第28話 王城
「ふう~」
宿で豪華な朝食をいただき、宿まで迎えに来た馬車に乗って王城へと向かっている最中だ。王都へ来るまでのごつい馬車とは異なり、豪華な装飾のついたキラキラとした馬車である。きっと貴族用の馬車なのだろう。
緊張もそうだが、寝不足もあってだいぶ落ち着かない。
「大丈夫よ、カケルは私たちが守るから!」
「カケル様は命に代えても守る!」
「……うん、ありがとうね」
ちなみに寝不足なのは例の第四王子と謁見するからではない。
というのも、昨日の夜は王都の高級宿に泊まったわけだが、ユウカとアオイと一緒の部屋に泊まったのだ。一昨日の街では個室を3つ用意してもらっていて、俺が真ん中の部屋に泊まったのだが、昨日は大きな部屋に3人で泊まった。
さすがに俺も女性2人と同室に宿泊してなにも感じないほど男として枯れてはおらず、よく眠れなかったぞ……。
やはり同じ屋敷に暮らすのと、同じ部屋で寝るのは全然違う。ベッドが柔らかくてとても寝心地が良く、ベッドの間隔が広いのは助かった。2人がもっと近かったら一睡もできなかったに違いない……。
馬車が到着して降りると、そこには王都の中でどんな建物よりも大きな城が目に入る。城の周りには壁があり、門の入り口で検査を受けてから中へ入れてもらった。
今回はユウカとアオイが持っている刀と杖、俺が持っている護身用の魔道具1つ以外のマジックバッグなどは置いてきている。王城の中へ入るためにそれは必須らしい。
「おお~これはまた……」
「カケルの言いたいことはわかるわ」
「たぶん祝福者全員がこの城を見て同じことを思っている」
壁の中に入って城の全容が視界に入る。とても大きなレンガ造りの巨大な城で、正面にはここよりもさらに大きな門がある。青い円錐型の尖塔が何本も天に向かって伸び、その先には金色の装飾が付いている。気品のあるアーチ状の窓がいくつもあり、随所に美しい彫刻が施されていた。
……うん、日本の千葉県にある某テーマパークのお城とだいぶ似ている。てかこの王城、絶対に祝福者が建てただろ!
いや、もちろんあれよりも大きくて、歴史ある風格は漂っているけれど、どう見てもあの城に似ている。とても立派な城なんだけれど、どことなくガッカリ感があるのはもしかすると祝福者全員そうなのかもしれない……。
う~む、日本の文化の影響が異世界に出過ぎるのはちょっと問題があるかもしれない。
「こちらで少々お待ちくださいませ」
「はい」
鎧を着た騎士たちに案内してもらい、第四王子の部屋へと進む。謁見の間というのもあるらしいが、正式な王家からの依頼というわけではなく、第四王子個人の客人として招待されている。
本来であれば王族の者と謁見する際には武装をすべて解除しなければならないようだが、俺たちは許された。武器の所持の許可や自身の部屋へ招くなど、こちらの信用を得ようとしているのかもしれない。
「レイン様、ご客人をお連れいたしました」
「うむ、入れ」
騎士の者が扉をノックし、部屋の中に尋ねると若い男性の声による返答があった。
返答を聞いて騎士が扉を開け、部屋の中へ入る。さすが王族の部屋だけあって、とても豪勢な造りになっていた。その部屋の中心にはひとりの青年が立っている。
「ユウカ殿、アオイ殿、そしてカケル殿。この度は遠路はるばる王都まで来てくれたことに、心より感謝しよう」
このオライオン国の正当な王族血統者の証である光り輝く白銀色の髪と瞳。まるでアイドルか俳優のような整った顔立ち。
まだ15~16歳くらいの若き青年だが、どことなく風格と言うか、王族たる品格のようなものが感じられた。
「ユウカと申します。レイン=オライオン様、この度は拝謁の栄を賜り、恐悦至極に存じます」
「アオイと申します」
「カケルと申します」
ユウカに合わせて貴族用のお辞儀をする。相手が王族ということで、俺たちも街で購入してきた仮の正装をして、付け焼刃だが礼儀作法も学んできた。
レインさんが俺の名前を知っているかはわからなかったが、どちらにせよ王城へ上がる際に冒険者ギルドカードは控えられているので、自身の名を告げた。
「……ふむ、問題はなさそうだ。それでは皆は下がっていてくれ。我がいいと言うまで、この部屋へ入ることを禁じる」
「レ、レイン様、それは……」
「我の望んだことだ。何かあってもそなたたちに責任はない」
「承知いたしました」
そう言いながら騎士たちは部屋の外へ出ていく。この部屋には俺たち3人とレイン第四王子ひとりとなった。
「「「………………」」」
俺たちに緊張が走る。
騎士たちに席を外させたのは人払いのためかもしれないが、これでこの第四王子が祝福者の可能性が一気に高くなった。とはいえ、俺たちを油断させるための罠という可能性もゼロではないので一層用心しなければならない。
2人によると第四王子という人物の情報はほとんど出回っていないようだ。いったいどんな人なんだ?




