女性陣、水着を披露する
チェックインを済ませて小休止ののち、
「海だー!」
本日二度目の小学生みたいな所感である。上半身裸だからかもしれないけど、ものすごく清々しい。照り付ける太陽と潮騒の香り。嫌が上でもテンションが上がる。
砂浜の熱さにステップを踏んでいると、馬込さんが注釈を入れてくる。
「海に来たのは久しぶりです。浬君、海に入る前は準備運動しないといけませんよ」
「なんか、学校の先生みたいなことを言っていませんか」
「一度言ってみたかったんです」
「絶妙にマッチしているのがすごいな」
引率の先生みたいだ。あーだこーだ言ってはいるが、一つだけ確かなことはある。
むさくるしい。
何が悲しくて男二人で海を満喫しなくてはならないのか。女性陣が一様に着替えに手間取っているからに他ならない。こちとら、全裸になって海パン履くだけで済むから先に終わるのは道理だ。
秘境を謳っているだけあり、海水浴シーズンなのに人気はまばらだ。むしろ、プライベートビーチといった呈で大騒ぎできる。現状、馬込さんと「海パン刑事ごっこだ」と精神年齢が低い遊びをするしかないけどな。
「お待たせ。ああ、やっぱ気持ちいいわね」
むさい空間に咲く一輪の花。ピンクのシンプルなビキニタイプの水着に身を包み、はだしで駆けてくる。健康的な四肢を白日の下に晒し、飛び跳ねるたびに揺れる二つの双丘。美琴が最近見ている特撮に倣うならこう言うべきだろう。「祝え、新たなる美の女神たるビーナスの誕生を」ってな。
「いやあ、馬子にも衣裳とはよく言ったものだな」
「本気で言っているなら海の藻屑にするわよ」
邂逅早々げんこつをくらった。そんな美琴に付き従うようにして現れたのは、
「や、やっぱり、恥ずかしいです」
首だけひょっこりはんしている瑞稀だった。
先に美琴を目撃してしまったせいで色気はない。だが、彼女には愛くるしさがある。ワンピースタイプのフリルのついた水玉模様の水着。露出を控えているが、小柄な瑞稀だとむしろ初々しさを醸し出している。
しかも、わきに抱えている浮き輪が破壊兵器と化していた。ロリ系水着に浮き輪とか最強の組み合わせだと思わないか。テンションがおかしなことになっているが、野生を解放しているせいだと諦めてくれ。
荒廃したむさい空間に続々と可憐な花が咲き乱れている。そこへ投下されたダイナマイト。SMAPが「でもいいんじゃない」と連呼していたが、まさしくその通りだ。
「高校生組の水着姿か。若々しくていいね」
「あなたも数年前まで高校生でしたよね」
「いやあ、そんなに若くないから」
腰をくねらせパレオを揺らす。それだけでも鼻の血栓を崩壊させるに十分だ。だが、大量殺りく兵器はその上にある。清純そうな青に包まれてもなお存在感を主張する巨大爆弾。美琴もそれなりにあるが、彼女は軽く凌駕している。
「茜さん、脱ぐとすごいですね」
「馬込っち~、警察呼ぶわよ」
「こ、このぐらいで通報しないでください」
馬込さんが慌てふためいている。どうすんだ。女子高生二人組も圧倒されているぞ。
そして、本日最大級の爆弾が炸裂する。
「みんな揃っておるようじゃの」
デカい! 破壊! 豪快! お狐様だから黄色のビキニか。なんて、色形が些末事にされるぐらいの爆乳。普段、薄手のシャツを着ているから誇張され続けてはいる。だが、限界まで素肌を晒したことで、自愛できないまでに威力を暴発させた。巨乳を通り越してもはや魔乳だ。
「どうしたのじゃ、浬。うちのパインに見惚れておるのかの」
「パじゃなくてボだろ。パイナップルみたいになっているぞ」
パイナップルすら負ける立派な「モノ」を引っ提げているからたちが悪い。
大人の魅力というものをまざまざと見せつけられ、俺は圧倒される。だが、前々から事あるたびに突き刺さる冷たい視線がまたしても貫いた。美琴と肩を抱き寄せあっている瑞稀が嘲るように顎をあげている。
「浬さんはやっぱり胸が大きい方が好きなのですか」
「そ、そんなこと、ないぞ。花園華もチッパイの部類だし」
「でも、思い切り見とれていましたよね」
「瑞稀、仕方がないわよ。あれが男の本性というやつだから」
諦観すんなよ! 男がみんな、でかいおっぱいが好きだと思ったら大間違いだからな。
「これ、いきなりギスギスするでない。まずは遊ぼうぞ」
「よーこさんの言う通りよ。よし、誰が一番早く海に入るか競争よ」
「準備体操を忘れないでくださいね」
小学生並みにはしゃぐ茜さんを引率の先生こと馬込さんが窘めていた。さんさんと照り付ける太陽のもと、高まりきったテンションは抑えられない。俺たちは先を争うように海へと駆けだしていくのだった。




