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ギスギス!ハーレム異世界─五つの派閥の女達─  作者: てんたくろー


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そして五派閥が集うが、当然ながら言い合いになる。

 そして次の日の昼過ぎ。女達はついに集った。

 あなたが領地運営を行う執務室の隣の、広々した会議室を丸々陣取って50人。ハーレムの女全員が今、ここに集結していたのだ。


 そしてその様子を、あなたは執務室から感じ取っている。参加しないのは、各派閥のリーダーから公務を邪魔するわけにはいかないと固辞されたからなのだが……はっきり言って隣の部屋で行われている時点で邪魔と言えば邪魔だ。

 野暮な聞き耳など立てなければ良いという思いはあったが、どうにも自分の身内間のいざこざについてなのでどうにも気になって仕方がない。


「しかたありませんね、あの子達は本当に……幸いにして本日はあなた様が殊更取り組むべき事態も起きておりませんし、午前のうちにあらかた書類も片付けました。ティーブレイクも兼ねて、少し様子を聞いていましょうか」


 そんなあなたに気を使うのは、やはり最愛の女エイラだ。彼女だけはハーレムの枠を飛び越え、常からあなたの補佐として執務の際にも傍にいる。

 彼女としても、今日この時間にハーレム内で会議が催されることは知っていたが、まさか政務に用いることの多い会議室を押さえているのは知らないでいた。


 おそらくは中立派のソルティのやることだろう。公平と公正を掲げる彼女は、あえてあなたの執務室のすぐ隣でやりとりすることを望んだ。

 それをもってあなたに、後から誰かから聞くのでなく直に見聞きして感じ取ってほしかったのだろう。そう、エイラは完全に中立派筆頭の胸の内を見抜く。


『──議題は一つ。愛人派と放蕩派のみなさま、あなた達の日頃毎夜の狼藉蛮行について、もはや看過できぬと訴え出た方々がいらっしゃいまして。その件について論を交わしていきたく思います』

『訴え出た方々、ね。それはあなた達中立派の自作自演でなくてソルティさん? 私達を排除すると言って何も、こんな面前で言う必要もないものね』

『言うまでもなく誤解です。私達中立派は公平にして公正を是とする派ですから、あなた方愛人派と放蕩派はもちろん清楚派、純愛派にも与せず完全なる中立のスタンスでこの話し合いの場を設けています』

『ふーん。清楚派にも純愛派にも、ねえ? ねえスィートにアシディ、あんた達はそのあたりどう考えてるのかしら? 本気で中立派が中立だと、そう思っちゃう感じぃ?』


 そうしている間にも会議が始まり、ソルティが議会進行役を務めているらしく司会をしていくのが聞こえてきた。

 しかし会話のなかでもすでに伝わる険悪さ、隔意。当たり前のことだが今回、矢面に立たされている愛人派と放蕩派の反発が強いようで、ウマムとビタネスの皮肉色をした声があなたにも聞こえてくる。


 状況は完全に二分割、いや三分割しているのだろう。

 愛人派と放蕩派を懲らしめたい清楚派と、それに抗う姿勢の両派。そしておそらくは中立に近しいだろう純愛派と中立派。

 口火を切った中立派に絡み出した愛人派と放蕩派に、すかさず清楚派が切り返しの言葉を返した。スィートだ。


『お黙りなさいな両派閥とも、今はそこの審判者気取りの風見鶏などどうでも良いでしょう。あなた方の放埒さを断罪すべき時です、この場所は』

『……言ってくれますねスィートさん。審判者気取りなどした覚えはありません、我々中立派は公平公正を旨とするがゆえにこの場を』

『真なる中立などエイラだけでこと足りましょうに、英雄様の唯一無二たる彼女を妬んでその影を踏むしかしない臆病者が笑わせないでくださるかしら。お呼びじゃないのよ議長気取りが』

『お、落ち着いてくださいませスィートさんっ。ソルティさんも、どうかこの場は……!』


 やりとりを聞いてきてあなたは、思わずエイラに甘えるように抱きついた。そうなることを見越して侍っていた最愛が、優しくその頭を掻き抱き慰めながらも小さく息を吐く。

 中立派の下手だ、これは。内心の物差しがそもそも真に中立とも言い難いものを、気取ろうとするから清楚派に噛みつかれる羽目になるのだ。


 清楚派はこの手の欺瞞は決して見逃さない、決して野放しにしない──あなたへの愛でもって制御されているだけで、その本質はあなたを至上とするがゆえに他に躊躇なく噛み付く狂犬なのだから。

 小賢しく全方位に良い顔をして立ち回ろうとする者達とは、根本からして相性が悪いのだ。その点、清楚派にも顔の利く純愛派のほうがまだ中立と言えるほどだとエイラは内心にて呆れた。


『はぁー、アシディ……純愛派。あんたらはいつもそうやって良い子ちゃんするわね、前からそこも気に入らなかったのよ』

『え……』

『腹が立つのでしょう、私達に? 英雄様だけでない男に股を開く愛人派と放蕩派に、清楚派と大して変わらない怒りをも覚えているんでしょう? それを中立派を隠れ蓑にして、さも自分達だけ聖女然と振る舞うその仕草はどうかと思うのよ、私』

『難癖はお止めなさいなビタネスさん。私達が怒りを抱かれ憎悪されさえするのも当然でしょうに、何を開き直っているの? そんなだからスィートさん率いる清楚派も、放蕩派以上に愛人派を許し難いと定めているのよ』

『っさいわね……! 何より腹立つのがそこなのよ! なんで特定の男としか寝てない私らが、男とあらば誰でも良いようなあんた達より駄目みたいに言われなきゃいけないのかしら!! あんたらの貞操観念こそどうなってるのかしらね!!』

『他はともかく愛人派にだけは言われたくないわね』


 加熱し始める言い合い。愛人派は純愛派に不満をぶつけ、そんな愛人派に放蕩派が斬りかかる。勢力図としてはまさかの同士討ちだが、元より愛人派とて放蕩派のことは見下しているのだ、とやかくは言わない。

 ただ、怒りを示すばかりだ──自分達より緩い連中が、どの面を提げて説教など垂れるのか。

 これを皮切りに、いい加減不満を募らせていたビタネスが口早に各派閥を口撃し始めた。

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