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地球の原材料  作者: 海那 白
情報
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聞きスルー

 どうやらみんな、彼女のことを疑っているらしい。

 その証拠に、首を傾げて顔を見合わせている。

 でも、嘘はついていない。

 なんたってこの僕は、情報の精霊使いなんだぞっ。


「あ、あの、疑わないでください。良くも悪くも、私のこの頭の中には、この地球上にある全ての情報が入っているんですよぉっ!」


 これはこれはまた、「疑わないでください」とか…ぷっ…無茶を言うっ。


「あ、あの、どうしたら疑いは晴れますか?みなさんの個人情報でも言い当てられればよろしいですかっ?」


 彼女がそう言うと、みんなは考え込むような動作をした。

 そしてしばらくすると、お互いに顔を見合わせて頷いてから僕の方に向き直り、その代表として火菜くんが言う。


「では、お願いします。見事に全員のことを言い当てることができたら、その時は認めて差し上げます」


 乾いた笑みでそう言った火菜くんに薄ら寒いものを感じつ、僕の姿勢を正させる。

 そして、少し緊張気味に言い始める。


「それでは…えっと、生年月日と出身地名と家族構成…あたりでよろしいでしょうかぁ…?」


 恐る恐るそう聞く彼女に、なに食わぬ顔で火菜くんが答える。


「…はい。構いません。…それではどうぞ。言ってください」


 そう言われた彼女はなぜか安心したのか、カッと僕の目を見開かせて、大きく息を吸うと、ペラペラと喋り始めてしまっていた。


「…それでは私の右側に居る方から…


 文字の精霊使い、文子。二四八六年六月一〇日出生。広島県熊野町出身。家族構成は、父、母、祖母、姉五人、妹三人。

 霊の精霊使い、霊子。二四八四年九月七日出生。静岡県富士市出身。家族構成は、父、母、祖母。父と母は生霊になっている。

 火の精霊使い、火菜。二四八六年八月一九日出生。愛知県西尾市出身。家族構成は、母、父。

 風の精霊使い、風香。二四八六年一一月四日出生。愛知県西尾市出身。家族構成は、母一人。

 大地の精霊使い、地菜。二四八五年七月九日出生。千葉県市原市出身。家族構成は、父、母、弟二人。

 鳥の精霊使い、鳥利。二四八七年二月一七日出生。北海道釧路町出身。家族構成は、父、母、姉。

 虫の精霊使い、虫紬。二四八八年四月二二日出生。長野県高山市出身。家族構成は、父、母、兄、弟。

 時の精霊使い、時和。二四八七年三月二八日出生。兵庫県明石市出身。家族構成は、父、母。

 音の精霊使い、音羽。二四八五年一〇月五日出生。京都府京都市出身。家族構成は、父、母、兄が三人。

 動物の精霊使い、獣優。二四八八年一〇月一六日出生。京都府若狭町出身。家族構成は、父、母、弟、妹。

 人の精霊使い、舞衣。二四九六年一月三〇日出生。高知県四万十市出身。家族構成は、父、母、姉。

 植物の精霊使い、花乃。二四八九年五月四日出生。高知県四万十市出身。家族構成は、父、母、妹。

 星の精霊使い、星斗。二四九〇年四月一日出生。静岡県浜松市出身。家族構成は、父、母。

 水の精霊使い、水樹。二四八八年八月二八日出生。静岡県浜松市出身。家族構成は、父、母、兄。

 記憶の精霊使い、憶。二四八七年一月一七日出生。東京都千代田区出身。


…こんな感じで良かったでしょうか?みなさん」


 さすが、憶のことは誤魔化したな、彼女。

 やはり、そういうところはしっかりしている。

 火菜さんが「どうだ、合っていたか?」とみんなに聞いてみると、「…うん」「怖いくらいに合っている」「本当にピッタシだった」と不思議そうな表情で顔を見合わせ、恐る恐る頷き合っている。

 億も自然と頷いて見せているところから、さっき彼女が言った嘘を受け入れ、理解しての行動であったのだろう。

 全然違和感なく奥が頷いているので、逆に心配になってしまう。


「こ、これで認めていただけたでしょうか…?」


 彼女は恐る恐るそう言うと、火菜くんはため息をついて、謎の敗北感を得た時の心理状態になった時の顔をしてから言った。


「…しょうがないです。認めて差し上げますっ」


 やれやれ…と首を振りながらやっていた彼女の姿は、恩着せがましく見え、なぜだか僕の心を悪いような気持ちにさせてきた。

 結果的に…なんだか少しイラついてしまった。


「そうですね。…ご褒美に、さっき言っていたあなたのワガママを聞いて差し上げることとしましょう」

「ワッ…ワガママァッ?私はあれはワガママのつもりではなく、ただに単なる善意の気持ちを言ったのですが…。というか、私の先程の話、聞いていらっしゃらなかったのですかぁっ?」

「…すみません。そこまでの重要なことだとは思っておらず、右から左へと聞き流してしまっておりました。本当に、すみませんでした」


 すごすごと申し訳なさそうに深々と頭を下げる火菜くん。

 その姿は、土下座の姿だった。

 …なんだか、かわいそう。

 火菜くんが圧倒的被害者に見えてきてしまう。


「いえいえ、火菜さんが謝って頂く必要なんてないですっ。ほらっ、顔を上げてくださいっ。でないと私が火菜さんをいじめているみたいで嫌な気分になりますっ」

「それはそれはっ!本当に申し訳ありませんでしたっ。先程からとても偉そうな態度を取ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。あなたには色々と教えてもらったのに、私は不躾なことを言ってしまい、本当に申し訳ありませんでした。双方とも私のよくやってしまう、悪い癖なのです。すみません。もうそのようなことは致しません。これきりにてこのような癖は直させていただきます。悪いのは私です。全て私です。あなた様は一ミリたりとも悪くないです。罰ならいくらでも頂戴いたします。…情さん。どうか私にお叱りを、そして決定打ともなる罰を、与えてやってください。どうか、どうかお願いいたしますっ

…!」


 逆効果っ…!

 あんたさっきの言葉…逆効果だよっ!

 しかもなんかこの人、変なこと言ってるから面倒くさい方向に…。

 …よしっ。こんな時は誤魔化そう!

 聞きスルーしよう!話を元に戻そう!

 うむ。それがいい。一番いい。何よりもいい。

 これこそが最速にして最善の解決法!

 この方法しかないっ!


「あ、あのー…先程言わせていただいたお礼をさせていただこうと思うのですが…。いかがでしょうか?」


 火菜さん以外のみんなは隣にいる人と顔を見合わせて考え込んでいる。

 この人たちだけではないが、みんななんかあると、よく近くにいる人と顔を見合わせ合う人が多く見受けられるのだが…。

 人っていうのはどうして、そんなことをしたがるんだろうな。

 僕も一応人だから同じようにやってしまうことがある。

 でも、なぜそんなことを思ってしまうのか、自分でもよく分からない。

 分からないのに、ずっとやってしまう。

 本当に、不思議だ。

 一方で火菜さんは、聞きスルーされたのがよほどショックだったらしく、土下座しながら「聞きスルーされた。聞きスルーされた」と一人でブツブツと嘆きっぱなしだった。

 頭下げたままでよく頭に血が上らないなーとつくづく思う。


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