第22話 突然の依頼
「……冒険者ギルドの人かしら? カケルとアオイはそっちの部屋で待ってて」
「わかった」
せっかく市場へ行こうとしていたところだが、突然の来訪者があった。ユウカはSランク冒険者で、緊急依頼なんかがある時はギルドの職員が伝えに来てくれるらしい。
ユウカの言う通り、一旦俺とアオイは玄関横の部屋で待っていることになった。
「おう、いきなり屋敷まで押しかけて悪いな」
ユウカが訪問者を迎えると、大きな声が屋敷の中に響き渡る。随分と地声の大きな男性のようだ。
「……冒険者ギルドマスターが直々に来るなんて、よっぽど緊急の用件なのかしら?」
続けてユウカの小さな声が聞こえてくる。どうやらこの大きな声の持ち主は冒険者ギルドマスターらしい。
冒険者ギルドマスターとはその街の冒険者支部を任されている一番偉い人だ。ユウカの言う通り、そんな偉い人が来るということはよっぽど緊急の用件なのかもしれない。
「ああ、緊急と言えば緊急の依頼なんだが……」
「冒険者ギルドには伝えたけれど、私はしばらく冒険者を休業してのんびり過ごすつもりなの。可能なら他の冒険者に回してくれないかしら?」
「確かにそう聞いているが、今回のはSランク冒険者であるユウカへの指名依頼だ。それに俺にはまったく意味が分からない依頼でな。依頼の内容は俺しか見てはならず、直接俺からユウカへ伝えてほしいんだってよ。しかも依頼人ってのがこれまた……いったいどこで知り合ったんだよ?」
横でこっそり聞き耳を立てる形になってしまった俺にもよく分からない流れだな。
とりあえず冒険者ギルドマスターを動かせるくらいだから、よっぽどお偉いさんかお金持ちからの依頼なのか。Sランク冒険者となると、そういった依頼人からの指名依頼が入るらしい。
「……心当たりがまったくないわね。その依頼人は誰なの?」
「このオライオン国の第四皇子、レイン=オライオン様だ。王都にいる皇族からの依頼なんて初めてのことだぞ」
お、皇子様!?
こっちの世界には王制の国も多く、俺たちがいるこのオライオン国もそのひとつだ。まさか王族から依頼が入るなんて、ユウカは本当にすごいんだな……。
「……第四皇子。私は一度も会ったことがないんだけれど、本当に私への依頼なの?」
「ああ、そうだ。依頼内容も俺だけが確認したのだが、それも意味が分からなくてな。……ひとつ聞きたいんだが、ここに【賢者】であるアオイ殿が来ているのか?」
「っ!?」
突然アオイの名前が出てきたことにユウカが驚く。俺の隣にいるアオイの方を見ると、首を横に振った。どうやらアオイもなぜ冒険者ギルドマスターそのことを知っているのかわからないようだ。
この街まで飛行魔法で飛んできたと言っていたから、それを誰かが見ていたのだろうか?
「やはりいるのか。ふ~む、そうなるとこれは……」
「どうしてギルドマスターはアオイがここにいることを知っているの?」
「いや、俺も知らなかったが、この依頼に書いてあったんだ。とりあえず第四皇子レイン様からの依頼内容のさわりの部分を伝えるぞ。『Sランク冒険者ユウカ殿、賢者アオイ殿、そしてもうひとりの祝福者殿に願う。どうか王都へ来て、我の望みをかなえてほしい』」
「……一体どういうことなの?」
屋敷の居間にはユウカ、アオイ、俺の3人がいる。
あのあとギルドマスターは第四皇子様からの依頼の手紙をユウカに渡して帰っていった。手紙の内容についてギルドマスターはまったく知らず、アオイだけでなく、もうひとりの祝福者——つまりは俺がここにいることさえ知らなかったらしい。
「普通に考えると、その第四皇子、あるいはその付近にいる者が祝福者で、固有スキルの力によってカケル様の存在を知ったことになる」
「うん、俺もその推測が正しいと思う」
俺の固有スキルはこの2人にしか見せていないし、この屋敷の外に出る時は極力姿を隠していた。転移者の証である黒髪黒目でもないし、まだこの街に来たばかりで俺の情報が洩れるわけがない。
「俺だけでなくアオイがここにいることも知っていたし、『予知夢』や『遠視』みたいな固有スキルを持っている可能性が高いのかな」
「そうね、そうでもなければ説明がつかないわ」
アオイに確認したけれど、特定の人を探したり、はるか遠方を見るような魔法は存在しないらしい。そうなると祝福者の固有スキルである可能性が高い。
まったく、この異世界にはチートな固有スキルを持った祝福者が多すぎるぞ……。まあ、ここに3人も祝福者がいる時点で俺が言うなという話だが。
「それにこの依頼内容だと、カケル様の存在だけでなく、固有スキルもある程度気付いている可能性が高い」




