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第11話 2人での暮らし


「カケルさん、どうか娘をよろしくお願いします」


「カケルお兄さん、お姉ちゃんをよろしくね!」


「ええ、承知しました」


 現状を説明し、俺の能力では彼女をこちらに連れてくることはできないが、メッセージや送りたい物を届けることは可能なので、週に一度お互いの橋渡しを手伝うことになった。


 こちらからの条件としては俺のことは決して他の人に話さないことだけだ。異世界ではユウカにだいぶお世話になっているからそれ以上の対価は求めない。さすがに現状ユウカのヒモみたいな状態になっていることは濁して伝えておいたぞ……。


 それともうひとつお願いをして、ユウカが持っているスマホを父親名義で登録してもらうことになった。毎回無料のwifi電波が飛んでいる場所を探すのは面倒なので、このスマホでできるようにしてもらえるのはありがたい。


 なにか伝えたいことがある時や緊急時の際はメッセージを送ってもらえる。さすがに異世界にいる時にはつながらないが、俺が日本へ帰還した時にすぐにメッセージを読めるようになり、ユウカからもメールで家族にメッセージを送れるようになるのは嬉しいだろう。


「ただいま。無事に俺やユウカのことを信じてくれたよ。スマホも明日契約してくれるって」


「よかったあ。ありがとう」


「気にしないで。それとこれはご家族からユウカへのメッセージだよ」


「っ!」


 ユウカの動画を撮ってご家族へ見せたようにご家族からユウカへのメッセージを動画で獲ってきた。春華ちゃんの動画は先日見たがご両親の姿を見るのはだいぶ久しぶりだろう。


「……カケル、本当にありがとうね」


「うん」


 ユウカの瞳から涙が流れる。これ以上俺がこの場にいるのは野暮だろう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「カケル、おはよう♪」


「おはよう」


 翌朝目が覚めて屋敷の広い居間へ行くと、ユウカがとてもニコニコしながら朝食の準備をしていた。ご家族と会えないまでも、妹さんは回復し、家族と交流がとれることになったことがよっぽど嬉しかったようだ。


「昨日は本当にありがとう、カケルのおかげでぐっすり眠れたわ」


「それはお互いさまだ。これまではずっと安宿や馬小屋みたいなところで寝ていたから、ベッドの上で気持ち良く寝られたよ」


 この街に来るまでは本当に大変だった。悪事に手を染めようという誘惑にかられ、危険を承知で日本の物を売ろうかと何度考えたことだろう。ユウカに助けてもらえなければ、そうしていた可能性が高かったのでお互いさまである。


「うん、おいしい! 久しぶりにおいしい和食が食べられたよ」


「ふふっ、気に入ってくれたよかったわ。やっぱりご飯は日本の方が断然おいしいわね。比べてみるとはっきりわかるわ」


 昨日の朝食はパンなどの洋食だったが、今日の朝食はザ・日本の朝食といった料理が食卓に並んでいる。ご飯、味噌汁、納豆、魚の切り身、出汁巻き卵、おひたしだ。フリーマーケットで稼いだお金を使い、スーパーで買ってきたものである。


 やはりユウカも日本食に飢えていたようで、久しぶりに日本の味を味わいながら楽しんでいるらしい。確かに昨日食べたご飯よりも日本の米の方が明らかにおいしい。日頃から食べているといつもの味に慣れてしまい、そのありがたさがわからないものだな。


「そういえばカケルの部屋だけれど、護衛もにも便利だし、私の部屋の隣でいいかしら?」


「……ええ~と、今更だけれど、本当に俺もこの屋敷に住んでいいの?」


 今は屋敷の客室を借りている状況だが、これからしばらくユウカとご家族の橋渡し役をするということで、ちゃんとした俺の部屋を選らんでほしいとユウカに言われた。何から何までお世話になりっぱなしで、さらにヒモ生活が加速していくのだが……。


「ええ、もちろん。これからもカケルにはお世話になるし、どちらにしても部屋は余っているからね。この屋敷も他の祝福者に信用してほしくて買ったようなものだからね」


「なるほど」


 どうしてひとりでこんなに広い屋敷に一人で住んでいるのかと思ったら、それもまた妹さんを助けるためだったというわけか。確かに変な場所に住んでいるよりもこうして立派な屋敷に定住している方が信用度は上がるだろう。俺は住居まで確認する余裕はなかったが。


「でもカケルのおかげで私の目的は達成されたから、もうこの屋敷は売り払ってもいいのよね。この街だと私がだいぶ目立ってしまっていてカケルがあまり街歩きを楽しめないから、冒険者を引退して、離れた村や街へ移動して2人でのんびり暮らすのも悪くないわ」


「いやいや、さすがにそれは悪いよ! せっかくSランク冒険者になれて、こんな立派な屋敷に住んでいるんだからさ」


 いくらなんでも俺のためにそこまでされると、むしろこっちがいたたまれなくなってしまう。


「……カケルは私と2人で暮らすのがそんなに嫌なの?」


 ぷくっと頬を膨らませながら、上目遣いにこちらを見てくるユウカ。不満そうにしているそんな仕草も可愛らしい。


 もちろん嫌なわけがなく、こんな綺麗な女性とのんびり暮らすなんて理想でしかない。だけど、今のユウカと俺は互いに恩を感じている状態で、それは恋愛感情とは別の感情な気もするんだよな……。


 ピンポーン。


 突然インターホンが鳴った。


 ユウカの問いの返答に困っていたから、ある意味では助かったかもしれない。


「……こんな朝から訪問なんて、冒険者ギルドの緊急依頼? それともまさか!」


 突然の来訪者に一瞬不機嫌そうな表情を浮かべたユウカだが、その直後に驚いた表情を浮かべる。


「カケル、もしかしたら以前に話した()()が来たのかもしれないわ!」


「えっ、それって日本に未練があるっていう……。でも、もう少しかかるって言っていなかった?」


「手紙を送ってからまだ数日……。本当ならあと2~3日かかるはずだけれど、彼女も規格外だから……。彼女だった際に備えて客室の隣で待機してて」


「了解」


 ユウカと相談をして、日本へ帰れる手がかりがあったとだけ伝え、俺のことはまでは話していない。その人が来たらどんな人かを見極め、未練の詳細を聞いてから手助けするかを判断することに決めていた。ユウカがその人を客室へ案内し、俺は隣の部屋でその人の様子を探ると事前に決めている。


 ユウカからはその人の大まかなことしか聞いていない。いったいどんな人で、どのような理由で日本へ帰りたいのだろうか?


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