第27話 王都の街並み
「おおお~あれが王都か! すごく大きな城壁だ!」
馬車の窓からは巨大な石造りの城壁が見えた。30メートル級の巨大な壁がそびえ立ち、しかもそれが左右にどこまでも広がっている。昨日泊まった宿のあった街も大きな街だったけれど、それでも王都の城壁とは比べ物にならなかった。
近付いていくと、その壁の巨大さがより強調される。入り口には重厚な金属製の門、上部には大砲やバリスタなどの兵器などが設置されて、多くの兵士が王都を守っている。
おそらく城壁にはなんらかの魔法や魔道具が施されているのだろう。日本の知識と魔法が合わさるとすごいものだな……。
「王都はこの国で一番大きな街ですね。だから人も多くて怖い……」
「結局魔物も盗賊も出てこなかったわ……」
俺のテンションとは裏腹に、2人のテンションはだいぶ低かった。無事に王都まで到着できてほっとしたけれど、2人にとってはそれよりも別のことが気になっているようだ。まあ、余裕はありそうでとても頼もしい。
門の方へ行くと、厳重な警備の人たちが警備をしている。一般の人たちが通る門とは別に、偉い貴族などが通る門があり、俺たちはそちらを通っていく。
馬車の窓から見える王都の街並みはとても美しく、これまで通ってきた街よりもそれぞれの建物が大きく豪華な造りとなっており、等間隔に整えられていた。きっとこの王都はかなり計画的に作られてきたのだろう。
そのままスレイプニルの引く馬車は王都の街中を進み、より大きく豪華な建物が多い中心地へと進む。道を通る人も宝石の付いた首飾りや指輪などを多くはめた裕福そうな人も増えてきた。どうやら王都は中心地へ進むほど裕福な人たちが暮らしているらしい。
「す、すごく豪華な宿だね。それに部屋も広々しているし、美術品なんかも飾ってあるよ。これひとついくらするのか、あまり考えたくないな……」
馬車が到着した宿はとても立派な外装をしており、縦にも高い建物だった。祝福者の知識や魔法の力なんかもあるから、この世界の文明レベルでもこれだけすごい建物を建てられるのかもしれない。
案内された部屋はとても広く、上部にはシャンデリアのような形をした魔道具が部屋全体を照らしていた。元の世界でも高級ホテルのスイートルームとかはこんな感じなのかもしれない。
「だいぶ歓迎されているようね。謁見日が翌日なんて随分と早急だし、それほどカケルに頼みたいことがあるのかもしれないわ」
「先に自分の力を見せておいて、交渉を優位に進めさせようとしているのかも。第四王子とはいえ、王族の権限はかなり強いです」
「う、うん……」
2人にそう言われてしまうと緊張してくるな。
今日はもう日が暮れるということで、依頼人である第四王子との謁見は明日の午前中となった。普通であれば王族との謁見は王都に到着してから数日かかるものだが、その翌日に謁見できるというのはかなり稀らしい。
ユウカやアオイの言う通り、俺たちを歓迎しつつ、自身の力も見せてきているのかもしれない。どちらにしろ、明日の謁見が少し怖くある。
「こんな宿に泊まれる機会なんてもうないかもしれないし、せっかくなら楽しませてもらおう」
第四王子にどんな望みがあるのかはわからないが、それは今考えても仕方がない。こんな機会が次にあるかわからないことだし、この宿や王都を楽しもう。
第四王子からの依頼が無事に達成されたら、この王都を回ってもいいかもしれない。新しく訪れる場所を巡るのも楽しいものだ。
「うん、おいしい!」
「随分と手の込んだ料理。このスープにはいろいろな素材が使われている」
晩ご飯の時間となり、宿の人たちがおいしそうな料理の数々を運んできた。真っ白なクロスの敷かれた大きなテーブルに色とりどりの見たことのない料理が順番に並べられている。
……いや、一部は日本でも見たことのある料理だった。ただ、和洋折衷と統一感がなくバラバラで、それが異世界特有っぽい料理と混ざっていてもう何が何だか。しかし一流の宿らしく、味はどれも最高で、高級っぽい素材や香辛料などをふんだんに使っていた。
こっちのローストワイバーンのお肉はしっとりと柔らかく、旨みの濃縮された肉の味と絶妙な味のソースが見事な味のハーモニーを奏でていた。ローストビーフは食べたことがあるけれど、こっちの方が断然おいしい。冷たいよりも温かいロースト肉のほうがおいしいのか。
アオイの言うコンソメっぽいスープもすごく深い味わいだ。俺の舌ではなにがどう違うのか詳しく言えないけれど、きっと様々な高級食材に手間をかけて煮込んだものだろう。
「……さすがに高級宿の料理は一味違うわね。こっちの角煮のお肉はすごく柔らかい。どうやったらこんなに柔らかくできるのか聞いてみたいわね」
ユウカはというと、おいしい料理を楽しみつつもたまに料理を運んでくる人にレシピを聞いている。
いつも料理を褒めると嬉しそうにしているし、本当に料理が好きなんだろうなあ。ちなみにアオイは俺と同じで料理がほとんどできないので、屋敷ではユウカに任せきりで申し訳ない。
随分と高級な宿を楽しませてもらったけれど、スレイプニルの馬車も含めて過大すぎる歓迎だ。その分、明日第四王子になにを求められるのか怖いところだな……。




