イーンラの町から
「神殿?そうだな。。。この町から行くには南北に小さな島々があるからそれを北上して水の神殿を目指すか、南下して火の神殿を目指すかの2つに1つ。距離的にはどちらも同じ位だからな。昔の人たちは行ったりしていたが最近は減ったからなぁ。それなのに節目に神殿へお参りに行くなんてお前さん達は信心深いんだな。しかも親御さん抜きとは。いくら冒険者でも無茶だと思うぞ?」
冒険者ギルドで暇そうにしていた職員に神殿への行き方を聞いてみたら無茶と言われてしまった。
でも俺達水の神殿から来たんだけどな。
「あ、僕たち二人だけじゃないですよ。両親はいないですが他に仲間もいるので皆で協力しながら行きますよ」
「ああ、、、そいつは悪い・・・・」
ん?あ、両親がいないって、勘違いされたか!?もういいや。
「それで、火の神殿へは船で南下していけばいいのですか?」
「ん?ああ、そうだな。小さな島々を南下すればじきに無人島じゃなくなってきてだんだん島も大きくなる。一番大きな島に火の神殿がある。大きな山があるから見ればすぐ分かるさ。人生いろいろあるもんだが、頑張れよ!」
「はいっ!ありがとうございましたっ!」
何やら同情の目を向けられていたような気がするがそんなことは気にしない。
そして、それに合わせて不憫ながらも前向きに生きる少年を演じた返事をしたところ、小さく頷いて見送ってくれた。
「ケン、たまになんだかワザとらしい感じになるよね・・・」
「え?完璧で自然なお礼だったろ?」
「そうかな?」
「そうだよ。神殿への行き方を教えてくれたから元気よくお礼を言っただけ」
「そう言われれば、そう、、、なのかな・・・?」
「そうそう。じゃ、ライカ、次いってみよぉ~」
せっかくギルドに来たのだからクエスト掲示板も見てみる。
「あれ?クエスト受けたりするの?」
「そういう訳じゃないけど、どんなクエストがあるか見ておいてもいいかなって。俺達冒険者だしね」
「そうだね」
受注可能なランクが下の方から見ていると、町の中でのお遣いクエストがあり、町の外での植物や鉱石の調達クエスト、他の町までの護衛クエストなどあるのはどこも一緒か。他と違うのは戦力として内陸側の町で護衛団員募集ってのもあった。
「あんまり他の町と変わらないね~」
というライカの声にすぐには反応できなかった。
「って、聞いてる?どうしたの?・・・えと何々?ワイバーン討伐?ケンはこれ受けたいの?」
「え?いや~、ワイバーンっているんだなって思って」
「その割には熱心に見ていたようだけど?」
「うん、、、まぁ、、、見てみたいってのはちょっとあるかな」
剣と魔法の世界なんだ。ジェスパみたいな竜だっている。となれば、前世で有名だったものを実際に見てみたい。さすがに以前相手したクラーケンみたいなのは規模が大きすぎてお断りしたいところだけど、こういうやつは一度は相手にしてみたい。
「ワイバーンって確か竜種でしょ?危ないよ。それにこの町からずっと南って書いてあるし結構遠いんじゃない?」
ワイバーンっていうと前世では竜の体に蝙蝠の羽と大鷲の爪に蛇の尻尾のやつだ。いろんな作品に登場しててるけど架空の存在ということでいろんな解釈してて強さや特徴が違う。この世界ではどんなやつなのか興味がある。
「そうだよね、まぁここで受けなくてもいっか。他には目ぼしいものもないし、いこっか」
興味はあるがどうやらちょっと遠いみたいだし時間かかりそうだからパスだな。
「・・・・うん」
そうして俺達は冒険者ギルドを出て昼食に向かった。
近くに郷土料理を出す店があるという情報もゲットしたからそこに向かった。
「いらっしゃい、何にする?」
店に入るとすごく食欲をそそる香辛料の香りが充満していた。
