火の神殿 精霊都市パパンバ お告げ
火の神殿への入り口は意外にも小さかった。
とはいえ、サイズで言うと幅10メートル程度はあるのでこの世界のいろんな建物がある中でもかなり大きい方ではあるのは確かなのだが、外から見ると山肌に門がくっついているの為比較対象が山だといくらなんでも門が小さく見えてしまうのだ。
そして、門を潜れば勇壮な2対の彫像が視界に飛び込んでくる。
その姿は上半身裸、筋肉隆々でその表情は怒りに満ちており、何よりその表情を演出するように背後には炎が立ち込めているのだ。
前世の記憶では東大寺にある阿吽の一仁王像、金剛力士と密迹力士が一番近い印象だろうか。類似点ということでは確かにいくつもあるのだが完全に違うところもある。
まずは背後の炎だ。
これは流石に前世の記憶でも見たことがない。但し、と注釈をつけるならば実物はということだ。何故ならば最後のファンタジーという名のシリーズ化しているゲームや、その他アニメやCGという類ではそれっぽいものは見たことがあるためだ。
しかし、もう一つの相違点は実物でも創作物でも見たことが無い。それが大きさだ。
単に大きい仏像なら修学旅行で奈良方面に行った時に見たのだが、それとは比べ物にならないほどのデカさだ。当時見た者は座った状態で15メートル位だったはずだ。仮に立ち上がっても25~30メートルと言ったところのはずだ。
しかし、ここにある二対の像は立った状態で60メートルはある。
入り口から入ってそれが視界に入ってくるのだから中の広さは想像を絶するものだ。
山がくりぬかれているのだから広いとは思っていたが、正直度肝を抜かれた気分だ。
「参拝者の方はこちらの通路から、お告げに来られた方はあちらの受付へどうぞ~」
そんな驚く様子を一通り見てそろそろいいかというタイミングで声を掛けて来たのは神殿の巫女だった。おそらくは初めてここに来る人は同じようなリアクションをするのであろう。内心得意気になっているため目の奥が笑っている。しかし表面は営業スマイルで混雑緩和のため業務に励んでいるのだろう。
俺達は案内された受付へと進むが、とりあえず歩を進めながらも視線は炎の彫像へと向かってしまうが周りを見るとあちこちに大きな燭台があり、蝋燭は無いのに炎が焚かれている。
受付を済ますとそこからはこの広大な空間をひたすら歩く事になる。
なにせ広いんだ。60メートルサイズがすっぽり入る空間だから当たり前ではあるのだが、上を見上げると天井らしきものは見えない。振り返ってみるとかなり高いところに通路らしきものは見えるのだが・・・。
そして受付で渡されたナンバープレートを片手に進み、ドデカい像の股の間を潜り抜けしばらく進むと次の難関は階段だった。幅10メートルはある螺旋階段の両端にマグマが流れており決して踏み外してはいけないラインを必要以上の脅威を持って教えてくれている。そしてそれが灯りの役割も果たしており足元を見ると地上まで流れ落ちたマグマは壁にある排水溝?に消えていくが上を見るとどこまで登らされるのか・・・とため息をつきたくなる高さにまで続いているのが見えた。
「番号札1番から50番の方はこちらへ、それ以上の番号の方はそのまま上へどうぞ」
大体マンション10階分程の高さを登ったところで案内人に声を掛けられた。どうやら番号が若いほど上までいかなくて済む仕組みのようだ。
「私たちはまだまだ上を目指さなければならない、そうでしょう?」
急にユイが真面目な声色で、無駄に笑顔でみんなに声を掛けた。
「そうにゃ!まだまだ上にゃ!」
「うん、がんばろう!」
リンダとジーナはユイのノリに真面目に応えた。
「そうなんだけど。違うと言い切れないあたりが微妙にもどかしいです・・・」
こういう時はノリで行った方が楽だったりするが、レンは意外なところで真面目だったりする。というか、変態性を除けば基本真面目なのがレンだ。ただ、除かれた変態性が強すぎて真面目の印象は皆無だ。
転生前の肉体だったらそろそろ弱音を吐いていただろう。いや、おそらく5階分くらいで足が止まっていただろうと思うが、この肉体は普段から真面目に鍛えたという事もあるし魔力を使って肉体強化補正しているため疲労らしい疲労はない。パーティーメンバーも同様だ。ただ、それと精神的疲労は別個だ。それを紛らわすためのユイのジョークだったが思考回路が同じ俺からしたら笑えん。
「番号札150番から200番の方はこちらへ~」
という声が聞こえてきて、やっとこの階段ともおさらばできる。なぜならば俺の番号札は163番だからだ。階段からこの階の壁際に続く廊下へと進むとたくさんの小部屋がならんである。どうやら水の神殿の時と同じようなシステムだろう。
