞くところによると、自身だけでなく他人への悪意まで察知することができるらしいので、祝福者と話し合う場に同席してもらえば、その祝福者がこちらに悪意を持っているかを確認してもらうことができる。
間違いなく味方であれば頼もしい固有スキルだ。ユウカとアオイにも先ほど話し合って彼を仲間にすることが問題ないことは確認している。
「了解だよ。今後ともよろしく」
無事にレインさんと同盟を結び、今後のことについてを話し合った。
まず漫画を購入する資金についてだが、現状これは俺がフリーマーケットで調達するしかないので、それは俺が行う。その代わりに日本のフリーマーケットで販売する商品はレインさんに用意してもらうことになった。
参考までに前回俺たちが用意して、売れ行きのよかった商品を伝えておき、明日には用意してくれるらしい。俺がフリーマーケットで販売したり、漫画を購入してくる手間の分、その日本のお金で俺たちが必要な物を買っていいそうだ。異世界で市場を回って売れそうな商品を見て回るのも楽しくはあるけれど、だいぶ時間がかかるから助かる。
「う~ん、やっぱりみんなで王都に住んだりしない? 安全に暮らせる広い屋敷を用意するんだけれどなあ」
「必要ないわ。王都だと人が多いぶん、面倒事や危険も多いからね」
「ま、魔道具があれば安全性は問題ない」
そしてレインさんから、王都へ移住してこないかという提案があった。王城近くに屋敷を用意するからと、だいぶ本気の提案だったが、その目的は日本で購入した物をより早く楽しみたいだけだろう。
みんなはこの提案を断った。アオイが人の多いところが苦手というのもあるけれど、正直に言うと俺も王都で暮らすにはちょっと窮屈なイメージがある。観光をする分には楽しいけれど、長い間暮らすには普通の街がいいかな。東京の中心地に住みたいかと言われたら微妙なのと一緒かもしれない。
「ベルリアの街までマジックバッグを持たせてたった2日で往復できるわけだし、当分はそれでいいかな。それにしても、魔物を使って配送をするなんてさすが異世界だよ」
今後はマジックバッグにフリーマーケットで販売する商品を入れてこちらへ送ってもらい、日本の漫画を入れて王城へ返すという方法をとることになった。スレイプニルの馬車でも片道2日かかる王都への道のりを空を飛ぶ鳥型の魔物のおかげでたった1日、2日で往復できるのはすごい。
冒険者ギルドマスターに例の依頼書を送ったのもそれを利用したらしい。道理で連絡が早かったわけだよ。
「仕方ないかあ。でも、王都に住みたくなったらいつでも言ってね」
「その時は相談させてもらうよ。そういえばレインさんに聞きたいことがあるんだ。さっき祝福者の情報を集めているって言っていたけれど、ユウカやアオイみたいに日本に未練があって、帰る方法を探している祝福者はいるの?」




