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第21話 神様


「まずは顔を上げて、アオイさん。ええ~と、今回の件でそこまでしてもらうつもりはないよ。俺のことを他の人には言わないでほしいのと、もしも俺が他の祝福者から狙われた時は力になってほしいだけなんだけれど……」


「もちろんカケル様のことは誰にも他言しません! ですが、どうか私をこのままカケル様のおそばに置いてください!」


「……うん、まずは様付けを止めてほしいかな」


 跪いている小柄なエルフの少女に様付けで呼ばせるとか、どんなプレイだよと思ってしまう。


「私はこの世界に転生してからずっと……ずっと苦しかったです。あの男が今ものうのうと生きていて、大切な家族が苦しんでいることを考えると、夜はまともに眠れず、どんな景色を見ても心は踊らず、何を食べてもおいしいと感じられなかった」


 ……冤罪をかけられた状態での転生。それは俺が想像していたものよりも、はるかに辛い状況だったのかもしれない。この4年間、彼女はそんな中でずっと苦しんできたんだな。


「カケル様が両親の無事を確認してくれて、あの男を地獄の底に叩き落してくれた時、比喩ではなく本当に私は生まれ変わりました。初めてこの世界に彩りが感じられ、ご飯がおいしいと感じることができました。これもすべてカケル様のおかげです! カケル様は私のすべてを救ってくださった推しを越えた神様です!」


「……う、うん?」


 とりあえず彼女が救われたことは本当に良かった。せっかく第二の人生をもらったわけだし、この異世界を楽しめるのは良いことだ。


 ……だけど推しを越えた神って何だろう? 推しって言うと、例の剣スタというゲームのことだろうか?


「本当によかったよ。でも、せっかく生まれ変わったのなら、改めてこの異世界でアオイさんの自由に生きてほしいかな」


「それなら、カケル様のおそばに置いてください!」


「………………」


 駄目だ……。よくわからないけれど、アオイさんのなんらかの覚悟が決まってしまったらしい。


 様付けを止めるつもりもなさそうだ。アオイさんは内向的な性格みたいだけれど、復讐に対する執念はすごかったし、意志はすごく強そうなんだよな……。


「アオイ、ちょっと落ち着きなさい。きっとカケルはそんなことを望んであなたを助けたわけじゃないわ」


「うん、ユウカの言う通りだよ」


 俺が危なくなった時には助けてほしいけれど、アオイさんの一生を縛るつもりなんてない。せっかく前世の因縁から解放されたのだから、俺の恩とかに縛られずに自由にこの異世界を楽しんでほしい。


「カケルの護衛は私に任せて、アオイは自由に生きていいのよ」


「………………」


 ユウカの言う通りなのだけれど、なぜかアオイさんがユウカを睨んでいる。


 おかしいな、昨日まで2人はそれほど仲が悪くなさそうだったのに……。


「どうかお願いします! もしもカケル様が嫌で、ご迷惑になるのなら諦めますが……」


 突然泣きそうな表情を浮かべるアオイさん。もちろん彼女が嫌なわけでも迷惑なわけでもないし、これ以上何を言っても彼女の意思は変わらなそうだ。


「……わかったよ。だけど、ずっとじゃないからね。アオイさんがやりたいことを見つけたらそれを優先してほしい」


「はい、ありがとうございます!」


 とても嬉しそうに微笑むアオイさん。


 今は長年の心残りが晴れて恩人である俺を慕ってくれているみたいだけれど、しばらく時間が空けばその気持ちは落ち着くだろう。


 俺としてもすごい魔法や魔道具を使えるアオイさんが近くにいてくれると心強いし、ありがたくその提案を受け取るとしよう。


「というわけで、私もこの屋敷に住まわせてもらう。ユウカ、家賃が必要だったら教えて」


「なっ!? べ、別に同じ屋敷に住む必要はないんじゃない? そうだ、確か隣は空き家だったはずよ!」


「この屋敷はまだセキュリティが甘い。魔道具でもっと防衛を強化できる。カケル様の安全を考えたら、私もここに住んだ方が安全」


「うっ……」


「えっと、それは俺たちからしたらありがたいけれど、アオイさんの研究室は大丈夫なの?」


 ユウカがアオイさんに連絡をする際、少し離れた街に研究室があると聞いている。


 セキュリティを強化してくれるのは非常にありがたいけれど、研究室を放っておくのは申し訳ない気がする。


「元々日本へ戻る魔法を研究するために建てただけなので問題ないです。むしろ、もう不要なので売却してもいいですね。カケル様のために魔道具は作りたいので、どこかで機材だけは持ってきますが」


 なるほど、元々日本に帰る目的で建てた研究室なのか。それが不要になったということは、もう日本へ戻って権藤を殺すということに執心はないらしい。まあ、あそこまで晒されれば、社会的には完全に死んだようなものだからな。


 アオイさんが前を向いてくれたのでなによりである。


「……はあ、確かにカケルのためにはそっちの方が安心だし、わかったわ。だけどこれ以上譲るつもりはないからね!」


「こっちも譲ってもらうつもりはない!」


 なぜかまたしても2人が視線で火花を散らす。


 仲が悪いというわけではなさそうなんだけれど、なんだかなあ……。




 3人で今後のことを話し合った。


 権藤については日本に戻った際にネットで調べてそれを報告する。すでに社会的に終わっているとは思うが、あいつが有罪となり、アオイの冤罪が晴れてすべてが終わることになるからな。ご両親のことはユウカと同じで週一くらいで様子を見に行くということに落ち着いた。


 それとやはり様付けは取れず、ユウカと同じように呼び捨てで呼んでほしいとのことだった。……ここまで来たら好きにさせてあげよう。


「さて、それじゃあ行こうか」


「ええ」


「楽しみです!」


 正式に俺の借りる部屋が決まり、アオイもこの屋敷で暮らすことが決まったので、3人で市場へ行くことになった。基本的な家具は揃っているのだが、それ以外の小物なんかを揃えに行く。アオイは急いで飛び出したみたいだから、生活用品がいろいろと足りていないから、それも必要だ。


 今回の件で日本のお金も多少使ってしまったので、またフリーマーケットで稼がないといけないから、そっちの商品も補充しておこう。


 いろいろとあったが、ようやくこっちの世界でのんびりと過ごせそうでなによりだ。


 ピンポーン。


 しかし、市場へ出掛けようとしたちょうどその時、屋敷のインターホンが鳴った。


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― 新着の感想 ―
ようやく落ち着いた!と思ったら?今度は、あらすじにある、日本の物が欲しい王族が来るかな?それとも別の誰か?日本の物を欲しがる人は、祝福者以外にも、いそうですね。転移の人から何か分けて貰ったとか、借りた…
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