「おすすめはなんですか?」
「うちは南の方で取れるスパイスを使った焼き料理がお勧めだよ!あー、でもお子様にはちょっと刺激が強いかかな。辛いものは好きかい?」
聞かれてライカのほうを見てみると、ちょっと困った顔をしていた。
「あまり辛くないのがいいですが、お願いできますか?」
「そうだな、じゃあ違うものを用意しよう。ちょっと待ってな」
そういって調理場に入っていった店主がしばらくして持ってきてくれたものは、パンだった。
「はいよ、お待たせ」
といっても普段俺達が食べるようなものではなく、前世で見覚えのある四角いパン、所謂食パンにそっくりだった。ただ違うのは結構の厚みでパンの中に何か入っている点。
どうやら食パンの中身をくりぬいてそこに具材を入れてくりぬいたパンで蓋をした料理のようだ。
パンの蓋を開けるとそこには鶏肉や野菜、貝などのシーフードがいい感じに炒められたものが詰め込まれており見た目にも面白く美味しそうだ。
「「いっただっきまーす」」
蓋を取って中身を一口。うーん、旨い!
塩味ベースでありながら食べたことのない風味が混ざっていてさっぱりしていた。それでいて鶏肉のコクや貝類の旨味もあり見た目のジャンクフード感とは裏腹に上品な味わい。
「これ、結構好みかも」
「うん、美味しいね。今度自分でも作ってみようかな」
「え?できちゃうの?」
「全く同じものは無理だろうけど、パンの中に具を入れるだけならできそうだよ。それに具は別の物でも合いそうだしね」
「確かに!ライカが作る物は何でも旨いから期待しておくね」
満面の笑みで返してくれた。
うん、やっぱりライカの笑顔は最高だな。
「「ごちそうさまでしたー!」」
さすが冒険者ギルドだ。美味しい店の情報もばっちりだった。
食事のあと船に戻るため歩いている時だった。
「なんだかご機嫌な顔してるね?」
ライカが俺の顔を覗き込んできた。
「ご機嫌って・・・うん、そうかも。なんかちょっと幸せだなーって思って」
「幸せ?」
「うん、こうやってライカの笑顔を見ながら歩けるってこと」
「ボクと?」
「そう。それにライカだけじゃない。ジーナやリンダ、それにレンだって。今はジャスパも。仲間って呼べる人達と協力しながら旅が出来ることがなんだかとてもうれしくて」
「そうだね、ボクもこの旅楽しいかも」
「この先もきっと俺達の知らないすごい景色やものすごく美味しいものだったりワクワクするような出会いがあったりするんだ!」
これぞRPG!ってこれゲームじゃないけど。
「そうだね、楽しみ」
「少し前までは家の中が世界のすべてだった。それから少し大きくなって家から出れるようになるとサイージョ村が世界のすべてだった。ライカと出会ったのもそんな時だったよね」
「父さまに勝つんだ~~って特訓してたよね」
「あの時はそれしか見えてなかったかも(笑)。でもそのあとライカが攫われちゃってほんとに心配したんだ」
「うん、ありがとう。あの時もケンが助けてくれた」
あの時「も」ってことは、それより前にあった虐めの時もちゃんと助けることが出来たって事。よかった。
「不運なことかと思ったけど、ジーナやリンダと出会えたのもこれのおかげだった」
「レンが仲間になるきっかけがこの誘拐事件の時に起きてるとは思わなかったね」
そうだった。誘拐犯の仕打ちに頭にきてとっ捕まえた時に亀甲縛りにしてやったんだ。それをレンが見ていたなんてね。
「そうそう。そのあとはクラーケン討伐や護衛クエストやらこなしながらレンやシーラックが仲間になって旅してるってわけだもんね」
「ジャスパの件は省略!?これを聞いたらジャスパ怒っちゃうよ?」
「あっ!いけねっ!わざとだ!」
