第33話 豪華絢爛な料理
いつものように日本帰還の固有スキルを使って日本へ戻る。アオイが作ってくれた虚無のローブを着ることによって帰還時に人に見られる可能性がグンと減ったので、いつもの山の中ではなく、人が少ない公園の隅へ移動するようにしたけれど、問題ないみたいだ。山から駅まで移動するのも地味に時間がかかっていたから助かる。
人がいないことを確認して虚無のローブを脱いでマジックバッグに収納し、駅まで移動する。レインさんが希望している漫画は古いものが多く、近くの小さな本屋にはなさそうなので、電車を使って大きな本屋へと移動した。
「ユウカからのメールは送信オッケー。権藤の方は……まだ新しい情報が出てくるのか……」
電車で移動している最中にユウカが書いて保存したおいた家族あてのメールを送信し、ご家族からのメールを受信して保存する。それとは別に俺やアオイからも先日作ってもらったおにぎりがおいしかったので、メールでお礼を伝えておいた。
もちろんユウカとアオイがおいしそうにおにぎりを食べている動画も添付してある。前にご家族にアオイのことはユウカの友達として紹介していて、エルフの容姿をした彼女の姿を動画で見て、春華ちゃんが一番興奮していたっけ。やはりリアルなエルフを見ると驚くよな。
そしてアオイの元上司である権藤についてはこいつのパワハラとセクハラで退職した元社員のインタビュー記事が出ていた。新しい燃料が投下されて、まだネットの方はにぎわっている。……いったいどれだけこいつの被害者がいるんだろうな?
「よし、こんなものか」
書店で本を5000円分ほど購入する。有名作は古くても売っているが、すでに書店に置いていない作品も多かったので、ない物は除いてリストの上から順に選んでいった。
だけど毎回これをやるのは結構大変だし、店にない漫画も多かった。最近は漫画の大半を電子で購入できるようになっているし、そっちを検討してみてもいいかもしれない。
ただ、身分証のない俺にはネット契約やクレジットカードで購入ができないので、またユウカの実家を頼るのは申し訳ないし、一度帰って相談してみるとするか。
「ただいま」
「おかえりなさい! ど、どうだった?」
王城へ帰ってくると、日本へ移動する時と同じでユウカとアオイが両隣におり、正面にはレインさんがいる。
俺が帰ってくるなり、こちらへ詰め寄って来るレインさん。
「買えなかった作品も多かったけれど、ある程度は購入できたよ。はい、どうぞ」
購入してきた漫画をマジックバッグから取り出す。
昔は400円くらいだった少年漫画が今は6〜700円くらいだからなあ。だいぶ物価が上昇していることもあって、5000円で8冊くらいしか買えなかった。
「うわあああ! これだよ、これ! この最終巻をこれまでどれほど望んでいたことか……」
「そ、それはよかった……」
大きな声を上げ、俺が渡した漫画を胸元へ抱え込み、涙を流すレインさん。
少し大袈裟かと思っていたけれど、長年祝福者を調べ上げて、ずっとその漫画の最終巻を望んでいたのだろう。
「……昨日の宿の料理も本当においしかったけれど、まさかその上があるとは驚いたよ」
「悔しいけれど、やっぱり本職の人が作った料理はおいしいわね。一品一品に手のかけ方が違うわ」
「こんなにおいしい料理は初めて食べた」
第四王子であるレインさんの部屋から場所を移動して、とても広い部屋へ案内された。まだ昼だというのに、豪華絢爛な料理がテーブルに並んでいる。
この料理はレインさんが用意してくれたものだ。昨日の高級宿の料理もとてもおいしかったが、まさかそれをたった1日で更新してくるとは思ってもいなかったぞ。異世界の食材もおいしいけれど、ユウカの言う通り料理人の腕もすごいのだろう。
ちなみにレインさん本人はというと、昼食を食べる時間も惜しんで、自室で購入してきた漫画を読んでいる最中だ。
「あの様子だと数日は王都に滞在することになりそうかな」
「そうね。彼は王都から離れることができないようだし、今後はマジックバッグを使って例の物を運ぶとしても、フリーマーケットで売る物を用意するのを待たないといけなそうね」
さっき日本へ戻った時、ついでに明日のフリーマーケットの予約もしてきた。彼が用意していたリストに書いてあった漫画のほとんどはまだ購入できていないし、帰るのはもう少しだけ日本のお金を稼いで漫画を購入してからになりそうだ。
ユウカの言う通り、レインさんは王都から動けないようだし、今後はマジックバッグに漫画を入れ、向こうはフリーマーケットで売れそうな物を入れて往復する感じになるかもしれない。まあ、それで王族からの庇護と国の諜報部を使わせてもらえるのなら安いものだ。
「そういえばアオイは例の剣スタのグッズとかは買わなくて大丈夫? ある程度余裕もできそうだし、そういった娯楽の物を買う余裕もできそうだよ」
「確かに前世ではあのゲームにはまっていましたが、今は推し変したので大丈夫です!」
「推し変……? まあ、なにほしい物があったら言ってね」
「はい!」
よく分からないけれど、とりあえず今は必要ないみたいだ。そういえば俺も昔読んでいた漫画の続きを買ってみるかな。
さて、昼食を終えたら、今後のことについてレインさんと改めて話し合う予定だ。今後ともいい関係になれればいいのだが。