まぁ、番号札を渡された時に予想していたけど。
「じゃあ、お告げとかが終わったら神殿前の広場集合ってことで」
「おっけー」
「分かった!」
「了解ー」
「了解にゃ」
「イエス、マイロード」
「了解じゃ」
なんか黒っぽい執事が紛れていたような気もするけど、レンだからスルーする。
163番のプレートがかかった扉の前に来ると渡されたカードが光り、扉に吸い込まれる。
そして扉がゆっくりと開いた。
中は真っ暗で何も見えないけど、まあ行くか。
暗いのでゆっくり進むと、扉は自動的に閉じられた。
扉が閉まると完全に外から光は入ってこないが、
よく見ると正面の壁全体が薄く赤っぽい光を放っていた。
そう思っていると、すぐに正面の壁の薄く赤っぽい光がだんだん強くなり空間が歪むような光り方に変わり、その光が一つの形を作り始めた。
光は最終的に炎でできた男性になった。見た目は神殿に入った時に見た彫像そっくりだった。というかこちらがオリジナルか。炎が人型になっていてよりファンタジー感があって良き良き。
『イフリートの神殿へよくぞ参った。ケン=アーノルドにお告げを授けよう』
「はい、お願いします」
『ス・・・・ン』(小声)
え?何か言ったかな?
『ケン=アーノルド。お主はとても強い体と魔力・それに深い知識を持っているようだ』
おお、なんかそれっぽいな。ただ、デジャブ感が半端ない。
『そしてそれらはまだまだ未完成のようだ』
10歳で伸びしろ無しとか言われたらツライなぁと思った事があったな・・・。
『お主はこれからその優れた力を研鑽し、そしてこの広い世界の中で人々の役に立てる力となるよう生きるのが務めである』
なるほど。
『それでは、また10年後にお告げを授けよう。それまで精進するように」
すると人型だった炎が強い光になり周囲に散っていく。
出現したときの逆パターンだ。
見事なまでに水の神殿で受けたお告げとそっくりだったな。しかし、今回はこれで終わりじゃない。
俺は首元のチョーカーの印に指を当て、魔力を込めた。
『わ・た・し!参!上!!』
チョーカーに付いている水印が光り、目の前まで移動するとそこには水の精霊ウンディーネが顕現する。
「おう、久々だな。ちゃんと火の神殿にきて呼び出したよ?」
『まったく、せっかくの私の登場なのに当たり前みたいな反応どうになからないのぉ?』
ったく、どうしろってんだ。
「そうプリプリするなよ。今回ばかりはウンディーネの願いを叶えた形なんだからさ」
『まったく。まぁいいわ。じゃあちょっと待ってなさい。イフリート!出てきなさい』
前半は俺に、後半はここにいない火の精霊に向けての言葉だった。
直後には目の前に赤い光が集まり、赤い精霊が顕現した。
『ウンディーネちゃん、お待たせ!』
『さっそく、ここにいるケンと双子のユイの部屋を繋げて』
『うん、・・・・エイッ!』
気の抜ける掛け声と共に火の精霊イフリートが右手の壁に向けて手を差し伸べると壁が消失した。
消えた壁の先はこの部屋と同じ部屋がもう一つ。ユイのいる部屋だ。
『うん、上出来』
『この二人が例の・・・。じゃあちょっと失礼して【鑑定】』
俺とユイを見比べられている視線を感じつつ、逆に俺とユイはイフリートとウンディーネを見比べていたりする。
まぁ見事に同じ容姿なのだ。色は違うけどね。体長・・・って精霊に対して言っていいのか分からないけど
20センチ程。素材は火と水で違うけど顔の造形も見事。
『で、イフリートちゃんの感想は?』
『ウンディーネちゃんの言う通りみたい。魔力値が異常だし、魂が・・・同じ。ありえない・・・』
『そう、ありえないの。でもこの通りここに存在しているわけ。おかしいでしょ!?』
『それでウンディーネちゃんはどうするの?』
『大精霊様に報告するかどうかそれを決めかねてね。イフリートちゃんの意見を聞きに来たってわけ』
『魂が同じなんて普通に考えたら報告して対処してもらうべき事態だと思う。でも・・・報告してもし大したことないなんて思われたら・・・うん。ウンディーネちゃんの気持ちはよく分かる。だから・・・』
報告するのが戸惑われるって上司失格のような気もするが。まぁ報告するイコール俺達異常者ってことになるからできれば穏便にしてほしいなんて考えもあったりする。
『この場で封印してしまうというのはどうかな?』
「・・・え?」
ちょっと想定外の意見が出て来て変な声が出てしまった。
『そうよねぇ~、私もそれは考えたんだけど』
おい、何言ってんだウンディーネ。お前今までそんな事、、、何?考えてたってのか!?
