第30話 第四王子の固有スキル
※すみません、昨日の29話につきまして、改稿前の物を投稿してしまいました!
昨日の19時30分より前にご覧になってくれた読者様はお手数ですが前話から読見直していただけると嬉しいですm(_ _)m
「「………………」」
漫画について熱く語るレインさん。確かに俺も社畜になる前は漫画やゲームは好きだったけれど、そこまでの未練はなかった気がする。
「……す、少し気持ちはわかるかも」
どうやら横にいるアオイには彼の気持ちが少しわかるらしい。
まあ、娯楽が少ない世界なのは確かにそうなのかも。これまでは生きることに精一杯であまり考えたことがなかったな。
「リストもずっと前から作っていたんだよ! 特にこの漫画は発売日の一週間前に転生してしまって、どれほど悔しかったことか……。普段はコミック派だった僕だけれど、この時だけは雑誌で読んでおくべきだったと、人生で一番後悔したよ!」
紙に書かれたリストには昔の漫画のタイトル名がずらりと並んでいた。この異世界と日本の1日の時間が同じであることは実際に確認しているし、これまで集めた情報によると転生や転移する時間も日本の時間とリンクしている。
なるほど、レインさんが転生したころだと、このあたりの漫画がリアルタイムで連載していたのか。すでに完結している漫画も結構あるな。
……それにしても、もうちょっと他に後悔したことはなかったのだろうか?
「こ、この漫画は神作。最初のアニメ版が先に完結したけれど、それとは違う最高のラストだった!」
「マジで! やっぱりアニメももう一回みたいなあ! それに映画版は賛否両論だったけれど、僕は好きだったからもう一回見たいんだよ! ああ、そしてなによりその最終巻が見たい!」
……アオイもその漫画に随分と詳しいな。
そう言われてみると、確かに俺も大好きな漫画の完結巻直前で死んだら、かなり未練が残るかもしれない。
「カケルくん、いや、カケル様! お金なら100倍払うし、僕にできることならなんでもします! だからどうか僕にこの漫画をお与えください! 可能ならアニメとゲームもよろしくお願いします!」
「「「………………」」」
そう言いながら華麗な土下座を決めるレインさん。……王族として、それでいいのだろうか?
まあ、思ったよりも深刻な心残りじゃなくてほっとした。よく考えたら、ユウカとアオイみたいに、あそこまで重い心残りがある人はそこまでいるわけじゃないか。これなら2人と相談する必要もないだろう。
「わかった。ただし、条件がいくつかある」
「うん、なんでも言ってよ! お金でも欲しい物でも、第四王子の権限を使ってなんでもするよ!」
……職権乱用とはいつどこの世界でもあるようだな。
ユウカとアオイのように、俺のことを他言しないことと、なにかあったら協力することを条件にしよう。それとレインさんの固有スキルも聞いておきたい。
「まずはレインさんのことを教えてほしい。固有スキルも教えてくれ」
「うん、いいよ。質問があれば何でも聞いてね。僕の日本での本名は荒木健司、39歳でトラックに引かれてしまって、気付いたらこの異世界に転生していたんだ。このオライオン国の第四王子として生を受けて、今年で16年になる。僕が転生者であることは家族と親しい者にだけ伝えているよ」
どうやら彼が転生者であることを一部の者は知っているらしい。
「カケルくんたちは知らないかもしれないけれど、こっちの世界だと子供からの転生者は死産する際に母親の身に宿るものだから、天からの祝福とされているんだ。僕は8歳ごろに両親に伝えたけれど、みんな普通に僕を受け入れてくれたっけ。まあ、そもそも王族だと家族の縁自体がだいぶ薄いというのもあると思うけれど」
「なるほど……」
……そうか、俺やアオイのように新たな身体に再構成されて転生するのとは異なり、レインさんにはこちらの世界に家族がいるのか。確かに自分が転生者であることを両親に伝えるかは悩むところである。
祝福者の多いこの異世界だからこそある程度受け入れられてるのかもしれないが、それでも受け入れられない親も多いだろう。もしかすると、親にも言わないのが普通なのかもしれない。
そしてケンジさん、もといレインさんは生まれてから16年間こちらの異世界で生きてきたというわけか。前世は俺より一回り年上で、こっちの世界に来たのは16年も先輩だが、今の身体の年齢は俺が少し上っぽい。……転生者と転移者の年齢関係は難しいな。まあ、だからこそ俺も含めてみんな年齢のことにはあまり触れていないのだろう。
それにしても、トラックに引かれて転生とはこれまたベタな……。
「僕の固有スキルは『悪意察知』だよ。人や魔物などの生物からの悪意が可視化して見えるんだ」
「『悪意察知』……自身に迫る危険を察知するスキルということ?」
ユウカがレインさんに問う。
「いわゆる危機察知スキルと似ているけれど、若干違うんだ。悪意だから、身体に害を与える以外の悪だくみなんかもある程度察知できる。ぶっちゃけ、この固有スキルがあるから人を挟まずにカケルくんたちと話すことができたんだ。第四王子という立場だけで会ったこともない僕に悪意を持ってくる輩も多いから、今の僕や家族にとってはだいぶありがたい固有スキルだよ」
「なるほど……」
確かに王族には敵も多いだろう。攻撃能力はなさそうだけれど、便利そうなチートスキルだな。
「僕以外の悪意にも反応してくれるのはありがたいんだけれど、僕の視界内しか可視化できないから、奇襲なんかは防げないのが欠点だね」
そこも危機を察知するスキルとの違いというわけか。自身の身の安全ということだけを考えたら危機察知スキルの方が強そうかもしれない。
「……ま、待って。そ、それがあなたの固有スキルなら、どうやってカケル様のことを知ったの?」




