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解析度 120%―非論理的な解析できない衝動

「ねぇ、そういえば、隣のクラスで行方不明になってるらしいよ」


急に耳に飛び込んできたクラスメイトの会話に、思考を凍りつかせる

思考は即座に、昨夜の連続通り魔事件と今聞いた情報を分析を始める。


隣のクラスの行方不明の生徒、そして、通り魔の被害者たちが持つ

「特定SNSの裏アカウントのフォロワー同士」という共通属性

この二つのデータが、私の脳内で〝恐ろしい結論〟を導き出した。


『以前送った情報が警察に届き、彼らが行動を起こすまでの間に

新たな被害者が出る可能性が極めて高い』


――私は、推理の出力を上げる。


これを放置すれば、私の穏やかな生活が後悔という

感情によって永久におびやかされることになる

幸福を日常が崩れかける緊急事態だった。


——思考の出力をさらに上げ続ける。


行方不明になった生徒に関する断片的な会話のノイズから

その生徒が『ある匿名アカウント』に誘導されたという情報を引き出す。


――推理と思考の回路を最大出力にした。


そして、その匿名アカウントが過去に

『夜景が美しい、静かな場所』として投稿していた場所と

過去三件の犯行現場の『監視カメラの死角』

という共通データを重ね合わせた。

その三つの条件が一点で交差する場所を

瞬時に弾き出した。


そして犯行予測地点が「ある公園の南側の、あの古びた時計台の下」であることを導き出した。


事件が拡大し、私の日常が脅かされる、これを食い止めるには私が自発的な行動を起こすしかなかった、これは最も非論理的な衝動だった。


「先生!体調が悪いです!早退します!」


私はカバンを掴み、教室を飛び出した。




ーーー




現場までの最短ルートを解析しようとして…

ふと止まった。


「公園までが遠すぎる……。」


最短ルートを考えた結果、私の体力では歩いて

現場に到着するまでに必要以上に時間がかかる、間に合わない。


もし走れば…足が生まれたての小鹿に様になってしまうだろう。


運動嫌いを言い訳にせず、ちゃんと体育の授業に取り組むべきだった

…私は少し迷いながら、タクシーを呼んだ




ーーー




公園の近くでタクシーを降りて、古びた時計台に向かって歩き始める。

犯行〝予測〟時刻までの残りの時間が少ない


私の視覚情報は、周囲の異常なデータ

音や匂い、目だけではなく、使える感覚を全て使い

現場の情報を拾い上げる。


そして致命的な場面が目に映る

〝恐ろしい予測〟はやっぱり正しかった。


私は、歩きながら既に指でスマートフォンを操作し

警察に通報を済ませた、ここからは私の時間稼ぎだ。


時計台の裏。人目につかないその場所で

行方不明と噂されていた生徒は立っていた。


その生徒の制服を後ろ姿を見た瞬間

既視感が走る、やっぱり感覚は正しかった

そして生徒の顔を見た瞬間、予測が確信に変わった。



あの時、喫茶店で会った同じ学校のアヤカだ。



――当たっててよかった。



そして、その前に立つ男。


男は昇進したばかりの新しいジャケットとネクタイを着用していた

私が以前街で観察した、あのサラリーマンと完全に一致する。


男の顔には、歪んだ支配欲と厭らしい目つきが浮かんでいた

そして、私の存在に気付いた直後、顔の向きはそのままで

目線だけがこちらにギロリと向く。


左足をわずかに引きずる癖を隠そうとするかのように

姿勢がわずかに硬直していた。


男と彼女、二人の視線が私に集中する、と同時に

ある物を見て思わず顔が引き攣りそうになった。



男の手に、大ぶりのナイフが握られている。



そしてアヤカは恐怖で硬直し、口を開くことができていない。


男の右手の凶器を視認した瞬間、私の思考は恐怖という

生物的として当たり前な考えにより

その場から逃げる様に警告を出す


恐怖で支配された脳から警報音が大音量で鳴り響く。


私の予測は正しかった、が、現状すべて最悪すぎる。

アヤカは恐怖で声を出すことも『逃げることもできない』状態に陥っている。


奥に見えるボストンバッグにはガムテープや紐など、一般的な日常道具が

この後起きる出来事への本気さと用意周到さを表している。


――警察が来るまでの時間稼ぎが必要だ。


恐怖に震えそうになる足を必死に抑え込み

あえて意識的に一歩踏み出し男に対して

二つの弱点を元に真実を突きつける。


「私はただの女子高生ですッ!ですが…あなたの行動に心底うんざりしています

あなたは今…昇進したばかりで現実の責任から逃れるための

無意味な衝動で人生を台無しにしようとしている!」


冷静を装ってはいるが、もはや叫ぶように情報を叩きつけるしか

声の震えを隠せない


そのまま恐怖を悟られない様に感情を押し殺して

極めて淡々と聞こえるように事実を告げる


「その右足の引きずりは単なる古傷ではない!そしてあなたは今!

過去の敗北や、家庭や職場での不満から逃れられない無力感から

逃れるための感情が支配欲として暴走しています!」


私の声が、彼の心の鎧を崩壊させた

男は凶器を握りしめる手を緩める。


「なぜ……なぜ君が、そこまで知っているんだ」


遠くから、サイレンの音が微かに近づいてくる。


男が動揺して硬直したその瞬間パトカーのサイレンの音が聞こえる

警察が、ちょうどこの公園の裏手に差し掛かることを確認した。


犯人が逃げない様に言葉を紡ぐ、恐怖はもうなかった

私の後ろにいる、被害者を守る事に必死だった。


「私はただの女子高生です…でも!」


私は淡々と答えた


『私は目に入る…すべての情報を解析できますッ!』


男はサイレンの音を聞き、パニックに陥りながら警察に取り押さえられる。

その様子を横目にその場から離れるように誘導され

警官からの質問に淡々と状況を説明する。


困惑の表情で様子を伺うようにしている人物がいた。

恐怖の顔から解放されたアヤカが

私に向かって震える声をかける。


「あ、あの…どうして?…どうしてあなたがここに…?」


アヤカの声に反応して立ち止まることは非効率性で現状の説明は

無意味だと結論づける…事務的なやり取りならともかく

緊張の糸が途切れた今、普通に喋ろうとしたら確実に泣く自信しかない。


アヤカの声に、つい反応しそうになるが現状の説明は

無意味だと結論づける……事務的なやり取りならともかく…。


緊張の糸が切れた今、普通に喋ろうとしたら確実に泣く自信しかない。

事情聴取後、彼女と目を合わせることもなく、逃げるように踵を返す。


これは私の穏やかな日常は守るための行動だ

平穏という最も重要なデータのために

日常に戻るための一歩を踏み出した。


「あ」


恐怖を押さえつけてた頭と体の疲労が最悪の形で炸裂し

全身で頭からベシャッと、コケた、それも盛大に。


生まれたての小鹿の様に震えていた足がもつれ

公園の地面に制服のスカートがまくり上がるのも構わずに。


「え、嘘っ……ふ、ふふっ!」


視界の端でアヤカの口から、か細くも、確実に笑い声が漏れた。

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