何こっち見てちょっとニヤッってしてんだ。
『でもま、私がそれをしなかった理由、というか判断を保留しつつ有効活用するってのも手だと思うわけよ。それがこの前話した方法。こっちのほうはまだちょっとかかりそうだしねぇ?』
ん?どういうことだ?
『あまり褒められた方法ではないとは思いますが・・・ウンディーネちゃんがそう言うなら。。。』
イフリートはあっさりウンディーネの意見を受け入れた。
そして俺達のほうに手を向けたかと思うと何か詠唱する。直後俺達の首元にあるチョーカーが光出したがすぐにそれも消えたかと思うとウンディーネ用の水印の横に火印の印が引っ付いていた。
ユイの首元がそうなっているから俺の首元にも出来ているのだろうと手で触ると、いつもある水印のところの隣に印があるのが分かった。
っていうか、今回も漢字なんだ。なぜここだけ日本語なんだという疑問が再び出てくるが、質問する前にウンディーネは話し始めた。
『そういう訳で、封印されるはずのあんた達を救った私に感謝するようにね』
ドヤ顔で俺達に言い切った姿にイラっとくる。
「はいはい、それで?俺達は今後どうするんだ?」
『引き続き、他の精霊の所へ行ってもらうわ。それがあんた達にとっても都合がいいんでしょう?』
「都合がいいというか、、、まぁ、それでいいか。俺達はこの世界を楽しみたいだけだからな。それで?このチョーカーが俺達に付いたって事は火の精霊も俺達に魔力を要求するのか?」
『そうですね。毎日ではなくてもいいですが魔力が尽きない程度に送るといいでしょう。それと、先ほどその首輪に印を刻んだ時に、魔力を流すと私とウンディーネちゃん両方自動的に分配して送れるようにしておきました。わざわざそれぞれに送る手間はかかりません』
「おいおい、それって大丈夫なのか?」
主にウンディーネお仕置き用魔力送付の時とか。チラッとウンディーネを見るとそれも見越したように微笑んでいる。
『あなた達の魔力値が異常なのは把握済み。それがイフリートちゃんの所と二手に分かれるんだからもう突然の大魔力で困るなんて事態は私にはないわ』
フフンって声が聞こえてきそうだ。
「あ、そ。じゃあ試してみるか」
ユイをチラッとみて手でチョーカーを触りながらいつもより少し多めに魔力を流し込んでみた。
『『ギャーーーーー』』
ゴゴッゴゴゴゴゴゴッ
二人の悲鳴と同時に何か地鳴りしてますけど!?
