火の神殿 精霊都市パパンバ sideユイ
前回の途中、主人公達は別行動をとったので今回はユイ視点です。
完全にケン視点だけでこの物語を完結させようとしていましたが私の技量では無理だと痛感しました。
というわけで今後は別視点での話も入れていく予定です。
「レンはこいつの見張り、ジャスパは俺と一緒に来てくれ。ユイはライカと一緒に赤子を頼む」
ケンの号令に皆が頷くとそれぞれの行動を開始した。
ケンとジャスパがテラスから出て行くのを見送ると、私はライカと一緒に出掛けることにした。
もちろん行先は火の神殿へ誘拐された子供を返しにいくためだ。
部屋では念のためピーキーの後ろに陣取って視界に入らないようにしていたので、そっと部屋を抜け出し赤子を連れたライカと宿を出た。
「しかし、火の神殿って明日みんなで行くのに先に私達だけで行くなんて変な感じだね」
「そうだね。でも、この子を少しでも早く返してあげないと」
「じゃあ急ごうか。【身体機能強化】」
「ボクも!【身体機能強化】」
準備完了で二人して夜の街を走り出した。もちろん赤子に負担をかけないように、衝撃を赤子に伝えないように、それでいて少しでも早く。
今回は参拝が目的じゃないから裏通りを走って火の神殿に辿り着いたのは出発して3時間後だった。
「これが火の神殿・・・・」
「・・・の入り口だね」
なぜそれが分かったかというと、書いていたからだ。
それはもう、デカデカと看板に。
裏通りをひたすら進むと最終的にメインストリートと繋がり、その先は山の麓になっていて大きな洞窟の入り口があった。そこに看板があったのだ。
「神殿って山の中にあるんだね」
「確かに、水の神殿みたいなの想像していたけど全然違うんだね。ところで、当然のように門は閉まっているけど、どうする?」
「流石に強行突破(物理的破壊行動)って訳にはいかないよね?」
「ちょ!当たり前でしょ?ユイは女の子なんだからそういうケンみたいな野蛮な発想よくないよ?」
うーん、そうなんだけどさ。ほら、前世は男だったし。しかもケンと前世同一人物だし。なんというか仕方ないというか。まぁライカに言っても仕方ないか。
「じゃあどうしよう」
二人して回りをキョロキョロと見渡す。こんな時間なので人の気配はサッパリない。破壊がダメなら門の前に赤子は置いて行くのはどうだろうか。。。いや流石にまずいよなぁ。。。
「あっ!あれ見て!」
私がアニメとかでよくある孤児院の前に捨てられた赤子の設定を思い出していると、ライカが山のほうを指さしていた。
門の上にあるデカデカとした看板にまでしか目線がいかなかったが、さらに上の方を見ると山肌に窓らしきものが見えた。
「あれ、窓か」
「・・・でもちょっと高すぎるかな?」
ライカが戸惑うのも無理はない。何せ高さ100メートルは上に窓らしきものが見えたのだから。
ちなみに高さ100メートルというと大阪にある通天閣の高さだ。
しかも、山肌といってはいたが実際には門から垂直に土壁があるので実質ビルがあるようなものだ。
「いくら【身体機能強化】してても赤子を抱いてあの高さまで登るのはちょっときつそうだよ?」
「え?」
赤子を抱いて登るのがキツイという至極当たりまえの事を言っただけなのにライカにキョトンとされた。
「え?」
「あ、もしかしてお風呂を浮かせた魔法って高さ制限があった?」
お風呂を浮かせた魔法・・・おお!そうか、そうだ!
「ふふ、忘れてた?」
私がその手があったか!という顔をしてしまったので、ライカには心情がお見通しだったようだ。
「うん忘れてた。その手で行こう。【魔法板】」
さっそく目に見えない板状の塊を作り出し底と壁をつけた。まぁ、端的に言うといつもの浴槽だ。
「そうだ。【認識疎外】っと。これでよし。流石にこれから侵入しようってのにそのままだとまずいよね」
「そういうところはよく気が付くね」
あれ?嫌味か?
