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地球の原材料  作者: 海那 白
情報
36/72

お邪魔します

 なるほど。

 そこらかしこに畑や田んぼがありつつ、家の数が決して少ないわけではなく、まあまあ大きな道路も通っているし、赤い電車の通る線路もある。駅から歩いて、長くても三分程度に離れているところだ。

 なかなか良いな。

 都会の味も楽しめるし、田舎の味も楽しめる。


 …それにしても、まさかコンビニエンスストアの物置の中に住んでいるとは…聞いたこっちが驚くな。


「あ、火菜っ。ただいまー。ちょっとお客さんも連れてきちゃった」


 最初に口を開いたのは、風の精霊使い、風香くんだ。

 歳は一四歳。精霊使い歴は約一年だ。

 緑がかった青いロングヘアに三つ編みカチューシャが特徴の少女だ。


 一方、風香くんが話しかけたのは、火の精霊使い、火菜くんだ。

 歳は同じく一四歳。精霊使い歴は約一年半だ。

 真っ赤なロングヘアを二つのおさげに青いメッシュが入っているのが特徴だ。


「むう…おかえり。随分と遅かったじゃない、風香。待ちくたびれちゃったじゃなぁい…もうっ。…って、誰っ?」

「誰っ?ってひどいなぁ。さっき言っただけじゃん、お客さん連れて来たって。水樹ちゃんが入院中に知り合ってきた人たちなんだようっ」

「そっか。ごめんなさいね。私は火の精霊使いの火菜です。よろしくね」


 そう言って火菜くんが右手を差し出すと、いつの間にか火菜さんが目の前に来ていたのに気づいた霊子くんは、慌てて右手で握り返した。


「君が火菜か。…はじめましてだな。私は霊の精霊使いで霊子という。よろしくな、火菜」

「はじめまして、私の名前は文子といい、文字の精霊使いをやっているものですの。よ、よろしくですの、火菜さん…」


 いつもの順番だから…次は僕か。

 まあ、いつもと同じような感じでいっか。


「はじめましてっ、僕は情報の精霊使いで情と申しますのだっ。火菜くんと言ったか?…よろしくなのだっ」

「はじめまして、私は記憶の精霊使いの憶ですわ。火菜ちゃん、よろしくですわっ」

「はい。霊子さん、文子ちゃん、情くん、憶ちゃん、精霊使い同士、これからもご贔屓によろしくお願いします」


 火菜くんはそう言うと、礼儀正しくぺこりとお辞儀をした。


「今ちょうど、他の精霊使いの方々もいらっしゃっておりますが、それでもよろしいでしょうか?」

「ああ、私たちは構わない。むしろ、他の精霊使いの方々と会えると聞いて、嬉しいぐらいだ」

「ならよかったです。それではご一緒に中へと参りましょう」

「ああ、わざわざ気を使わせてしまってすまんな」

「いえいえ、そんなに畏まる必要なんてないですよ」


 火菜くんはそう言い終わると、少し重い物置のドアをノックする。

 「どうぞ」と言う声を確認し、ドアをそーっと開ける。


 三~四畳程度のその物置の中には、九人程度の人が狭苦しそうに座っていて、ついつい入るのを、ためらってしまいそうなほどだった。

 最初に顔を見せたのは、案の定水樹くんだった。

 まあ、そりゃそうだろうな。

 水樹くんのために病院に行き、帰ってきたところなんだからな。


「…ただ、いまっ…」

「おおっ、おかえり水樹。無事に退院できたようでよかったよ」

「うんっ…無事…よかったっ、星斗…守ること…でき、て…」

「ああ。それに関してはありがとうな。水樹のおかげだ」

「…っ、うんっ…うんっっ」

「…ところで水樹、その人たちは?」

「あっ…えっと、ね…この人たち、はねっ…あのねっ…」

「この人たちは、私たちに会いに来てくれたお客様なの」


 せっかく頑張って喋ろうとしているのに…火菜くん、それはないでしょう。


「…?僕たちに?」

「ああ、私たちは、霊の精霊使いの霊子と、」

「文字の精霊使い、文子ですの」

「と、」

「情報の精霊使いの情なのだっ」

「と、」

「記憶の精霊使い、憶ですわっ」

「だ。私たちはよく、このメンツで行動を共にしている。これからよろしくな」


 何なんだ、このノリは。


「あっ、はい。僕は星の精霊使いの星斗です。よ、よろしくお願いします…」


 ほらほら、そんなだから星斗くんも困っちゃってるじゃないか…。


「君が星斗か。水木から聞いている。よろしくな、星斗」

「はい、よろしくお願いします、霊子さん、文子さん、情さん、憶さん」

「ああ、よろしくな」

「ええ、よろしくお願いしますですのっ」

「うむ、星斗くん、よろしくするのだっ」

「はい、星斗ちゃん、よろしくですわっ」

「…ところで、今更だが、お邪魔しても良いか?」


 本当に今更だな。


「はい。僕は別に構いませんが…」

「我らも別にかまわんが…」

「…ということなので、少々狭いですが、どうぞ上がっていただいて結構です」

「そうか。なら良かった。わざわざ丁寧にありがとな。


…それでは、お邪魔させてもらう」


 霊子くんはそう言って、堂々と入り込んで行った。

 僕たちは遠慮しつつ、霊子くんの後に続いて中に入っていくことにする。


「お邪魔しますですの」

「お邪魔しますなのだ」

「お邪魔しますですわ」


 中は昼間だからか電気を付けておらず、代わりに小窓からの陽の光が差していた。


 ううぅ…。

 上がらせてもらった僕が言うのもなんですが、狭苦しい。故に暑苦しい。人が入ってくるにつれて増している気がした。


 そうだ、今日はみんなに、とてつもなく大事な話をしなくてはいけない。

 僕はずっと、ずっとこの時を待っていたんだ。

 この僕が、みんなにとてつもなく大事な話をするという行為こそが、情報の精霊使いとしての役目であり、役割であり、存在理由なんだ。

 だから、この機会を絶対に逃してはいけない。

 勇気を振り絞るべきところは、今からの時間だ。

 失敗なんか…させないっ!


 …と、とりあえず今は様子を伺うことにしよう。

 そう思って周りを見るとみんな座っていたので、立ちっぱなしだった僕は、慌てて憶の隣に座ることにした。

 …空気を読めない人だと思われないようにするためにも。


 その後、しばし沈黙があった。

 重い空気の中重い話をして、さらに空気を重くするのは嫌だから、とりあえず今は様子を見ていよう。

 大丈夫。まだまだ時間がたくさんある。

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