「大丈夫・・・か?」
『はぁ・・・はぁ・・・なんで二人同時にするよの!?それにいつもそっとしなさいっていってるでしょ!?』
『はぁ・・・はぁ・・・あなた達、、、激しすぎよ・・・・あぁ・・・緊急回避回路につなげて・・・』
抗議しているのか独り言なのか分からないけど、すぐに地鳴りを収まった。
ユイと二人同時にちょっと多めに魔力を送るとウンディーネもイフリートも対処するのが大変だという事が分かった。ちょっとくらい弱みを握っておきたくなるじゃない。封印がどうとか言われた後だしさ。
「分かったわかった。今後気を付けるよ。で、イフリートもウンディーネみたいに召喚に応じてくれるのか?」
『まったく、、、こういう奴らなのよ。イフリートちゃんも気をつけてね。たまに力を貸してやる代わりに上手に魔力を徴収するのよ』
聞いたはずのイフリートはまだ送った魔力の処理のためか話をあまり聞いていないためか、ウンディーネが俺の言葉に応答した。
「じゃあ、ここでの目的は完了でいいか?」
『ええ、いいわよ。じゃあ次に向かいなさい』
「次ってどこに行けばいい?」
『そうねぇ・・・風の精霊のとこかしら』
「ちなみにその心は?」
『イフリートちゃんがいれば御しやす、、、ああ、距離的に都合がいいでしょ』
今の絶対本音だよな。水は火に強く、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強い。基本属性魔法と同じ現象が精霊間にも成り立ってそうだな。
「なるほどね。じゃあ最後に聞きたいんだが・・・」
といって続きをユイに促す。
「この前ライカと一緒にここに来た時に不審者と間違えられてどこかに転送されたんだけどさ。あれどこ?」
『あれは・・・』
イフリートが困ったようにウンディーネに目線を向ける。それを受けてウンディーネもヤレヤレって感じで頷くとイフリートが口を開いた。
『この神殿の深部ですよ。普通は壁に穴なんてあけれるはずがないのだけれど・・・あなた達のようなイレギュラーならばと今は納得しているわよ。もちろんこの私の領域だから安心していいわ』
どこに安心要素があるのかサッパリわからん。
「なんのためにあんな場所があるの?」
『あそこは本来、勇者の為の場所なのよ。試練を与えてクリアできたら私達精霊が少し力を貸すことになっているの。まぁあなたを閉じ込めた場所はその近くで不敬を働いた物を閉じ込める場所だけどね』
「じゃあ、勇者に力を貸すってのはどんな力なの?」
『残念ながらそれは教えられないわね。勇者じゃないもの。ただ、私達が召喚に応じてあげるんだから勇者に与える以上の力をあなた達は手に入れたのよ?ウンディーネちゃんと私に感謝することね』
「ふむ・・・じゃあそれで納得しとく」
なんだか説明している内容はとりあえずそれで納得しておくが、イフリートの俺達に対する態度がウンディーネと同じ感じになってきているようなのは気のせいだろうか・・・。
『じゃあさっさと風の神殿に行くのよ。寄り道も程々にしなさいよね』
ウンディーネは光ってチョーカーに戻り、イフリートの体から部屋中に赤白い光が放たれたと思うと
イフリートは消えて普通の部屋に戻っていた。
扉を出ると、ちょうどユイも正面の扉から出てきた。
さっき壁が消えたときは隣にいたのに。異世界不思議パワーだろうか。
俺達は神殿を出て広場にまで戻ると、他のみんなは既に集まっていた。「おまたせ~」っと合流するとジャスパがやたらとイライラしていた。とりあえず皆はどんなお告げがあったのか聞きたいところだけどこの場所じゃ少し落ち着かないし、食事もかねて場所を移動した。
食堂兼酒場のような場所で食事をしながら話を聞くに、ライカ・ジーナ・リンダはどうやら水の神殿と同じお告げだったということが分かった。レンは人より強い身体と多い魔力を延ばし、豊富な知識に慢心せずより高みを目指せと言われたらしく、引き続き被虐の道を突き進む決心をしたそうな。
「でも意外なのはジャスパだよね」
そう切り出したのはライカだったが、話題のジャスパはというと目の前のご飯に夢中である。
俺達は一応食後にお茶を飲んでいるのだが未だにジャスパは食事中。少し涙目になりながらもう10人前は食べているがまだお代わりを要求しつつ、その手が止まる気配はない。
「竜は精霊の理の外の存在。そのためお告げはできません」
これでお告げ終わりだったそうだ。
ジャスパは精霊のお告げを楽しみにしていたのに現地に行ってみたら出来ませんで終わったらしくちょっと可哀想になったので好きなだけ食べていいとは言ったが、ちょっと食べすぎでは!?