いや、ライカに限ってそんな事を言うはずがない。本当に言葉そのまま受け取ったほうがよさそうだ。
「じゃあいくよ?」
と声を掛けてからゆっくり移動を開始した。
特に苦労もなく上空まで上昇し、そっと窓際に近づき中の様子を伺う。どの部屋も同じような造りの個人に宛がわれたであろう私室っぽい雰囲気だ。
いくつかの部屋には人の気配があったが、中には人の気配がないところもあった。
夜になっても気温の高い地域だけあって窓は全部開けっ放し。この高さまで登ってくる人なんていないだろうし、精霊都市の中心である神殿に魔物が来ることもない、さらに言うと害虫の類もこの高さまでは来ないため不用心と思われる窓開けっ放しもまぁ普通なら大丈夫なんだろう。
都合のよさそうな人の気配の無い部屋へ、おじゃましま~すって心の中で呟いて部屋に入ると、誰もいないようでしかも丁度良くベッドもある。
とりあえずはここに赤ん坊を寝かせることにした。
しかしこのまま放置したのでは赤ん坊がここにいることに気付かれない可能性もあるか。泣き出した時に隣の部屋にまで聞こえるよう、ドアを開けておこうか。
そっと扉を開くと左右に広がる廊下。そして目の前にはおそらく1階から続くであろう吹き抜けになっていた。
「これ、すごい造りだね」
ライカに呟くと、ライカも無言で頷いている。
「じゃあ早速戻ろうか」
と声を掛けると、首を縦に振り同意してくれた。
その瞬間だった。
一瞬妙な浮遊感を感じたかと思ったら
目の前には大きな壁。慌てて周りを見回すが右にも壁。左にも壁。後ろにも壁。
何が起こった!??
閉じ込められた!?
慌ててライカを見るが、何が起こっているのか理解不能だった。
そして今度は突然声が響いてきた。
『愚かなる不届き者よ!我が神殿に忍び込んで無事でいられると思ったのか?そこで朽ちるがいい』
何が起こっても対処できるように身構えていたところに振降って来た言葉。
その言葉を理解するのに少し時間がかかったのはその直前にいた場所とまったく違う場所にいつの間にか閉じ込められるという嬉しくない奇跡体験のせいだろう。
そしてその後は声がすることもなく、何も起こらないっていうね。
ホントに閉じ込められただけなのか。。。
「私達を盗賊か何かと勘違いされて閉じ込められたってことだよね?」
「さっきの言いようだと、そんな感じだよね」
「どうする?」
「とりあえず誤解だって伝えなきゃね・・・」
「精霊さーーーん!私達は誘拐された子供を取り返して来たんだよーーー!!!」
大きな声で叫んでみたけど、なんのリアクションも無かった。
「うーん、反応無いね。じゃあ脱出できないか試してみようか」
「どうやって?この部屋、扉も窓もないよ?壁も何だか頑丈そうだし・・・」
「頑丈そうだけど穴でも空けばそこから出られるんじゃない?ちょっと試してみるね」
私は【身体機能強化】を使って筋力を底上げした上で剣を抜くと正眼に構える。
いつもの素振りの練習のように精神を研ぎ澄ませて剣気を纏う。そして壁の正面に向けて大きく振りかぶると一閃!
ガキーーーーン!
という音が響く。
一瞬遅れて折れた剣が床に落ちる音が響く。
「マジか!・・・・ミスリルの剣が折れた・・・」
「でも壁には傷一つついてない」
壁に近寄ってマジマジと様子を見ていたライカに告げられた。
「これでも結構な威力がある一撃だったはずなのに・・・」
「じゃあ魔法も試してみるね。【水球】」
私が斬り付けた辺りに迷いなく魔法をぶち込むライカさん。意外にやる時はやるんですな。
「うーん、ダメージらしいダメージの痕は見当たらないね」
ライカの魔法攻撃を受けても何の変化もない壁を見て呟いた。
「そんな・・・魔法もダメなの・・・?」
「どうだろう。。。剣撃の時は感じなかったけど魔法の時は一瞬だけど何か揺らぎがあったような・・・おや?」
「どうしたの?」
「この壁、よく見ると壁自体の素材の上に何だか魔法的な薄い膜が貼られてない?」
「そうだね。なんとなく火属性かなーと思ったから【水球】を撃ってみたんだよ?」
あ、ライカはすでに気付いていたのね。
