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第24話 両手に花


「お肉はたくさんあるから、野菜や魚を中心に買っていきたいわね」


「王城に入るから、ある程度しっかりした服もあったほうがいい」


「………………」


 3人で街の市場までやってきている。


 最近はいろいろとありすぎて全然来られなかったけれど、やはりこの街の市場は多くの人でにぎわい、道を歩くだけでもとても楽しい。ジャンルを問わずざっくばらんに並べられた様々な商品、元の世界では見たことのない魔物の素材や変な形をした野菜や果物など、どんな味がするのかすごく気になる。


 それはいいのだが……。


「やっぱり普通の外套を着て歩くんじゃ駄目かな? 少し歩きにくいというか、恥ずかしいというか……」


「第四皇子のこともあるし、いつどこで誰が見ているかもわからないわ。こっちの方がより安全よ」


「ユ、ユウカは黒髪黒目ですごく目立つし、エルフという種族もそれと同じくらい目立ってしまいます。が、外套が脱げたり、はぐれたりしてしまう可能性を考えると、こっちの方が合理的です」


「な、なるほど……」


 2人の言う通り、第四皇子に俺の存在がバレてしまったことだし、今まで以上に気を付けなければならない。それに2人はすごく目立つし、人が集まって騒ぎになってはぐれてしまうと、かなりまずい状況になる。護身用の魔道具をいろいろと借りているが、俺自身の戦闘能力はゼロだからな。


 ……とはいえ、今のように2人と()()()()()()()街中を歩くのはすごく恥ずかしい。これまで女性と手を繋いで歩いたことなんてないので、ものすごくドキドキする。顔が赤くなっていたり、手汗とか変に思われていないか不安になる……。


 ユウカとアオイは気にならないのかなと思っていたけれど、2人とも最初は随分とぎこちなかった気がする。特にアオイは今でも顔が真っ赤だ。エルフは肌が人族よりも白いから、余計に赤く見えるのかもしれない。


「そ、それにしてもこの『虚無のローブ』はすごいね。日本でもそうだったけれど、本当に周囲の人から認識されなくなったよ」


 恥ずかしさを紛らわすようにそう呟く。


 俺たち三人が身に着けている灰色のローブ。これはアオイが作った魔道具で、これを着た者は周囲の者からの認識力が限りなく落ちるというとんでもない代物だ。俺がアオイの会社に忍び込んだ時に使っていたのと同じ物だな。姿だけでなく声までも認識されなくなるのだからすごい。


 ただ、これを3人で着てしまうとお互いまで認識できなくなってしまうので、3人で仲良く手を繋いでいるといった状況である。この魔道具は認識を低下させているだけなので、少しでも触れてそこにあると認識してしまえば姿が見えてしまう。なので手を繋いで歩けばお互いが認識できるといった具合だ。


「よ、予備も作っておいてよかった」


「……うん、助かったよ」


 ちなみになぜアオイがこのような魔道具を作ったかというと、日本へ戻ったあとに証拠なく例の上司を……。うん、この魔道具がそういった目的で使われなかったようで、本当によかったよ。


 まあ、アオイの気持ちを考えれば、そういった魔道具を作ってしまう気持ちもわかるというものだ。ちなみにそういった魔道具を他にも数多く作ったらしい。飲んだ相手のアレを●●●してしまう魔法薬や、触れた部分が×××する呪いの魔道具などなど……。ちょっと怖かったので、それ以上は聞けなかったぞ……。


 例の上司にそれを使うこともできたが、申し訳ないけれど物理的に危害を加えるのは躊躇われてしまった。やはりどんな道具も使い方次第だ。


 この虚無のマントも決して悪用してはならない! ……いや、女湯を覗くことを考えてしまったことだけはどうか許してほしい。男たるもの、どうしても無気配や透明化というものには憧れてしまうものなのだ。か、考えるだけで、実際に使ったりはしないから!


「……というか、ユウカは『剣聖』の固有スキルがあれば気配を見極めることができるのだから、カケル様と手を繋ぐ必要はないのに」


「わ、私は大丈夫だけれど、カケルに私の声が届かないし、姿が見えないじゃない。その状態ではぐれてしまったら、それこそ一大事よ。アオイこそ、『魔導王』ならこういった魔道具に耐性があるんじゃないの?」


「あ、あるにはあるけれど、カケル様から見えなくなるのは同じ」


 どうやらとても便利な魔道具なようだが、強い人には見破られてしまうらしい。固有スキル持ちの祝福者もどこにいるのかわからないし、やはり周囲の警戒はした方がいいみたいだ。


「そ、それにこの人混みの中ではぐれて、大勢に囲まれたら本当にきつい……」


「大人しく屋敷で待っていた方が良かったじゃない……」


 自分で言ったことを想像してか、少し青ざめた様子のアオイ。そういえば、ユウカと俺にはもう普通に話せるようになったみたいだけれど、彼女はだいぶ人見知りする性格だったか。容姿が変わってチートな固有スキルを得ても前世の性格はそこまで変わらないものなのかもしれない。


 そのあとは王都へ行くための買い物をして明日に備える。半日くらいだけだったが、2人と一緒に異世界の市場で買い物をするのはとても楽しかった。文字通り両手に花状態で、運を使い果たして本当に王都まで辿り着けるのかは若干不安だが……。


 初めて訪れる王都という街にも興味があるし、第四皇子、あるいはその近しい者が俺に望んでいることはなんなのだろうな?


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― 新着の感想 ―
両手に花でお買い物!買い物の時はこの世界では目立たないカケルさんがフード外して会計したのかな?にしても…恐ろしい魔道具が…w使う時がこないと良いですがw犯罪者相手とか、盗賊相手だったら躊躇無く使えそう…
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