もう二度とこいつにヤケ食いさすのは止めようと心に誓いつつため息を漏らすのだった。
「それで、この後どうするの?」
俺のため息をかき消すように聞いてきたのはジーナだった。そういえばピーキーを取り逃がしてから何だか元気がなかったのだが今は普通に話に入ってきている。
ちなみにリンダは魚を食べて満足したのかその余韻に浸っておりあまり話に入ってこない。
「次は風の神殿に向かうといいって言われたんだけど、その前にそろそろ資金調達もかねてギルドに行こうと思うんだ。風の神殿への情報集めもあるけど、その前に俺とユイの武器も考えなきゃいけないしね」
俺の剣は完全に消滅しちゃったし、ユイの剣は刀身がぽっきり折れてしまっている。
「そうね、それがいいかもしれないわね」
ジーナはもとより、他のみんなも納得してくれたようだ。
冒険者ギルドは火の神殿や参道から少し離れた場所にあった。というか、この町の基本的な中枢はこちらに集まっていて、参拝や観光する人専用の区画があっちだったのだということが分かった。
こちらでは石畳の通路や石壁の建物など参道付近の建物と共通する部分も多いが、その形や並びはかなりごちゃごちゃで雑多な感じを受けた。
ギルドの近くには武器屋もあったので俺とユイは先にそっちに行き、他のみんなはギルドで依頼を探すという事になった。
武器屋に入るとイメージ通りの武骨なおっちゃんが愛想もなく店番をしていた。冒険者御用達なのかそれなりに客はいるけど接客らしい接客はしていない。こちらも前世の服屋のようにぴったり張り付いて接客されるのはお断りだったので都合がいいと思っておく。
店の中は武器の種類ごとに区画が分かれており俺達は剣のある場所で品定めを開始した。
「なんだこれ?」
そこには剣のカテゴリーに入るのはまぁ理解出来なくもないが、こと武器屋にこれがあるのは些か疑問が出てきてしまうのも無理はない。なぜならばそこに置いてあったのは竹刀。
それも、ケンやユイがよく知るものとほぼ変わらないその姿であった。
たまたまこっちで同じような物が開発されたのか、それとも俺達のように転生者が作った物なのか微妙にきになる。
しかも展示されているのは1本ではなく10本程まとめて傘立てのような壺に入れられていた。どうやら格安の投げ売りワゴンセールの扱いらしい。
「おっちゃん、これってどこで作られてるんだ?」
「おう、シナイか?それは近所のガキ共が作ってここに売りに来たものだな。冒険者連中が訓練するときに使う物だ」
声を掛けると武器屋のおっちゃんは意外にも普通に対応してくれた。てっきり愛想なさそうだったから無口な職人なのかと思ったがそんなことはないらしい。
「そっか。じゃあ作り方はその辺の子供に聞いたら分かるのかな」
転生者を疑うにしてはこれだけでは弱いため、普通にこの世界で作られたと考えるほうが自然か。
「おいおい、こっちは商売なんだ。モノだけ見て自作するなら出て行ってくれ」
俺の言動から客じゃない認定をして商売の邪魔になるから出て行けと言いつつ手をフリフリして追っ払おうとされた。
「ああ、ごめん。そうじゃないんだ。もっとまともな剣を探しているんだ」
そういうとユイが鞘から刀身がポッキリ折れた剣を店主に見せる。
「ほう・・・こいつはミスリルか、、、ちょっと見せてみろ」
刀身をいろんな角度から見たり折れた部分を凝視しているからかなり興味を魅かれたらしい。しばらくそうして見ていたが満足したのかこちらに視線を戻し剣を返してくれる。
「こいつが折れたのはお前さんの腕が未熟だったからのようだな」
「分かるの??」
驚いたと同時に、この世界の職人ってのはすごいもんだと感心した。
「ああ。むやみに硬い物を切ろうとして折れたってところだろうな。まぁ自分の力量も把握していない未熟者がやる失敗だな。貴族とかが金に物を言わせて高い武器を買うが、結局こうやって無駄になるんだ。まぁ、、お前さん達は貴族、、、には見えないが」
改めて俺達の姿をじっくり見て、お?って顔をする。
「貴族じゃないよ。見ての通り只の冒険者」
「・・・ああ、双子か」
え?今更それ?
