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第26話 固有スキルの力


「いったいどうしたの?」


「すみません、前方に魔物の集団が見えたので、一度停車します。どうやら別の馬車が複数の魔物に襲われているようです」


 ユウカが客車の前方にある窓を開き、御者の男性に状況を確認する。客車の横にある窓から御者の人が指差す方向を見ると、確かに茶色い馬車の周辺に複数の灰色の物体が動いていた。


 なんだろう……俺の目ではそこまではっきりと見えないが、銀色のオオカミか何かか?


「このまま方向を変え、迂回して王都まで進もうと思っているのですが、いかがいたしましょう?」


「………………」


 御者の男性は冷酷な判断をあっさりと下す。この異世界では危険な魔物や盗賊なども存在し、自分の命が第一であるため、そういった判断もある意味では妥当である。ましてや、この御者の人は俺たちを安全に王都へ届けるために雇われているのだから、それも当然だ。


 とはいえ、元日本人の俺からしたら、こういった状況で人を見捨てたくない。


「私が行ってきます。ユウカ、カケル様をお願い」


「ええ、わかったわ」


 2人になんて言うか迷っていると、俺の様子を察してか、アオイが杖を持ち、馬車の外へ出ていこうとする。


「アオイ、気を付けて!」


「はい! たいした相手ではないので、ご安心を」


 そう言いながらアオイは馬車の外へ出て、飛行魔法を使って空を駆ける。


 地面にいる人や魔物からは決して触れることができない空高くから下にある馬車の方へと杖を掲げた。


 バリバリバリバリッ。


「なっ!?」


 激しく轟く巨大な音と共に、アオイの杖から放たれた複数の金色の雷柱が一瞬で地に降り注ぐ。あまりの速さゆえ、俺の目には閃光が降り注ぎ、銀色だった生物が真っ黒に焦げた物体に一瞬で切り替わるようにしか見えなかった。そしてそのまま黒くなった物体は完全に動きを停止する。


 アオイはそのまま馬車の方へ近付き、馬車に乗っていた人たちの様子を見て問題なかったのか、こちらへ戻って来た。あの数の魔物を相手にして、一切の悲鳴すらあげさせずに決着がついてしまったらしい……。


「問題なかったです。馬車に乗っている人も護衛の人も大きな怪我はないから、このまま進んで大丈夫」


「は、はい! 先へ進みます!」


 アオイが馬車へ戻ってきて御者の人にそう伝えると、スレイプニルが再び走り出し、馬車が進んでいく。


「さすがアオイね。しかもあれで中級魔法くらいでしょ?」


「ライトニングブラストという雷魔術。威力はそこそこだけれど、速度が速い。さすがにユウカみたいな達人レベルになるとそれでも遅いと思うけれど」


「確かにそうだけれど、剣士からしたらそれよりも飛行魔法が厄介なのよね……。足場を作る魔道具がないと厳しいわ」


「こっちも近距離用の対策はしているけれど、近距離特化のスキル持ちは厳しい」


 こ、これがチートな固有スキルを持った祝福者の戦闘なのか……。


 あまりにも圧倒的、あまりにも絶対的な力だ!


「すごい……すごいよ、アオイ!」


「カ、カケル様?」


 あまりの感動に、俺は思わずアオイの手を取る。


「あんなにすごい魔法を見たのは初めてだ! あれが本物の魔法なんだね! あんなにいた魔物がたったの一撃、しかも一瞬で動かなくなって、まったく見えなかったよ!」


 俺が最初に転生した街から出ずにずっと引きこもっていたというのはあるけれど、あの街で先ほどのような規模の魔法を使っている人は見たことがなかった。そもそも、こちらの異世界では魔法を使える人自体が非常に少ない。


 俺も冒険者ギルドで冒険者になる時、水晶のようなものに手を当てて魔力を測られたが、魔力はないと言われた。あの頃は転生してすぐだったこともあって、もしかしたら俺にもチートな魔力が……とか思っていただけに随分とがっかりしたものだ。


 実際に冒険者が使う魔法を見たことはあるけれど、バスケットボールくらいの火球や水球を出すくらいの規模だった。それに比べたら、さっきのアオイの魔法はまさにファンタジー世界の魔法という規模である。


「アオイが作った魔道具もすごかったし、あの魔法でも本気を出してないなら、全力の魔法は本当にすごいんだろうね! アオイが護衛をしてくれて本当に嬉しいよ。どんな魔物や盗賊が出てきても、これで安心だ!」


「こ、ここ、光栄です!!」


「……っ!」


 これまで魔道具や飛行魔法を見た時もすごいと思っていたけれど、やはり先ほどのような魔法こそ本物の魔法だ。今更ながら初めて固有スキルのすごさを目の当たりにしたぞ。


 アオイは顔を真っ赤にして照れている。こんなにすごい魔法を使えるのにあまり褒められ慣れてなかったりするのかな?


「アオイ、今度魔物や盗賊が出てきたら、私が対処するから!」


 なぜかユウカがすごくやる気になっている。


 そういえばユウカと街を歩いている時に強盗団と遭遇した際、ユウカが一瞬で拘束してくれたけれど、実際にそれを自分の目で見てはいなかった。


 剣聖の剣技を実際に見るのも楽しみだ。でも魔物や盗賊なんかは出てこなくていいのだけれど……。




 それ以降の旅路は順調に進む。


 無事に街へ辿り着き、俺が最初の街で泊まっていた宿とは比べ物にならないほど豪華な宿に泊まった。豪華な食事を食べ、広いお風呂にも入れて、心身ともに休むことができた。あまりにも快適過ぎたので、こうやって別の街を旅するのもいいなと思ってしまう。


 明日には王都に到着予定だが、はたして王都はどんな街で、第四王子はどんな人物なのだろうな?


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― 新着の感想 ―
アッサリと解決!でも、ヤキモチ焼かれてますよ!気づいて!カケルさんw もうすぐ王都!ドキドキ!
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