中立派から見ればどちらも大概だが、それでもひとまとめにさせてはいけないこともある。
そしてその日の夜。あなたはアシディと手合わせした。
小柄なアシディの肉体は、それでもあなたと楽しみを分かち合うだけの気合と情熱を秘めており……おかげであなたも大変満ち足りた一戦を繰り広げることができていた。
「……ありがとうございました英雄様。ふふ、すっごく素敵でしたぁ」
気力的にはともかく、体力的にはやはり体格差もありあなたよりはるかに限界に近いアシディだが、満足しきった様子で健気な微笑みとともにあなたの腕にしがみついてくる。
その姿は肉体的欲求以上に精神的な庇護欲をかき立てるものだ。あるいは父性と言っていいそれをあなたは惜しみなく小柄な彼女を抱きしめることで表現した。
こう書くといささかインモラルにも聞こえるが、あなたとあなたのハーレムメンバーにおける小柄な女達、もしくは年下の女達との関係性はこうしたものもあった。
ある程度対等なものもあれば、明確に上下に分かれるものもある。女達の性質と気質によって日々の手合わせにバリエーションが生まれているのも、あなたがこのハーレムを手放すに手放せない理由のひとつなのかもしれなかった。
「……英雄様。英雄様は、愛人派や放蕩派の方々のこと、どう思われているんですか? 昼間に清楚派のスィートさんとお話したんですけど、やっぱり最後には英雄様のご判断とかお考え次第かなって、思いまして」
そしてピロートークに投げかけられる、ストレートな問いかけ。決して気分を害する類のものではないが、あなたにとっては目下のところ最大の悩みどころであるため即答するのも困るところだ。
とはいえ想定はしていた。各派閥のリーダー達と夜を過ごす際、必ずと言っていいほどに他派閥についての論を交わすのが常なのだから。
なんならその時間はあなたにとっても、悩ましい問題に関してのヒントを得られる貴重な機会であった。
ゆえに少し考え、あなたはアシディに対して思うところを述べた。
「え……ハーレムに居たいのであれば止めないけれど、お互いもっと適切な距離感の関係性があるような気はする、ですか? そう、かもしれませんね。愛人というよりは隣人、あるいは領民というような形ででも、英雄様はそれまでと変わらない慈悲と慈愛を下さることはこの地の運営を見ていれば明らかですし」
ハーレムにいながら、あなた以外の男とも肉体的接触をしている愛人派と放蕩派。
その二派閥に対してあなたが思う正直なところは一つだ……出て行けとまでは思わないが、もっと適切な距離感があるのではないだろうか?
あなたとてそもそも、多くの女と愛を交わしている以上は彼女らの行いを道徳的、道義的見地から批判することはしづらい。
本音を言えばエイラさえいればという想いもあるのだが、それを口にするのはあなたを慕うハーレムメンバーに対してあまりに悪いという罪悪感もあり、居たいという限りにおいては別に、ハーレムに居ることを咎めるつもりもないのだ。
ただ、他の男達との関係なども考えると、あなたとしては自分のことなど忘れてその者達と仲良く領民なり隣人なりとして生きていってくれるのが一番なのではないかとも思う。
自身を棚に上げるようで気は引けるが、あなたはそんな思うところを包み隠さず話してみせた。それを受けて、アシディは答える。
「なるほど……ある意味、中立派にも近いご意見なんですね。中立派のソルティさんも、あの二派閥についてはそろそろ進退を考えたほうがいいと思っているみたいですけど」
ふむ、とあなたは考えた。中立派のリーダーであるソルティは、他四派閥に対してその名の通り常に中立的な立場を崩さずにいる。あなたからしてもバランス感覚のいい人物だと思える女だ。
そんな彼女までもが、愛人派と放蕩派に対していい加減にあなたか間男達かのどちらかを選べと考えているというのか。詳しく聞けば、アシディはさらに続けてソルティの言葉を引用してみせた。
「ソルティさん的には、愛人派や放蕩派はもちろん清楚派さえも少し行きすぎだと思っているみたいです。なんで清楚派まで含めているのかは聞けませんでしたけど……あの人や中立派メンバーにとっては、スィートさんもビタネスさんやウマムさんと大差ない、過激派だって見方をしていたように思います」
中立派ならではと言えるだろう視点。どの派閥に対してもフラットかつ等しく距離を置くがゆえに、その方向性の差こそあれ過激という点では清楚派も愛人派や放蕩派と同じだとソルティは見なしているらしかった。
こうなるとあなたとしては面白くはない。愛人派や放蕩派に進退を窺ってもらうべきというのは同意見だが、清楚派までそこに含めようというのは完全に中立派の独断にすぎないからだ。
清楚派は少なくとも、あなたに対してのみ身も心も捧げている。そのことはともに褥を過ごす度にこれでもかと示されていることだ、疑いようもない。
そんな彼女達のことを、あなたは当然報いるように愛しているし大切に思っているのだ。中立派に対しても同様だが、それだけに過激だからと言って愛人派や放蕩派同様の扱いをさせてはいけないとも思うのであった。




