もう思い出せないあの四日間
改めて僕は、今までの四日間を思い出すことにした。
すべてを忘れてしまう前に、すべてを思い出したかったからだ。
…そうそう、一番最初は、流星群を見ていた時だったっけ。
赤く光る物体が窓ガラスを突き破って僕の部屋の中に入ってきて…で、粉々に割れたと思ったら、中から美少女が出てきたんだよ。
…んで、たいして訳も言わずに出てっちゃったんだよね。
いつの間にか僕の服変わっちゃってたし…。
あれは驚いたな。…てか、怖かった。
ていうか、こんな非現実的なことが現実に起こるなんて思わないから、てっきりこれは夢だと思うじゃん?
で、潔く僕は寝ちゃったわけよ。
んで、起きた僕を見た母親が驚いた顔してて…。
もう僕は何が何だか分からなくなっちゃって、なぜだか自殺したい衝動にかられちゃったんだよね…。
でも死ねず、仕方なしに行く当てもなくぶらぶらと歩いていたらどこだか知らない草原にたどり着いて、そこで水樹と出会ったんだっけ。
それで水樹に連れて行かされた砂浜で、いろんな話を水樹としたな…。
自己紹介から始まり、好きな食べ物の話、住んでる場所の話とか…。
中でも水樹の過去の話は印象的だったな…。
そしたらさ、何もないところからいきなり風香さんが登場してきて…。
さすがにあれは驚いたな…。
で、目の前で戦ってて、終わったと思ったら僕たちに話しかけてきて、で、風香さんについて行くことにしたんだよね。
それで水樹と一緒について行ったら、水樹さんにも会ったんだよね。
そこでいろいろと話をした結果、あのコンビニの物置に住まわせてもらうことになったんだよね。
それでさ、いざ入ろう!…というときに一樹さんが来たんだよね。
その時に僕と水樹のいとこだっていうことを初めて知ってさ、お互いにめっちゃ驚いたよね。
で、物置の中でも、少しみんなで話をしたよね。
ずっと謎に思っていたあの不思議な赤い冊子のことを何とか理解することができたのは、火菜さんと風香さんのおかげだと今でも思う。
火菜さんと一樹さんの出会い方も予想外だったな。
昔はすっごく優しかったのに、今ではあんなにうざくなっちゃってて、なんだかがっかりしたのはその次の日のことだっけ。
それでもう、時間も時間だったし、みんなしてその場に横になったんだよね。
でも少しの間だけ、水樹と二人でこっそり起きて話をしたね。
水樹が「楽しかった」って言ってくれて、何か嬉しかったな。
でもさ、そのせいでか、朝起きたら体のいろんなところが痛くなっていたな。
これはちょっとしくじったわ…。
それで火菜さんの指示で全員を起こし、朝の集いとかがはじまったんだっけか。
相変わらずのノリのいい火菜さんと風香さんのボケとツッコミで、それはそれで面白かったな。
それでその二人がそこのコンビニでバイトしてるってわかって、僕も水樹と一緒に始めさせられたんだっけ。
あの一樹さんの想像を絶するキャラの強烈さ具合には驚かされたな。
その後に教育係が火菜さんだと分かって安心したっけ…。
水樹の教育係が風香さんだというのは少し安心しないけどな…。
あのときに知り合った夏芽さんは優しかったな。
バイトの仕事は大変だったな。少し難しかった。
でもそれだけ手がかかっているんだって知って、感心した。
まあ、今となってはそんな体験も、いい思い出だ。
火菜さん自身の過去を語ってくれたのは、その日のお昼休憩の時間だった。
なんかみんな大変な思いをしているんだな。
なんで僕はそこまで複雑な過去を持っているわけでもないのに何で同じように精霊使いなんかになっているんだろう…と思ったのも、その時だったっけ。
そこからの記憶はあまりない。
気づいたら、道路のど真ん中に立っていたところを水樹に突き飛ばされ、僕の代わりに事故にあっていた。
泣く暇も叫ぶ暇もなく、目の前の景色が変わっていた。
ほんの一瞬の出来事だったな…あれは。
転移された精霊使いとしてのお仕事先で待っていたのが、花乃さんだった。
とてもいい人で、業だかなんかの使い方を僕に教えてくれた。
その人が「僕の知り合いの精霊使いとも会いたい」って言ってたから、手っ取り早く予定を取り決め、手っ取り早くその場から退散したっけ。
それで避難さんに水樹がいる病院に行かせてもらって、水樹と少しの間、言葉を交わしたな。
その後、花乃さんと取り決めた予定を火菜さんに伝え、水樹のいない寂しい夜を過ごした。
心の中にぽっかりと穴が開いたような、そんな感覚だったな。
翌朝きっかりと予定ぴったりの時間に花乃さんご一行が来たのは、驚嘆したっけ。
軽く自己紹介したら、早々と水樹が帰ってきたからびっくりしたよ。
しかも知らない精霊使いの人たちもつれてきてさ。
そこでまたもう一度、自己紹介をすることになったんだよね。
今思えば、あの時に全精霊使いが集まっちゃってたんだ。
本当にもう、すぐい偶然なんだな。恐ろしいくらいだ。
それが終わると、情さんが、長い長い話を始めたんだっけ。
それで今日、こうやってこうすることに…。
すごく長いように思えたけど、今は短かったと思ってしまう。
よかったことも、悪かったことも、楽しかったことも、辛かったことも、面白かったことも、つまらなかったことも、たくさんあった。
一日一日が、惜しく思えた。
とても濃厚な日々だった。
いろんなことを知り、いろんなことを学んだ。
そんな四日間だった。
とても貴重な四日間だった。
たかが四日間。惜しくも四日間。
その一つ一つが、僕の大切な思い出。
本当は、思い出とは称さず、現在進行形で続けていきたかった日々。
でももう、もう一度復元することはできない。
過去形か、過去進行形でしか語れない。
ああ、ごめんなさい、水樹。ごめんなさい、みんな。
もしかしたら、まだ、僕にできることがあったのかもしれない。
なのに、僕は…っ。
ごめんなさい。ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
でも僕は、これからも生きる。
だって君は、そう望んでいるんだろう?水樹。
「あと二〇秒です。よろしいですか?」
「「よろしくない」って答えてもいいんですか?」
「もし「よろしくない」と答えられた場合は、私があなたを殺してしまうつもりでした」
「…そうですか」
「…では、よろしいですね?」
「はい」
僕は決意を固め、キュッと目をつむる。
「では、いきますね。…三、二、一…」




