第20話 デジャヴ
「すーすー」
「す~」
「………………」
可愛らしい寝息を立てながら、俺の両横で寝ている2人。
……さすがにこれは夢だよな? いや、現実だとしたら完全に通報案件の状況なんだが……。
「うう~ん……はっ、カケル、目を覚ましたのね! 気分は大丈夫?」
「カケルさん! い、生きてる……よかったあ!」
「心配かけちゃったみたいだね。大丈夫、単に寝不足だっただけだよ」
2人を起こした方がいいのか悩んでいると、ユウカが目を覚ました。ユウカの声でアオイさんも起きる。
アオイさんは少し大袈裟だけれど、自身は心労で倒れてしまったようだし、ただの寝不足なのに2人にはだいぶ心配をかけてしまったか。
……それにしても寝起きの状態でいきなり女性2人から詰め寄られると心臓に悪い。夢のような状況だが、どうやら夢ではなかったらしい。
身体のほうに問題はなかったが、どうやら俺は丸一日眠り続けてしまったようだ。2人とも俺を心配して、つきっきりで看病してくれていたらしい。
とりあえず現状を確認するべく、日本へ戻ってネットを開く。
本当は昨日も少し休んだらいろいろと根回しをするつもりだったのだが、その必要はなかったようでほっとする。必要な情報を調べて異世界へ戻ってきた。
「昨日の件は思ったよりも拡散されていたよ。権藤の横領の件についても再捜査することが書かれていたし、これで権藤は逮捕されることになるだろう」
「うん!」
アオイさんが晴れ晴れとした笑顔で頷く。
上場している大きな企業の新製品発表会に突然告発文書が流れたということもあり、ニュースにもなっていた。それに加えて俺のあげた動画が拡散され、そのあと大物インフルエンサーが動いたこともあって、大炎上していた。
アオイさんが残したデータなどもあることだし、権藤は改めて裁かれることになるだろう。
「……しかしSNSの世界は本当に怖いよなあ。たった一日だけなのに、もう権藤の住所なんかも晒されているし、権藤の部下から追加でパワハラとセクハラの被害報告なんかもでている。こいつはコネ入社で役員と繋がりがあったから、これまで問題が表に出てこなかったんだってさ」
まさかたった1日で新たな問題が次々出てくるとは予想できなかった。たぶん他にもやらかしているだろうし、横領の裁判以外の裁判にもかけられそうだ。
「アオイの他にも同じようなことをしていたなんて呆れるわね。完全に自業自得よ」
「本当に最悪……」
俺たちの知らなかった新しい事実まで掘り起こされているし、SNSのこういった情報は本当に早い。
権藤はユウカの言う通り自業自得で、これが本当の悪人だったら問題ないのだが、アオイさんの時のように誤った情報でも瞬時に拡散されてしまうのはちょっと厄介だ。本当にSNSの使い方は今まで以上に注意してほしい。
私刑は大いに問題あるが、今回のように問題が広まらないと処罰されない司法にも限界があるから難しいところである。まあ、今回は相手が相手だったからよしとしよう。
「俺の方も問題ないな。まあ、魔道具の力を使ったわけだからバレようもないし、そもそも日本に俺は存在しないから捕まりようもない」
俺の固有スキルを使えばどこからともなく出現できるので足取りを追われるわけもなく、投稿や配信者への方はネットカフェから行ったので問題ないだろう。
不法侵入、業務妨害、名誉棄損など、俺の方も捕まれば様々な罪に問われる。
……捕まらなければいいという考え方は非常に危ういことなので、日本で魔道具を使う際は十分に自重しよう。今回はアオイさんの事情もあったし、企業の方にも問題があったからああしたが、万引きのような犯罪を一度するだけでも他人に大きな害を与えることを忘れてはならない。
「それはよかったけれど、今回みたいな無茶はもう二度としないでよ。カケルが倒れた時は心臓が止まりそうになったわ」
「……うん、気を付けるよ」
実際に前世は過労が原因で死んだこともあって、大袈裟だ、とユウカに言えないところが辛い。
俺も今後は徹夜なんてせずにのんびり過ごすつもりなので、ちゃんと気を付けよう。
「……ユウカ、カケルさん。この度は本当にありがとうございました!」
アオイさんが席を立ち、俺とユウカの正面に立って深々と頭を下げた。
「私は何もしていないわ。全部カケルのおかげよ」
「俺も気にしないで。前にも言ったけれど、俺がやりたいようにやっただけだし、ちゃんと約束は守ってもらうからね」
約束通り、何かあった際、アオイさんには協力をお願いする。今さら約束を破るとかはなしだ。
「もちろんです」
そう言いながら、アオイさんは俺の前に進んでくる。
そしてなぜか片膝をつき、自身が持っていた杖を俺に掲げてきた。
「カケル様、このご恩は一生忘れません! 再び与えられたこの命、すべて尽きるまであなた様のために使うことを、ここに誓います!」
「「………………」」
あれ、デジャヴかな? なんかつい最近似たような言葉を聞いたんだけれど……。
これ、異世界で流行っているの……?




