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ギスギス!ハーレム異世界─五つの派閥の女達─  作者: てんたくろー


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5/15

愛人派は己の愛を確信しているが、周囲からは当然理解されない。

 あなたが逢瀬を楽しむ間にも、ハーレムの人間関係は続いていく。深夜、ハーレムとして、定められている花園の裏口から密やかに戻ってきたその女を、待ち構えて声をかける者がいた。

 美しき純白の髪の乙女、公明正大なるソルティ……中立派と呼ばれる、あなたのハーレムにおいてはもっとも中立的なスタンスを取る女達による派閥の、長である。


「お早いお戻りですねビタネスさん。パン屋の一人息子との逢瀬は、あまり楽しいものではないのでしょうか?」

「……ソルティ。こんな深夜にこんなところで何してるの? あ、もしかしてあんたも帰ってきたところかしら? 意外ね、どこの誰と愛し合ってきたのかしら」

「あなた方じゃないんですから、そんな不誠実なことはありえませんね。変なジョークは英雄様に悪いのでご遠慮くださいな」


 対する帰ってきたところの女は、夕焼けよりもなお明るいオレンジの髪が闇夜にさえ眩いビタネスである。

 彼女もまた、五つある派閥の長の一人だ。愛人派。あなたを至上としながらもセカンドパートナーを設け、その男と逢瀬し愛し合うことを良しとする放蕩派と似て非なる派閥だ。


 今まさに、ビタネスは愛しのセカンドパートナーとの情愛を交わし帰ってきたところだった。今宵はあなたに選ばれなかったがゆえ、愛人派の者達は同じように方々に抜け出てあなたの次に愛している男と抱き合いに行っている。

 正直なところ、ため息の出る話だとソルティは包み隠さずに思うところを述べていく。


「……やはり無理があると思いますよ、私は。二人同時に愛するなどと、二人ともに見放される未来しか見えません」

「またその話? 深夜に、愛し合っての帰りに言い合うつもりはないんだけど? それにあんたも他の派閥の連中も勘違いしてる、私ら派閥にとっても結局至上は英雄様なことには変わりないのよ」

「他の男との秤に掛けておいてですか。ずいぶん都合よく聞こえますが、信じましょう。そもそもそこからして怪しければ、その時点でここにいるべきでもいられるものでもありません」

「ふん。あんたらの物差しだけで測れるものじゃないわよ、愛なんて」


 深夜だ、騒ぎになることをお互い気にして小声で話し合うが両者、纏う空気は不穏だ。決定的な敵対ではないが、うっすらとした隔意をどちらも持っている。

 ソルティは愛人派の、あなたの他に男を外に作って淫らに振る舞うその性質に呆れ。ビタネスは他派閥の、自分達の愛のあり方への不理解と拒絶に苛立ちを隠しもしていないのだ。


 とはいえ、ソルティはじめ中立派はまだ愛人派に対して歩み寄ろうとしている事実はビタネスも理解していた。これが他派閥の、たとえば清楚派のスィートならば時も場所も弁えず一悶着に発展していただろう。

 そればかりか方向性としては自分達と同じで、なんなら自分達よりはるかに酷いはずの放蕩派のウマムでさえ嘲笑と侮蔑を隠そうともしていないのだ。

 そこがどうにも苛立たしい彼女は、半ば愚痴るようにソルティに話しかける。


「……百歩譲って清楚派が狂犬なのは分かるわよ。純愛派がお花畑なのもね」

「ひどい言い草ですね。清楚派が極端なのはまあ、否定はしませんが純愛派はむしろ極めて理性的ですよ? 彼女達がハーレム内での最大派閥であることを、私達はもっとありがたく思うべきです」

「ああ、ああ中立派らしい風見鶏だこと。まああんたらはそれで良いんだけどね。でも放蕩派の連中までもがそこに乗っかって私らを下に見るのはおかしいと思わない? あいつらこそ駄目でしょ、何人もの男相手に身体だけ委ねるなんて」

「否定はしません。絶対にあり得ないことですが仮に私があなたの派閥だったとして、放蕩派にだけは言われたくないとは思いますから」


 直球な言葉にソルティは苦笑いしつつ、しかし肩をすくめてシニカルに返した。愛人派そのものの是非はともかく、それを巡っての他派閥に対するビタネスの主張は、あまり否定すべきでないと中立的な観点から思えたからだ。

 特に放蕩派については、はっきり言って同族嫌悪でしかないだろうと中立派でさえ考えている。


 特定個人か不特定多数かの違いというだけで、結局あなた以外の男に淫らを曝け出していることには変わらないのだ。それを自分を棚に上げてもう片方を敵視するというのはこれはさすがに筋が通らない。

 普段、中立派としてはむしろ放蕩派のほうがまだマシという認識でいる──独自の経済活動からあなたを支援している面もあれば、特定の男を作らず遊びに徹することで最低限の筋を通していると見るためだ──のだが。


 それはそれとして愛人派に対する態度は、さすがに清楚派や純愛派と同じようなことを言える立場にないでしょうと言いたくもなるのが本音だった。

 両者しばらく見つめ合う。のち、深いため息をそれぞれ。立場こそ違えど、ソルティにとってはもちろんビタネスにとってもこのハーレムは頭が痛むことの多いものだった。

ハーレムものはみんなが仲良くしていてほしい(*´ω`*)

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