「そうだよ。で、武器がこうなっちゃったから買い替えようと思ってきたんだけどいい武器ない?」
「そうさな・・・あそこにあるのでいいんじゃないか?」
そういってさっきまで俺達が見ていた竹刀を指さしている。
「さすがにあれじゃ・・・ね」
「だよね」
と俺達がそろって不服を告げる。
「だがな、さっきも言ったが未熟な者がいくらいい武器を使っても結果は変わらねぇからな。しばらくは訓練したほうがいいと思うぜ?これは長年武器屋をやって来た俺からの有難い忠告だ」
「いやせめてミスリルと同等くらいの武器が欲しいんだけど?」
「こっちの坊やは剣を折ったみたいだが、お前さんはどうしたんだ?」
「いやぁ、、、敵に奪われて」
その後味方のブレスによって敵と一緒に消滅しました・・・とまでは言えなかった。
「ほらみろ。未熟すぎるんだよ。敵に奪われるって時点でな。しかも取り返すことも出来なかったんだろ?まぁそんな状況で命があっただけ運はいいみたいだな。だからと言ってお前さん達みたいな子供が基本をすっ飛ばして無謀な事をしないように、身の丈に合った武器しか売らねぇのよ」
ふむ、聞いてみると案外まともな大人の意見に聞こえる。
俺達を子ども扱いしているところは若干気になるところではあるが、どう見ても俺達は子供だから仕方ないと割り切るか。ただ、何度も未熟者呼ばわりされるのも気に入らない。こう見えて俺達は昔から剣術の練習もきっちりやって来たのでひよっこではないと思っている。そりゃ、異世界なんだしすさまじい剣士とかいるのかもしれないけど、その辺の冒険者並みにはなっているはずだ。
「どうやら納得いかないって顔してるな。ただ、貴族のガキみたいな上っ面の不服ではなさそうだな。自分たちはしっかり訓練してきてるって言いたげだな。だったらなおの事、しばらくは竹刀を使ってみろ。お前さん達は勘違いしているかもしれんが、あれは聖四剣のゼロ様だって使ってるんだぜ?」
・・・だれ?
「えと、聖四剣?」
ユイに視線を振るが首を横に振るだけだ。そりゃ、俺が知らないんだ。ユイだって知らないだろうさ。
「嘘だろ?曲がりなりにも剣を持つ者が聖四剣を知らない・・・だと?」
驚きのあまり軽くフリーズする店主。
「どんな田舎まで行けばそんな事態になるんだ。。。」
「サイージョ村だけど?」
「どこそれ?」
「田舎者で悪かったな。俺達は父さまから神明流をベースに教わってその後は冒険しながらだから独学だよ」
「なんだ、知ってるんじゃないか。驚かすなよ。聖四剣の一つが神明流だろうが。最も最強なのは克神流のゼロ様だろうがな。なにせここパパンバは克神流のお膝元、ゼロ様の強さと火の精霊様によって世界最強の都市だからな!」
最初に店に入ったときの不愛想をどこに置き忘れてきたのか、この話題になったら急に語りだしやがった。
「え、、ああ、うん」
「そういう俺もな、昔はゼロ様の強さに憧れて押し掛けたもんよ。まぁ、その時はブロンズソードで挑んだけどよ、克神流の下っ端にすらボコボコにされたもんよ。相手は竹刀だったのにな」
このおっちゃん、めっちゃ弱いんじゃ。。。
もしくは、弘法筆を選ばずって言うし、そのゼロって人達は竹刀でもそうじゃなくても強いんだろうね
「まぁそんなわけで剣士の道は諦めたが武器に関しちゃちょっとしたもんだぜ?如何に技術の差を武器で埋めようともがいたのが俺の武器職人のはじまりだからな」
うーん、まぁ人それぞれ人生があるもんだ。ただ、だからと言って俺達はこの後武器無しで旅を続けるわけにもいかない。
「技術の差を武器で埋めることはできたの?」
「おいおい、当たり前だろ?ただ、ゼロ様に限っては違うけどな」
どっちだよ。
「で、俺達は武器が欲しいんだけど?」
「そうさなぁ、、、じゃあさっき言ってた克神流の一番下っ端でいいぞ。竹刀で勝って来たらお前さん達の実力を認めていい武器を売ってやる。それが出来なかったら、剣士の道は諦めろよ。ほら、この竹刀を貸してやるからそれで挑んで来い」
あれ?俺達剣士を目指してた?おかしいな。でも、とりあえず下っ端でも勝負して勝てば売ってくれるならもうそれでいいか。
「わかった。おっちゃん、ありがとう」
なんか微妙に関わるのがめんどくさそうなのでおっちゃんの言う通りにしてさっさと店を出ることにした。
下っ端ならすぐにでも勝てるだろうし、なんなら他の武器屋から買えばいいしね。
「とりあえず皆と合流するか」
「だね」
俺達は竹刀を片手にギルドに向かったのだった。