「うーん、じゃあ私も撃ってみるね。物理攻撃は効かなかったけど魔法攻撃なら揺らぎがあったし、あとは単純に威力の問題かもしれないからちょっと本気で魔力を練ってみる」
普段の魔法では使わない位の量の魔力を少しずつ両手の間に集め水属性にして圧縮する。
それを繰り返していきちょっと圧縮しすぎて制御が厳しくなってきた辺りで魔力を練りこむのをやめる。
形を円錐状にして螺旋回転を加える。
「ライカ、念のため私の後ろに下がっててね」
ライカが私の後ろまで避難できたのを確認してから
「本気の!【水弾】」
両手の間に集めた水魔法の塊を壁に向けて一斉に射出する。螺旋回転を加えて貫通力を底上げしたバレットバージョンだ。
射出とほぼ同時に着弾した魔法はそのまま防御膜を貫通して壁にバスケットボール大サイズの穴をあけることが出来た。
「すごい・・・」
「うーん、でもこの先何もなさそうだね・・・【照光】・・・ほら?」
穴の中に照明をつけて中を覗いて見たところ奥行き10メートル程はあるが、それだけだった。
「ほんとだ・・・」
「仕方ないね、他の方向にも試してみるよ」
私は前後左右、上下の合計6方向に本気の【水弾】を撃ち込んでみたが結果は同じだった。
つまりこの部屋はさっきまでいた吹き抜けの見える廊下にこの壁の素材で閉じ込められたわけじゃなく、壁の素材がある空間の一部にこの部屋を作ってそこに転移させられたようだ。
「転移とかずるいでござる。困った」
「ござ・・??え?」
「いや、なんでもないよ!」
努めて明るく振舞う。ライカも少し不安そうな表情。
うーん、ライカには笑顔でいてもらいたいもんだ。
しかしこれは困った。普通に考えて敵を捕らえた場合牢屋とかがデフォルトだと思う。もちろん普通の牢屋入り口もあれば出口もあるはずだ。でも異世界ファンタジーだとわざわざ逃げ道となる出入口なんて作る必要がないんだ。転移とか大精霊じゃないと使えないと聞いていたから考えなかったけど、よく考えたら使える存在がいないってわけじゃないということだ。うーん、迂闊。
ただ、そんなの対処しようがないじゃないか!
「大丈夫?眉間に皺がすごいよ?」
いけないいけない。心配させてしまった。
「大丈夫!それよりこの状況をどうするかなんだけどね?」
普通不審者を見つけたら職質からでしょ!?いきなり監禁は横暴だと思うの。
「壁に穴を空けれるのは分かったけど、どっち方向が正解かな?」
そう、それが問題。そしてちょっと焦っている。
ライカは知らないのだけれど、私とケンは双子のせいなのか異世界転移得点なのか知らないけどなんとなく相方の場所が分かる。かなり大雑把なんだけどなんとなくそれでいて確かに存在を感じることができる。
それが今では存在を感じる事ができないでいた。
こんなことは生まれて初めての事態。もちろん今までずっと一緒にいたし、離れる事があっても同じ町にはいたから滅茶苦茶遠い場所にいてもその存在が感じられるのか検証したことはないのだけれど。
「やっぱり、上方向かなぁ」
今までの各方向に開けた穴により、前後左右上下10メートル程は全て壁という事が分かっている。ということは平地に壁だらけの建造物を作ったりするよりも地下にそういう空間を作ったと考える方が自然だと思うのだ。
もしこの仮説が正しければいつかは地上にで到達し、空が拝めるはずだ。
「でも大丈夫?結構魔力を消費しているんじゃない?」
そう、それが問題だったりする。
結構本気で魔力を練ったので先ほどの【水弾】の魔力消費はそこそこある。それを6回も使ったのだ。まぁまだしばらくは大丈夫な位の魔力残量はあるけど、ゴールが見えない中でこの作業は精神的にも削られるものがありそうだ。
「こんなとき、ジャスパみたいに竜のブレスが使えると便利なんだけどね~?でも無い物強請りをしても意味はないし、自力で調整してみる」
私は再度先ほどまでと同じように魔力を練り始める。しかし今回はただの水属性ではなく強度を上げるため氷属性も混ぜた。そして前回までと同様に螺旋回転を加える。
ここからはは存分にジャスパのブレスを参考にさせてもらう。
「ちょっとユイ、それ大丈夫???」
