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第14話 アオイさんの実家


「えっ!?」


 次のスクショを見せると、そこにはネットニュースに今俺の言った内容が書かれていた。


「……どういうこと? アオイは無理がたたって病気で倒れたんじゃなかったの?」


「か、階段で突然胸が苦しくなって倒れて、そのまま目を覚ましたらこの姿でこの異世界にいた。も、もしかしたら階段から落ちた時に外傷はできたかもしれないけれど、絶対に自殺なんてしていない!」


 アオイさんはだいぶ動揺している。そりゃ自分が勝手にやってもいない罪を認めて自殺したなんて言われたら混乱するのも当然だ。


 もちろん彼女を疑っているわけじゃない。そもそも自殺をしていたら、この異世界へ来てずっと元の世界へ帰る方法なんて探していないだろう。


「詳しく調べてみないとわからないけれど、もしかするとアオイさん心労や過労で死んだとするのはイメージが悪いから自殺として情報操作されたのかもしれない」


「……っ!」


 社員が心労や過労で病死するなんて企業側からしたらあまりにもイメージが悪い。しかもこれから会社と裁判で争う予定の社員だ。会社のお金を横領して自殺したことにすれば、悪いイメージはすべてアオイさんへ向かうものな。


 もちろんアオイさんの上司にこんなことができる力はないだろうから、会社の仕業だろう。結構大きな会社みたいだし、そういった揉み消しがあってもおかしくない。


 本当に病死や事故死であったとしても、『横領をして自殺!?』みたいなタイトルの記事で思考を誘導すれば情報を操作することはそこまで難しくはない。もちろん、間違った噂が勝手に広まった可能性も十分あるが。


「ぐぐぐ……!」


 両こぶしを固く握りしめ、身体全体がプルプルと揺れながら顔を赤くして憤慨しているアオイさん。そうだよな、冷静でいられるはずがない。


 しばらくアオイさんが落ち着くまで待ち、次にどう行動するかを3人で相談した。




「それじゃあ行ってくる。ユウカ、アオイさんをお願いね」


「ええ、わかったわ。カケルも気を付けてね」


「カ、カケルさん。どうか、よろしくお願いします!」


「うん、任せて」


 アオイさんのことはユウカに任せ、日本帰還でもう一度日本へ移動し、そこからいつもの最寄り駅に向かい、電車に乗って大きな駅へと移動する。


 そこで必要な物をいろいろと購入し、そこからさらに乗り換えて、新幹線で愛知県までの切符を購入した。というのも、アオイさんの実家が愛知県にあるからだ。当然ながら、異世界の祝福者たちは日本各地から異世界へとやってくる。アオイさんの実家が関東にそこそこ近い愛知県にあって助かった。


 それとフリーマーケットである程度のお金を稼いだこともあって、新幹線のチケット代をすんなりと払えたのも大きいな。新幹線は片道だけでも結構なお値段がするんだよ……。


「せっかく富士山が見えるってのに、全然楽しい気分になれないな……」


 ぼそりと独りで呟いてしまう。新幹線の車窓からはてっぺんの白く染まった大きな富士山が見える。


 ずっと社畜生活を送っていたこともあって、新幹線に乗って他県へ移動するのはかなり久しぶりだ。普段なら仕事を忘れ、富士山を見た時点でワクワクする気持ちになれたが、今はとてもじゃないが無理である。


 昼過ぎになってユウカのご両親がスマホを再契約してくれたらしく、ネットが繋がるようになった。新幹線の中で詳しい情報を調べていくと、その内容は酷いものだった。ネットではアオイさんのことが面白おかしく書かれ、横領したお金はホストに貢ぎ、風俗でも働いていたという根も葉もない噂や誹謗中傷が飛び交っていた。


 ……しかも今から行くアオイさんの実家の住所まで晒されている。一応そのあとにアオイさんの両親が事件に巻き込まれたという情報はなかったからほっとしたが、もしかすると引っ越してしまっているかもしれない。そうなってしまえば、そこからご両親の行方を追うことは不可能だ。頼むから、引っ越しだけはしていないでくれよ……。




「よし、表札は黒崎のままだ!」


 新幹線で名古屋駅に着き、そこからさらに電車を乗り換えて目的の駅に着く。そこからスマホの地図アプリを使ってアオイさんの実家へ行くと、表札には黒崎と書かれていた。ユウカの実家を探す時と違って、ネットと地図アプリがあるとだいぶ楽だ。


 ……さすがに家の塀に落書きとかはないようでほっとする。ただアオイさんの事件があってからもう4年も経っているから、当時はどうだったのかわからないが。


 ピンポーン。


「はい」


 インターホンを押すと、女性の声がした。きっとアオイさんの母親だろう。


「はじめまして、カケルと申します。突然の訪問、申し訳ございません。生前は葵さんと『剣スタ』というゲームで遊んでいた仲でした。大変遅くなりましたが、葵さんにお線香をあげさせていただけないでしょうか?」


「……はい、少々お待ちください」


 少し迷う時間があったが、どうやら家に上げてくれるようだ。今の俺は道中で購入してきたビジネス用のワイシャツとパンツを着ているから、顔立ちが外国人っぽくてもある程度はまともに見えるだろう。


 剣スタとはアオイさんが生前ハマっていたゲームらしい。両親もアオイさんがグッズなどを購入していたことを知っているので、信用してもらうためにそう伝えたがうまくいったようだ。


 今回ここまで来た目的はアオイさんのご両親の無事を確認し、現状と当時の状況を聞き、()()()()を回収するためである。


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