愛人派はあなたを秤にかけるが、しかしそれさえも考え方の違いでしかない。
清楚派と放蕩派がそれぞれ、あなたのハーレム下にあっての最右翼と最左翼とするならば。目下のところ問題視されている二つの派閥のうちのもう一つ、愛人派はいわゆる左寄りだと言っていい。
ただし、見方によっては放蕩派よりも質が悪いし嫌われてもいるのだが。
「英雄様。私達はたしかにあなた様を想いながらも、あなた様以外の男達で欲望を満たしている雌豚です。しかし私達にはたしかな矜持があります……心は変わらずあなた様に。魂は揺るぐことなくあなた様に、という信念が」
ある夜の寝所。今日の手合わせを終えてあなたは、相手である放蕩派のリーダーのウマムを胸元に抱き寄せてその言葉を聞いている。
甘えるように擦り寄るグラマラスのウマムからは、おぞましいほどの色気が感じられている。極上の妖艶さ。
この妖艶さがつい先程まで、あなたの手にかかって支離滅裂なまでに乱れていたのだ。あなたの一挙手一投足に瞳潤ませ恋する乙女らしく恥じらい、けれども数多の男達を翻弄する手練手管であなたを悦ばせようとして。
──そして返り討ちにあったのだ。あなたは夜の戦いにあっても天下無双、超絶的な絶倫英雄だった。
「ふふ……私達放蕩派がこうまで甘え、縋り、そして依存するのはどこまでいっても英雄様のみ。他の男達など人形にすぎませんのよ。名前どころか顔も、蹂躙して差し上げたモノの形さえ一つも覚えておりません。ことが終わるどころか、ことの最中でさえも」
胸元に擦り付き、甘えた子猫のような声と振る舞いでとてつもなく淫蕩なことを口にする。ウマムのそんな言動に、あなたは冷静に戸惑い、対処を考えあぐねている。
真実だとは思う。以前エイラからも聞いているが放蕩派の女達は不特定多数の男との遊びに興じるものの、しかしその扱いは極めて傲岸不遜かつ一方的な絶対強者としてのものだという。
男を欲して誘い、媚び。しかし実際にことが始まれば相手の男の人格、性質、気質、人生などすべて無視して単なる慰みのための人形として扱う。
あなたはそんな男達に嫉妬を覚えずにはいられないが、しかして同じ男として彼らの気持ちを考えると、やはり複雑なものを覚えずにはいられない。
ウマムはそんな、微妙な表情を浮かべるあなたを見て眉を下げた。あなたにそんな顔をさせている自分達放蕩派の、罪深さを改めて自覚したのだ。
彼を傷つけている。不安がらせている。本来ならばその時点で彼の傍にいる資格などない。清楚派の言うとおり、自分達こそは不名誉な存在そのものである。
けれど、それでも愛しくて堪らない。他の男にはしない、ことが終わってからも床をともにし、あまつさえこんなふうに甘え頼るようなことなど。
終わってしまえばすぐに外に捨てやり、反発するようなら二度と粗末なモノを使えないように痛めつけてやるばかりだ。
あなただけだ。他の派閥の女達同様に放蕩派にとっても、あなただけなのだ。
しかし。そんな放蕩派にも認めがたい派閥はある。ウマムは少しばかり、ぼやくようにつぶやいた。
「……愛人派と、どうか一緒になさらないでくださいませ。あの子達は明確に、あなた様と他の男を秤にかけている不心得者。不特定の肉人形でない、よりによってセカンドパートナーなる愛人と情を交わしている明確な異端です」
愛人派。もう一つあなたを悩ませる問題派閥だ。あなたがいない夜には、他の男と逢瀬を楽しむ気質を持つ女達で構成されているのは放蕩派と同じだが……致命的な点に相違があった。
不特定多数を適当に選び、遊び終えれば次はない放蕩派と異なり。愛人派は明確に特定の男をセカンドパートナーとして選び、その者と何度となく交わっているのだ。
これは、あなたにとってはかなり厳しい問題だった。愛人派の女達も他派閥同様にあなたを至上としているのは認めるのだが、しかし明確に別の特定個人とも絆を育んでいるのだから。
こうなると、どちらが間男なのか知れたものではない。NTRはリアルでやっちゃだめでしょ派のあなたとしては、下手をすると自分が脳を破壊する側になってしまうのは個人としても、また英雄としてもちょっとどうかと思うところはあった。
「理解はします。私達放蕩派とて、結局自らの欲に抗えていないのですから他の派閥から見れば同じことでしょう。ですが私達は英雄様と他の男を秤になど掛けようとさえ思いません。選ばれる側にすぎない者が、選ぼうなどと厚顔無恥にもほどがあります……愛人派こそは、厚顔無恥の恥知らずです」
強い嫌悪を滲ませて語るウマムに、あなたは内心、でも君達も結局やることはやってるよね? と思うものの……要はその罪に対して自覚的か無自覚か、という話なのだろう。
そしてこうした愛人派への糾弾を、正直なところあなたは他の派閥の女達からも都度、聞かされていた。他のすべての派閥から、明確に嫌われているのが愛人派なのだ。
とはいえ、あなたとて愛人派の女達を当然知っているし語らったりもするし夜をともに過ごしたりもする。そしてその度にあなたこそが至高だと、あらゆる点であなたを超える人はいないと自発的に叫ばせてすらいる。
ゆえに言えるのだが、接していて感じの悪い者達でもないのだ。少なくとも人間として、女としては。ただやはり放蕩派とはややずれる形で貞操観念が異なっているだけで。
そしてそれを受け入れられるかどうかはやはり、個々人の判断によるものなのだと。
冷静に考えれば、それだけのことなのだった。
特定の間男vs不特定多数の男達
ファイッ(*´ω`*)