意識を集中していたのでライカから心配の声が掛かったような気がするが、遠くで何かを言っているように感じ言葉の内容を理解せず耳を通り抜けてしまう。
かなり制御が厳しくなるまで魔力をつぎ込んだ上に今回は属性を2種類つぎ込んでいるため両手が震える。ちょっと油断すると暴発してしまいそうだ。何せ残っている魔力の半分近くをつぎ込んで作り上げたもの。
だけど今回は壁が相手だ。相手が反撃しているような戦闘じゃないからね。少々無茶してもまぁ、なんとかなるでしょ。
「行くよ!新魔法!【雹龍点穴】」
叫ぶと同時に両手を前に突き出し練った魔法を射出する。先ほどまでは弾丸が一発射出されるだだったが今回は射出後も魔力を練り放ち続け弾丸を突進貫通力を作り続ける。
魔法の先端は一瞬で壁に到達、その後10メートル程空けていた穴を通過しどんどん上昇していく。弾丸部分だけでさっきまでの【水弾】3発分を練りこんだ訳だし、そこからさらに押し込み続けているのだ。天井の壁をドンドン貫き上昇し続けていくがもちろん魔力も消費し続ける。
そして、ものの数秒で残っていた魔力も使い果たしてしまった。最後は気合で魔法を押し出し、その場に尻餅をついてしまった。
「ユイ!!」
慌ててライカが肩を持ち支えてくれたのでぶっ倒れて後頭部を強打せずに済んだ。
「やったかな?」
結構本気で頑張った結果を見ようと天井の穴を見ながら無意識に言ってしまった自分の言葉に、これフラグじゃない?と思う。
ただし、今回の相手は壁だ。反撃を受けて致命傷・・・なんてベタな展開は無い、と信じたい。
天井を見るけどちょっとフラフラして意識が軽く遠い感じがする。
「もう!無茶しすぎだよ」
ライカは私を抱えてくれているが、私の背中に重ねた両手を添えるとその部分から暖かな癒しの力を感じとても気持ちがよかった。
回復魔法じゃなく、どうやらライカの魔力を私にも分け与えてくれているようだ。
こんな魔力の使い方は俺達のような例外を除けば普通は魔族やハイエルフなど極限られた一部しかいないはずだ。ライカは私とケンで幼少期に使い方を教えたからってのと、ハーフエルフという種族のためある程度下地があったからだ。
しばらくすると意識もしっかりしてきた。
「ライカ、ありがとう。」
「どういたしまして。少しは役に立ててよかったよ」
ライカの魔力量ははっきり言ってハーフエルフとしては規格外なんだけど、私やケンがもっと規格外過ぎて正直不調にならない程度まで回復したが普通に魔力不足の状態だ。
「さて、せっかく空けた天井の穴も真っ暗だね。魔法で明るくしてみようかな」
「そのくらいだったらボクがやるよ?」
「じゃあ、お願いす・・・な・・なに??」
お願いするねって言いかけたところで部屋の壁が点滅し始めた。そしてソレがやってきたのはその直後だった。
突然に現れたのは炎のような赤い髪に彫りの深い顔、二本の赤く大きなツノ、それにストールや腰巻が赤い布なのか炎なのか判別不能だけど、ムキムキマッチョなのにどこか神秘的な雰囲気を持つ大男だった。
「まさか、火の精霊!?」
『エラー発生!エラー発生!緊急プログラムを起動!第87層にてバグを発見!』
この声は聞き覚えがあった。ここに閉じ込められた時に聞こえた声だ。
「ちょっと!私達は誘拐された子を助けて連れ戻してきたのよ?閉じ込めるとかふざけないでよ!」
「ユイ・・・火の精霊様になんて暴言を」
ってのが小声で聞こえたけど今は気にしていられない。
やっとここから出るための情報を持っているであろう相手が向こうからやってきたのだから。
『バグ排除を開始します』
大男は先ほどと同様どこか事務的な抑揚でそれだけいうと、手に力をためこちらに投げつける動作をする。すると手のひらからは大きな炎が現れ私達に襲い掛かる。
「ちょっと待て!」
と言いながらもとりあえず回避・・・と思った瞬間またフラっと来てしまいその場に膝をついてしまった。
やばい・・・
「【水壁】!」
ダメージを覚悟していた私の前で庇う様にライカが張った防御魔法。
火の弱点属性である水属性の壁が目の前に顕現する。
火が壁に到達するとそこで防がれ・・・え?
「いやぁああああ」
突然の出来事に上がるライカの悲鳴。
水を貫通して炎がライカにまで届いた??
