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第23話 王都へ向けて


「うん、確かにそんな気がするね」


 改めて第四皇子から冒険者ギルドへ届けられた依頼内容を精査してみる。


 もうひとりの祝福者である俺のことが書いてあったことには非常に驚いた。手紙だと俺の固有スキルの内容については触れられていないが、どうやら第四皇子の願いは日本のことに関連していることが察せられた。


 詳細を書いていないのは手紙の内容を他の者に見られた時の配慮だろう。冒険者ギルドマスターのみに依頼内容を伝え、彼にも守秘義務を課しているそうだ。


「……依頼としては私への指名依頼になっているけれど、実質的にはカケルを王都まで護衛して、カケルに日本に関連する何かをお願いしたいみたいね」


「なるほど。冒険者ギルドを通した方が、ちゃんと依頼料が支払われる保証にもなるし、王族から直接来いと言われるよりは多少安心できるわけか」


 一応その第四皇子とやらはこちらに様々な配慮をしている。それに俺ひとりで来いとか言われたら100パーセント逃げるが、ユウカとアオイが同席していいというのならだいぶ安心できる。


「もちろん罠の可能性もある。とはいえ、王城に祝福者を何人も集めて待ち伏せなんて目立つことをする可能性は低いと思うけれど」


「確かにね。それに罠ならこんな依頼を送ってくる必要もなく、この屋敷に奇襲してくる方がうまくいく可能性は高い。すぐに王都へ来いと強制しているわけじゃないし、報酬の金額も莫大だし、向こうは平和的に願いを叶えてほしいと伝えてきているみたいだ」


 この依頼を断ってもペナルティなどはないとも書かれており、報酬金額は俺が見たこともないような桁の数だ。祝福者同士で敵対するというよりも協力しようとする意図が見えるし、俺の考えていることにも一致している。


「……もちろんカケルは絶対に私が守るけれど、危険はゼロじゃないわ。断ってもいいと思うけれど、カケルはどうしたい?」


「私もカケル様を全力で守ります! すべてはカケル様の望むままに」


 2人も危険は少ないと判断しているようで、俺の意思を尊重してくれるようだ。


 確かに危険もゼロではないけれど、協力者を増やせるかもしれない。そしてなにより——


「もしかすると、その人はユウカやアオイさんみたいに日本にとても大きな未練が残っているのかもしれない。もしも俺の固有スキルでそれを解決できるなら、力になってあげたいんだ。みんなにも危険があるかもしれないけれど、行きたいと思う」


「カケル……」


「カケル様……」


 最初は俺の心残りのように親に会いたいと思う人がいるくらいだと思っていた。だけどその中にはユウカやアオイのように、この異世界に来てもずっと心の底から苦しんでいる人がいることを知った。


 日本帰還でそういった人たちの力になることができるのならば、できる限り力を貸してあげたいと俺は思う。




「いろいろと助かりました。ありがとうございます」


「とんでもないです! なにか困ったことがありましたら、またいつでもおっしゃってくださいね」


「カケルお兄さん、またね!」


「うん、また来ます」


 ユウカの母親と妹の春華ちゃんに挨拶をして家を出る。今日は平日だから父親は仕事中らしい。先日アオイさんの件で借りていたパソコンを返してお礼を伝え、少しの間こっちには来られないことを伝えた。


 みんなと相談をして、明日王都へ向けて出発することになった。少なくとも王都への移動中は日本帰還の固有スキルは使用しない予定だ。今度来る時は王都でのお土産を買ってくるとしよう。


「ただいま。明日から出掛けるって伝えたら、みんなにっておにぎりをもらったよ。あと、春華ちゃんもリハビリが進んで、松葉づえがあれば歩けるようになったってさ」


「本当! ありがとう、カケル!」


 撮ってきた動画の入ったスマホをユウカへ渡す。


 もらったおにぎりはマジックバッグに保存してある。このマジックバッグは中に物を入れた時点で時が止まるので、明日からの移動中にいただくとしよう。


 おにぎりもそれぞれの家庭によって異なるものだ。うちだと昆布が多く、たまに入っているマグロの佃煮のおにぎりが大好きだったな。……俺も久しぶりに実家の味が恋しくなってきたぞ。少しだけ転移者であるユウカが羨ましく感じてしまった。


「さっき冒険者ギルドに行って、ギルドマスターに王都へ向かうと伝えてきたわ。明日の朝に出発する準備を整えてくれるみたい」


「ありがとう、助かるよ」


 ユウカには冒険者ギルドへ行って、第四皇子からの依頼を受けると伝えてもらった。移動の準備も向こうで整えてくれるらしい。


 ちなみにアオイの飛行魔法で3人を飛ばせることも可能らしいのだが、3人だとそれほど長距離は無理なようだ。


「それと必要そうな物を日本で購入してきたよ。あとはこっちの市場へ買い物に行こうか」


「服や食材なんかが必要ですね」


 本来であれば屋敷の部屋に必要な小物なんかを買いに行く予定だったわけだが、急遽王都へ出発する話になったため、先にそちらに必要な物を買いに行く。


 いきなり慌ただしくなってしまったが、せめて今日一日くらいはのんびりと市場を楽しむとしよう。


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