「あははは」
珍しく今までの事を振り返りながら船にまで戻ったのだった。
帰りに市場があったから気になる食材を買って帰ったら、いつの間にか夕方になっていた。
船に着くと、もうみんな戻っていたようで合流し夕食を取った。
そこで明日の朝には出発しようと話し合ったのだ。
翌朝は気持ちのいい晴天だった。
「よーし、どうやら次の神殿まであと半分くらいらしい。残り半分、張り切ってしゅっぱーつ!」
「おーーー!」
ゆっくりと港を出て右手にイーンラの町を眺めつつ船は南下を始める。
誰も魔力を使わないで帆に風を受けて進む。
しばらくして視界に人の気配が無くなるとモーターやウォータージェット推進も起動する。船はそれまでとは次元の違う速度になりどんどん波を切って進む。
操舵室で魔力を込めながら操舵していると、甲板ではジーナとリンダが組手をやっていた。
二人とも装備を新調したようで、今度の軽鎧には関節部に黄色の差し色が入っていてちょっとカッコイイ。
それに気になるのは少しだけ胸のふくらみがある形になったことだ。ふくらみと言ってもAカップ位の僅かなものだったが、なんだか少しずつ大人になっていってるのかぁ・・・と感慨深いものを感じた。
あれ?俺あの二人の親でもないのに(笑)
就航から2日ほどでずっと右手に見えていた陸地が無くなった。そういえば、イーンラの町があるところは大きな島とかいって兵士さんがいってたっけ。
船はさらに南下を続けると情報通り小さな無人島が点在していた。海では普通の魚も捕れたし食用可能な魔物も捕れたので、食料面では問題無さそうだ。まぁ、インーラで買った野菜類もあるので脚気の心配は多分無い、と思う。
概ね問題の無い船旅ではある。
何故概ねなのかというと、暑さがどんどん強くなるからだ。そのためほぼ毎日無人島に立ち寄り水遊びをしてしまうから中々進まないという問題か発生していた。急ぐ訳ではないからいいんだけどね。
しかしこのまま火の神殿に近づいていくとどんどん暑くなるなら、火の神殿付近は人が住めるのだろうかという疑問が出てくる。就航から1週間、にそんな心配は杞憂に終わる。
今までは点在していた島が無人島だったが人の気配を感じたからだ。最初は納屋みたいな建物が見えただけだったが次の島では民家が、その次の島では住人までも直接見えたからだ。
すーーーーごい遠目にだけどね。
それから大きな町が見える島に一度上陸し神殿の場所を聞いてみたところここよりさらに西へ少し行ったところだと分かったので進路を西にとった。
進路を変えてから火の神殿のある島はすぐに分かった。
なぜならば、遠目からでも山が見えたからだ。
確かに情報では山のある島って言ってたけど・・・・ちょっと想像と規模が違った。
目の前に見える山のシルエットは富士山を左右からギュッと押しつぶしたみたいな山だった。
しかし、高さは富士山よりも絶対高い。雲の上にも頂上が見えないのだから。
だんだん近づくとやっと島が見えて来た。
山が見えてから一日かけてやっと島が見えたのだからどんだけデカいんや。
水の神殿を出てからここまで結構な道のりだったけど、ゴカジ以降は大きなトラブルもなく途中の無人島でプライベートビーチを満喫したり港町で補給したりたまに出くわす魔物を退治して食料にしたり、俺の望むまったり異世界ライフを楽しんでいた。そしてやっと次の目的地が見えたのだ。
島には大きな港町があったのでそこに入った。
シーマに負けず劣らず活気のある港。船を停めて皆で上陸を果たした。
作者の中のまったり欲求ゲージが高いようで危険な目に合わないケン一行。しかしストーリー的にそろそろまったりだけじゃなくなってくるので頑張りゲージあげなきゃ。




