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第10話 異世界の証明


 ピンポーン。


「はい」


「鈴木一郎と申します」


「っ! はい、すぐに開けます!」


 先日ここを訪れた時と同じ母親の声がした。同様の偽名を伝えると、すぐにドタバタと音がして、ドアからユウカの母親と父親が出てくる。


 ……どうやら他に人はいないみたいだな。ないとは思っていたが、警察に連絡されて、俺を捕まえるために警察官が待機している可能性もゼロではなかった。さすがに妹の春華ちゃんを治療したこともあって、不審者とは思われていなかったようだ。


「あ、あの……春華のことを治療してくださって、ありがとうございました」


「そ、それでその……優華はいったいどこに……」


 父親はメガネを掛けた細身の男性だった。どちらかというと姉妹2人とも母親似かもしれない。


 両親ともすぐに俺を問い詰めたい様子なのだが、俺の格好もあって不安そうに聞いてくる。俺はかぶっていたマスクと帽子を外して素顔を晒す。


「改めましてカケルと申します。先日は突然失礼しました。まず、春華さんのお身体の様子は大丈夫でしたか?」


「は、はい! おかげさまで春華は手と足が動かせるようになりました。リハビリは必要ですが、今まで通り歩けるようになるそうです。お医者様も奇跡だとおっしゃっていました」


「そうですか、本当によかったです」


 父親の言葉に俺は胸をなでおろした。


 ユウカが異世界で必死で手に入れたエリクサーの効果があって、本当によかったな。


「優華さんについてですが、まずはこちらをご覧ください」


「こ、これは! 優華!」


「あ、あなた!」


 スマホで撮影したユウカの写真を見せると両親が泣き崩れてしまった。


 2人が落ち着くのを待ちつつ、詳しい説明をするため2階にある春華ちゃんの部屋へ移動する。


「あっ、お兄さん!」


「身体は大丈夫そう?」


「うん! また歩けるようになるんだって!」


「おお、本当によかったあ」


 春華ちゃんはまだ立ち上がることはできないようだが、身体を起こせるようにはなったみたいだ。


 改めて春華ちゃんのいる部屋で3人と話をする。


「優華さんからの手紙は読んでくれましたか?」


「は、はい。ですが、その……異世界というのはどうにも……」


 先日この家へ来た時に手紙を置いてきた。その中にはユウカがこれまで異世界へ転移してしまったことやエリクサーのことなどが書かれていたが、娘からの手紙とはいえいきなりそんなことを言われても、さすがに信じるのは難しいだろう。


「すぐには信じられませんよね。それではちょっとだけこれをお借りして……見ていてください」


「なっ!?」


「ええっ!」


「お、お兄さん!」




 固有スキルの日本帰還を使って異世界へと移動すると、瞬時に景色が切り替わり、屋敷へと戻ってきた。


「カケル!」


 目の前には心配そうな顔をしているユウカがいる。


「予定通り、ご両親と妹さんに俺のスキルの力を見せてきたよ。春華ちゃんも大丈夫、リハビリをすればこれまでのように歩くことができるってさ」


「よかった! 本当にありがとう!」


「うん。それじゃあ、改めて説明をしてくるよ」


 そう言いつつ、先ほど春華ちゃんの部屋から借りてきたぬいぐるみを優華に持ってもらい、スマホで写真を撮る。


 再び固有スキルを使って日本へと転移した。


「うわっ!」


「こ、今度は突然現れて……」


 再び突然現れた俺に驚く3人。異世界では物理法則を無視した魔法があるけれど、日本で人が突然消えたり現れたりしたら驚くのは当然だ。


「今のような感じで私は日本と異世界を移動することができます。理由はわかりませんが、あちらの世界へ行くと各々が特別な能力を授かるようです。こちらをどうぞ」


「「優華!」」


「お姉ちゃん!」


 ユウカのスマホを操作し、先ほどの写真を見せる。この部屋にあったぬいぐるみを持ったユウカの写真。今俺が異世界へ行ってきた証明にもなるだろう。


 続けて昨日撮った動画を開く。ファンタジーな格好をしたユウカが照れながら数年ぶりに家族へとメッセージを送っている。ユウカと彼女の家族しか知らない思い出も話してもらったし、先ほど見せた写真と合わせて、きっとこれで信じてくれるだろう。


「あなた、優華が……」


「ああ……生きていてくれたんだな……」


「お姉ちゃん……」


 動画を見てご両親と妹さんが大粒の涙を流す。


 ……いかん、3人の気持ちを考えると、俺も思わずもらい泣きしてしまいそうだ。これまで不運に見舞われ続け、ずっと辛かっただろうなあ。


「こちらは優華さんからです。もしもお金に苦労しているようでしたら遠慮なく使ってくださいとのことです。エリクサーもそうですが、彼女は向こうの世界で皆さんのためにすごく頑張っていましたから、どうか受け取ってください」


「こ、これは(きん)ですか?」


「ええ。向こうでは通貨に金を使っているんですよ。純金なのはわかりませんけれど」


 マジックバッグから預かっていた金貨を取り出す。このマジックバッグにも驚いていた。春華ちゃんの怪我は保険が下りているはずだが、もしかするとユウカの捜索などに結構なお金を使っているかもしれない。異世界ではSランク冒険者だし、彼女にとってこれくらいの金貨はそこまで大金ではない。


 とはいえ、改めて調べてみたら金を大量に売ると記録が残り、税務署などが動くこともあるそうなので、大量に金を売るのは緊急時の時だけにしてもらうが。


「それでは今後のことについて話しましょう」


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― 新着の感想 ―
とりあえず、良かった!直接は会えないけど、間接的にメッセージを送り合えるし!良かった!感涙! 折角の金、無闇矢鱈には売れないんですね(汗)面倒…。まあ、そんなことより行方不明だった家族の無事のが大事で…
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