私はあまりの出来事に頭を振り慌てて水魔法で水を生成、ライカの頭上から落としなんとか鎮火できた。
「ライカ!大丈夫!?【小回復】」
「う、、、うん。ありがとう。まさか【水壁】を突き抜けるとは思わなかったから驚いた」
回復のお礼に見せてくれたライカの笑顔は私たちが本気で守りたいライカの満面の笑みじゃなく、愛想笑いに近い強がりの笑顔だった。
「流石に火の精霊だね。ライカ、次からは壁1枚じゃ足りないから複数枚張ろう」
「分かった!火の精霊だから使う炎も聖火なんだろうね。すごい威力だもん」
何とか体制を整えつつこちらに返事をしたライカはそれはもう水も滴るいい女だった。
しかし精霊ってのはなんて厄介なんだ。ん?まてよ?そういえば昔水の精霊であるウンディーネがライカの頭上から水を落とした時、守ろうとした壁を通過したような。
精霊の持つ力ってのはやっぱり特別なんだね。
一撃目を放ち終わった火の精霊が二撃目を放ってくる。
「だったらこっちも考えがあるよ!」
私は首のチョーカーについている水印に魔力を込めた。
数瞬で水印が光り、私の目の前には水の精霊が姿を現した。
『ちょっとちょっと!今回は送ってくる魔力が少ないんじゃない?ケチった魔力で私を顕現させようなんて、どうゆうつも・・・』
丁度火の精霊の攻撃が直撃する位置に顕現してしまった水の精霊ウンディーネは、私に文句を言っている最中に攻撃を受けてしまい、大量の炎がウンディーネの水分を蒸発させ辺り一面が蒸気で満たされた。
「え?ちょっと!?ウンディーネ??」
とりあえず火の精霊の攻撃はこちらに届かなかったものの、ウンディーネが蒸発するとか!?
慌てて自分のチョーカーを見ると、水印の部分は無いままだった。
『この私の!華麗な!登場シーンを!邪魔したのは!!どこのどいつじゃい!!!!!』
蒸気の中心から怒号が飛ぶ。
と同時に当たりの蒸気が吹き飛んだ。
あれだけの蒸気・・・一体どこに!?というツッコミは置いといて、とりあえずウンディーネは無事だったらしい。
そして、目の前に火の精霊がいるのに気が付いたようだ。
『おまえか~!この私に火属性で立ち向かうなんて、自殺願望しかないようね!』
ターゲットを見つけたウンディーネは手を前に翳すとウンディーネの体の3倍ほどの水球が出来上がり、そこから放射状に火の精霊に向けて放たれた。
そこまで早い速度では無いにも拘わらず火の精霊は微動だに出来ず全て直撃。
そして、その場に崩れ落ちたかと思うと青白い光となって消えて行った。
「すごっ」
呟いたライカをチラッとみたウンディーネはさらに周りをキョロキョロと見回した。そして最後に私の方を見て問いかけてくる。
『まったく、なんであんたこんな所にいるのよ?』
「うーん、まぁいろいろあってね。火の神殿の巫女の御子が誘拐されているのを見つけて、ここに返しに来たらなんか不審者と勘違いされたみたいで・・・」
簡単に端折って説明すると、ホントにこれだけなんだ。。。
『だからってなんでここに・・・。まぁいいわ、ちょっと待ってなさい』
それだけ言うとウンディーネは振り返って大きく息を吸い込んだ。
『イーフーリートーーー!!!出てきなさーーーーーーいいい!!!』
凄まじい大声だった。
ウンディーネの目の前に赤い光が集まったかと思うと、ウンディーネと瓜二つの赤い精霊が顕現した。
『え?ウンディーネちゃん!?なんで!??』
『そんな事より何でこいつらをここに連れてきてるのよ?』
『ええー?何でって、ちょっと待ってね。。。。。。ああ、どうやら夜中に神殿に侵入してきた賊みたいだから隔離層に投獄していたみたいよ?』
『ほんとにあんたは微精霊の扱いがなってないわね!この子達はあんたのところに御子を返しに来たらしいわよ。しかもこの私にいきなり攻撃してくるなんて!!』
『ええー!!??でもでも、まさかウンディーネちゃんがここに来るなんて想像もできなかったんだもん。そんな特別行動を書き込んでなんか無いよ』
『それより、ちょっと!』
というとウンディーネが指をクイックイッとする。
『うん・・・』
どういう意図があったのかさっぱり分からなかったけど、突然火の精霊イフリートと水の精霊ウンディーネが姿を消した。
「やっぱり、後から出て来たのが火の精霊だよね」
「イメージ的には最初に出てきてた厳つい大男のほうがそれっぽいんだけどね」
「そういえば水の神殿でも最初に出て来た微精霊のほうが水の精霊っぽい見た目だったよね。本物が体長20センチ程であの性格だもん」
「でもユイ、精霊様達いなくなっちゃったね」
「うん・・・しっかし召喚した私を置いてどこかに行くとかあいつどうかしてるよ」
『なんですって~?』
突然声がした所を見るといつの間にかウンディーネが戻ってきていた。イフリートも一緒のようだ。
「お、戻って来たね!」
『この私の悪口を言っておいてまるで何もなかったように話を進めようとはね。この私がここから出してあげる算段をイフリートちゃんにつけてあげたっていうのにその態度?』
これはいけない。いつの間にか弱みを握られてしまったパターンか!?
致し方ない、誤魔化そう。
「ここから出れそうなの?さすが水の大精霊ウンディーネ様は分かってらっしゃる!」
『ふふん、そんな言い方しても無駄ですからね!この私を誰だと思っているのよ?誤魔化されませんからね!』
誤魔化されないと言いながら口元が緩んでますよ?
もう一押しの合図だな。
「え?大精霊様じゃなくて昇進されたんですか?本来の実力が認められたんですね!そんなウンディーネ様ならこんな状況どうとでもできるほどなんでしょ?」
『ちょっ!何言ってるのよもう!実力がどうとかじゃないわよ。もう・・・しょうがないわね。ほら、イフリートちゃん』
ウンディーネがイフリートにまたしても指をクイッとすると数瞬の浮遊感と目の前が歪んで見えた。
1秒後には見覚えのある部屋に戻って来た。赤子を置いた部屋だ。
「戻った!」
と声を出したライカに慌てて口の前に人差し指をおいて静かにするように促す。
チラッとベッドを見ると赤子は眠ったままのようだ。よかった。
「あの子が誘拐された赤子だよ。嘘じゃなかったでしょ?」
と小声で精霊たちに説明する。
『別に私は疑ってないわよ?イフリートちゃんが勘違いしただけだし』
『私だって勘違いしたわけじゃなよ?微精霊が防犯のための自動行動を行っただけだし。でもウンディーネちゃん・・・なんか、、、』
と言いながらやたらとジロジロと見られた。
「なに?」
「ユイ、精霊様を睨んじゃダメだよ・・・」
と言われて自分が睨んでいたのを認識した。
『確かに子供にしては多めだとは思うけど、ウンディーネちゃんがいう程じゃないような?』
『それは現状でしょ?ちゃんと器の方を見てみなさいよ』
『どれどれ・・・あ!!!凄い魔力の器!どうなってるの?ウンディーネちゃん!』
ああ、そういうことか。私の魔力量は現状さっき使い切って今ではライカが補充してくれた分と自然回復分くらいしかないからね。と言ってもそこらの魔法使いよりは十分に多いと思うけど。
『それだけじゃないのよ。ちょっとユイ、ケンはどこ行ったのよ?』
「今は別行動だけど?あー、一応予定では明日あたりにこの神殿に一緒に参拝予定」
『あらそう。だったら都合いいわ。イフリートちゃん、参拝に来たら双子両方をしっかり見て頂戴』
『うん分かったの』
「で、どうしようか?ウンディーネは火の精霊と会いたかったのよね?もう会えたから火の神殿はクリアでいいの?」
『ダメに決まってるでしょ?双子一緒に参拝して、その後もう一度イフリートちゃんと話があるわ!』
「そっか。まぁもう一度来るのは予定通りだから別にいいんだけど。じゃあ今日の所はもういい?いつまでもここにいて人に見つかると厄介だし、こっちも赤子はちゃんと返せたから目的も完了したのよね」
『うん、いいんじゃない?私はもう少しイフリートちゃんと話してから戻るわ。明日参拝終わったらちゃんと呼び出しなさい』
「わかったわかった。じゃあライカ、帰ろう」
「うん」
そういうと俺達は来た時と逆パターンで窓から神殿を出たのだった。
帰りは【認識疎外】と【魔法板】を使い空中を宿まで帰りたかったんだけど魔力残量が少なすぎて途中で地上に降りて歩いて帰りましたとさ。
実はこの後宿に残っているレン視点の物語も書いてみました。が、完全にR-18の域・・・いやそれを超えるレベルのものになってしまったので気が向いたらノクターンの方で掲載するかもしれません。しないかもしれません。今のところそっちは未定です。
キャラ設定ドMのレンを主軸に健全なんて無理!
少しでも面白いとか気になるとか思ったら下にスクロールして評価してくださるとうれしいです。




